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来るAI Everywhereな時代に向けて体制構築を進めるインテル
2024年3月26日 06:34
インテル株式会社は25日、同社の直近での取り組みなどを説明するプレスセミナーを報道関係者向けに開催した。
IDM 2.0を引き続き推進。国内は自動車や企業連携、人材育成にも注力
初めに同社代表取締役社長の鈴木国正氏が登壇し、AIに関する動向やグローバルおよび国内における注力分野に関して説明した。
AI関連の動向については、まず日米デジタル経営調査の結果を紹介。日本企業の生成AI利用が2割程度(米国では6~7割)にとどまっているのに加え、生成AIについて聞いたことがない/あまりよく知らないと答えた企業が3割(米国では1%前後)にものぼっており、生成AIの利用や理解において後れを取っていることに言及した。
そんな中でも、直近の約1年間ほどで生成AIの認知度が国内で高まりつつあり、IntelでもAI Everywhereをキーワードに、幅広いプラットフォームにAIを浸透させていく取り組みを進めているという。新たなAI時代に向けては、AIを軸として産業が成長することはよいことである一方、コンピュータリソースやエネルギー、セキュリティやプライバシー、人材育成などの問題は1つずつ解決していかなければならないと説明した。
注力分野については、グローバルではIDM 2.0戦略を継続して推進。2030年までに世界第2位のファウンドリを目指すIntel Foundryを始動し、MicrosoftによるIntel 18Aプロセスの採用も発表された。加えて、米国やドイツ、ポーランド、マレーシアなど世界規模での投資を計画しており、サプライチェーンを強化するとともに地政学的なリスクの軽減も図っている。さらに、3月には次世代システムとなる高NA EUV装置の納入も実施しており、ムーアの法則を追究する姿勢の象徴であるとアピールした。
日本国内については、自動車分野への注力、日本企業および産業界との連携強化、教育分野での取り組みの加速の3点を挙げた。1点目については、2024年初のCES 2024にあわせ、Silicon Mobilityの買収や、SDV(Software Defined Vehicle)向けのAI対応SoCを発表した。AI PCの経験を活かし、その体験を自動車にももたらすことができるとしている。
2点目については、同社が推し進めるIDM 2.0の実現に、日本企業の持つ装置や材料などが欠かせないことから、国内のサプライヤーや研究機関などとの連携強化を図っていく。
3点目については、DXハイスクール、STEAM/AI教育プログラムの充実、自治体との連携を3本の矢とし、デジタル人材育成を推進。点から線、線から面へと展開していく必要があるとし、今後や政府や関連機関を巻き込みながら取り組みを進めていきたいと述べた。
5N4Y戦略は順調。競合に後れを取った微細化で逆転を
次に、同社執行役員 経営戦略室長の大野誠氏が登壇し、プロセスノードのロードマップやIntel Foundryに関する説明を行なった。
2030年までに1兆ドル規模が見込まれる半導体市場だが、イノベーションの約3割がAIの影響を受けているなど、昨今その成長をけん引しているのはAIとなっている。それを支える半導体の微細化技術については、2021年に発表した5N4Y(5 Node 4 Years、4年で5つのプロセスノード)戦略が順調に進んでいると説明。今後投入予定のIntel 3、20A、18Aについても滞りなく開発が進んでいるという。
5N4Y以降については、業界初の高NA EUV採用を謳うIntel 14Aを投入予定。これに向けて3月には、米国オレゴン州の製造施設に高NA EUV装置「TWINSCAN EXE:5200」が納入され、2025年からの製造が計画されている。微細化では競合に後れを取ったが、それを取り戻し、さらに追い越していくとアピールした。
さらに、すでに投入済みのプロセスノードに対しても、末尾にPが付くパフォーマンス向上版、Tが付く3D積層シリコン貫通ビア採用版、Eが付く機能拡張版を順次投入していく。また、Intel 7やIntel 16、Tower Semiconductor(65nm)やUMC(12nm)との協業を含め、成熟したノードの製品も並行して提供し、顧客の幅広いニーズに応えていくという。
Intel Foundryでは、特にAIにおいて重要となる、メモリのレイテンシや容量、チップ間のインターコネクト技術のほか、それら全体をつなぐシステムアーキテクチャ、さらにはソフトウェアやファームウェアといった、全体的な要素を提供できるといい、AI時代を見据えたシステムファウンドリであるとアピール。すでに多くの企業との協業を進めているという。
一方でサステナビリティの面については、2030年までに世界全体で再生可能エネルギー利用率100%を目指すほか、水資源利用のネットポジティブ、埋め立て廃棄物ゼロの達成を目標に掲げる。さらに、世界規模での施設展開によって地政学的なリスクを抑えた強靱なサプライチェーンを確保することで、2030年までに世界第2位のファウンドリの確立を目指す。
Core Ultra搭載AI PCをビジネス向けにも投入
続いて、同社技術本部 部長 工学博士の安生健一朗氏が、クライアント向け製品に関する説明を行なった。
同社では、AI PC時代の到来を向けた製品として新たにCore Ultraシリーズを投入。過去40年間で最大のアーキテクチャ更新を謳い、従来製品から性能向上と低消費電力化を実現しており、新たに搭載されたNPUによってユーザーに新しい体験を提供できるとしている。
あわせて、ソフトウェアデベロッパーと連携してAIの促進を図るAI PCアクセラレーション・プログラムを展開。コラボレーションや生産性、セキュリティ、コンテンツ制作、アクセシビリティなど、さまざまな用途における新たなAI体験を提供していく。
具体的には、Stability AIの日本語大規模言語モデル「Japanese Stability LM 7B」がCore Ultra搭載PCで動作する例などを紹介。Stability AI Japan株式会社 代表のJerry Chi氏も登場し、次世代モデルとなるStable Diffusion 3やJapanese Stability LMのほか、ベンチマークにおいてIntel Gaudi 2がNVIDIA A100より優れた性能を発揮したことについても話した。
2月には、ビジネスユーザー向けとなるCore Ultra vProシリーズを発表。AIベースで脅威を検出するIntel Threat Detection TechnologyやWindows 11 Proとの連携による包括的な保護のほか、ハードウェアベースのIntel Silicon Security Engineが新たに加わった。同社によれば、4年前のデバイスと比べて攻撃対象領域が70%、影響力のアルセキュリティイベントが21%減少するなど、セキュリティの向上が図られているという。
また、ワークステーション向けの取り組みとして、CPU内蔵のArc GraphicsでIntel Arc Proグラフィックス・ドライバーの利用可能となった。ISV認証を取得し、ワークステーション向けアプリケーションに最適化したドライバがCPU内蔵GPUでも利用できるようになるもので、低消費電力で持ち運びやすいワークステーションを提供できるとしている。
そのほか、クリエイター支援プロジェクト「Blue Carpet Project」に関するアップデートについても紹介。発足から2年間が経過した同プロジェクトだが、着実にコミュニティが拡大しており、賛同クリエイターについても発足当時の8名から40名に、パートナー企業も39社から73社にまで増加しているという。
こういったクリエイティブの用途においてもAIの活用は進んでおり、事例紹介では、プロジェクトの参加メンバーである株式会社ティーアンドエス THINK AND SENSE部 部長の松山周平氏が登場し、NeRF技術を利用したMV制作について話した。