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7月の国内PC出荷は前年比で約4割増。需要回復が本格化へ

JEITA 2024年7月 国内PC出荷実績

 国内PC市場の需要回復がいよいよ本格化しそうだ。

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2024年7月の国内PC出荷実績によると、出荷台数は前年同月比37.7%増の57万9,000台、出荷金額は同32.5%増の678億円と、大幅な伸びをみせた。

 2024年4~6月(2024年度第1四半期)の出荷台数は前年同期比7.9%増の160万9,000台と、1桁台の伸長に留まっていたが、7月は一転して4割増に近い成長を遂げた格好だ。

 中でも、ノートPCの成長が高い。7月の出荷台数は前年同月比43.2%増の49万5,000台となった。そのうち、モバイルノートPCは69.5%増の25万9,000台となり、同1.7倍という急成長ぶりだ。また、デスクトップPCも出荷台数が前年同月比12.5%増の8万4,000台と、2桁増となっている。

 JEITAでは、「7月は、法人向けPCが好調に推移し、個人向けPCが堅調に転じた結果、台数、金額ともに前年同月比2桁の大幅伸長となった」と総括。個人向けPCも前年同月比プラスになっているという。

法人市場は需要回復が本格化。モバイルノートの比率が高まる

増産体制を敷いている島根県出雲市の島根富士通

 今回のJEITAの出荷統計が大幅な成長を示したように、業界筋では、いよいよPC需要の回復が本格化する段階に入ってきたとの見方が広がっている。

 コンシューマPC市場でトップシェアを獲得している富士通クライアントコンピューティング(FCCL)では、国内PC生産拠点である島根富士通において増産体制を敷き始めたことを明らかにした。

 2024年6月時点の取材では、2024年度の生産計画を156万台としていたが、7月以降、増産が始まっており、このほど、年間生産計画を167万台に上方修正したという。

 島根富士通の主力生産品目にも変化があり、従来は15.6型液晶パネルを搭載した「LIFEBOOK AH」シリーズの生産量が最も多かったが、現時点では、世界最軽量モデルを含む「LIFEBOOK UH」シリーズが、全生産量の半分を占める水準に達しており、モバイルノートPCの比率が増加している。

 レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータも好調ぶりを示す。

 「2024年4月以降は堅調に推移してきたが、特に7月以降は、法人向けPC市場での需要の高まりを感じている。Windows 10のEOSによる法人向けPCの買い替え需要が本格化し始めたとも言える」とコメント。「好調な法人市場においては、大半を占めているのがモバイルPCカテゴリ。この領域において定評があるThinkPadが好調であるほか、NECパーソナルコンピュータのLAVIE N14 Slimが、14型の大画面を搭載したモバイルノートとしてよく売れている」とする。

 さらに、「高性能処理へのニーズが増加しており、ワークステーションが成長。中でも、モバイルワークステーションへとニーズが移行しており、ThinkPadワークステーションが成長している。また、AI PCについては、直接的なAIニーズについてはこれからだが、将来的なNPU付きPCの必要性は認識され始めており、徐々に増えている」と語った。

 だが、「円安などによるインフレの影響から、カテゴリ全般において、低廉な製品へのシフトが見受けられる」とも指摘した。

 一方で、個人向けPC市場の回復は、まだ本格化したとは言えない状況だ。

 JEITAの調査では、7月に入って個人向けPC市場がプラスに転じたとしているが、量販店などのPOSデータを集計するBCNによると、7月の販売台数は前年同月比10%減という状況。8月についても、8月25日までの速報値で、前年同月比5.1%減とマイナス成長のままだ。レノボ・ジャパンでも、「個人向けPCは円安、物価高の影響もあり、市場は穏やかに推移している」と語る。

 旺盛な伸びを見せ始めた法人向けPCに対して、個人向けPCの回復感が出てくるタイミングがいつになるかが、これからの焦点になりそうだ。