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CPUもGPUもライバル完封。Qualcomm、AppleやIntelに勝利宣言

Qualcomm エンジニアリング上席副社長 ジェラード・ウイリアム氏(左)とQualcomm 社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏(右)によるスピーチ、「The new CPU leader in mobile computing」とAppleやIntelに対して勝利宣言

 Qualcommは、10月24日(米国時間)から26日に、同社の製品発表の年次イベント「Snapdragon Summit 2023」を、米ハワイ州マウイ島において開催している。24日の午前中には、社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏による基調講演が行なわれ、PC向けSoCとなる「Snapdragon X Elite」やスマートフォン向けSoCとなる「Snapdragon 8 Gen 3」などを発表した。

 その中で、Snapdragon X Eliteに採用している開発コードネーム「Oryon」で知られる高性能CPUを、2024年向けの「Snapdragon 8」シリーズで採用する計画であることを明らかにした。

 また、イベントにはXiaomiの関係者も登壇し、同社が10月26日(中国時間)に中国で行なう発表会でSnapdragon 8 Gen 3を搭載した「Xiaomi 14」シリーズを発表する計画であることを明らかにした。新しいSnapdragonは、発表の翌年に搭載デバイスが登場するのが通例だが、今回は思ったよりも早くデバイスが市場に登場することになりそうだ。

Snapdragon X Eliteに搭載されているOryon CPUはAppleやIntelのCPUより高速と強調

Qualcomm エンジニアリング上席副社長 ジェラード・ウイリアム氏

 今回の基調講演の中で、QualcommはPC向けの最新SoCとなる「Snapdragon X Elite」、スマートフォン向けの最新SoCとなる「Snapdragon 8 Gen 3」を正式に発表した。いずれも詳細は以下の記事にまとまっているのでそちらをご参照いただきたい。

 そうしたQualcommだが、今回の基調講演ではSnapdragon X EliteのCPUとして開発が行なわれた開発コードネーム「Oryon」について多くの時間が割かれた。

Oryon CPUに関して説明を行なうQualcomm 社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 Qualcommは、AppleなどでArm CPUの開発に従事してきたジェラード・ウイリアムズ氏が創業したプロセッサデザイン企業「Nuvia」を2021年に買収し、自社の開発チームとして取り込み、自社製のArm CPUとしてOryonを開発してきた。

 それまで、QualcommはArmがIPデザインとして提供している「Cortex」ブランドのCPUを自社のCPUデザインの基礎として採用し、それをQualcomm側でカスタマイズすることで、「Kryo」というブランドでCPUとしてきた。現在でもSnapdragon 8 Gen 3にはKryoが採用されている。

 QualcommがSnapdragon X Eliteで自社設計CPUの採用に踏み切った背景としては、Windows向けのArmデバイスに2017年から連続して取り組んできているが、いまだに大きなシェアを取るような状況にはなっていないということがある。

 確かにMicrosoftの「Surface Pro 9 5G」やLenovoの「ThinkPad X13s」といった製品に採用されているが、それでも一部製品に留まっており、IntelとAMDを足したx86プロセッサのシェアを減らすような状況にはなっていない。

 これまでこうしたArmアーキテクチャのSoCがWindowsで採用が進まない理由は大きくいって2つがあった。1つは、確かに消費電力は低くバッテリ駆動時間は若干伸びるものの、性能ではIntelやAMDが提供するx86ベースのSoCに大きく遅れをとっていたことが挙げられる。

 もう1つはソフトウェアの互換性の問題で、Windows向けArmが開始された当初はArm版Windowsに搭載されているエミュレーターが32bitのアプリケーションにしか対応できず、64ビットのアプリケーションに対応していないなどの課題があったのだ。

 しかし、後者はWindows 11でArmから64ビットのx86へのエミュレーション機能が追加され、MicrosoftがQualcommと協力してArm版Windows向けの開発キットを充実させるなどして、欧米ではほぼ解決しつつある(日本語環境では、32bitのIMEが64bitアプリで使えないという課題が依然として残っている)。このため、残るピースはCPUの性能だけというところまで来ており、そのため、Oryonが開発されて投入されたのだ。

これまで勝てていなかったシングルスレッドの性能も大きく引き上げられ、Apple M2を上回り、かつ30%消費電力が少ない
同じくCore i9-13980HXとの比較でもシングルスレッド性能で上回り、かつ70%消費電力が少ない
Core i7-1360Pとの比較では2倍速く、68%消費電力が少ない
Apple M2とのマルチスレッドでの比較は50%アップ
GPUではIntelのIris Xeと比較して2倍性能が向上し、74%消費電力が少ない。
こちらはAMDのRadeon 680Mとの比較。80%高速で、80%消費電力が少ない。なお、なぜかApple M2とのGPUの性能比較データはなかった

 そうしたこともあって、今回Qualcommは、x86プロセッサや、AppleのM2を上回る性能を持つことなどが会見で何度も何度もアピールした。

 ただし、ライバルとて立ち止まっているわけではない。AppleはこのSnapdragon Summitの基調講演が始まる直前に来週なんらかの発表を行なうとアナウンスしており、そこでは次世代のMシリーズを搭載したノートPCが発表される可能性が高いとみられている。

 また、Intelは12月14日に次世代のSoCとなるインテルCore Ultraプロセッサ(開発コードネーム:Meteor Lake)を正式発表して出荷することを既に明らかにしている。AppleもIntelも、QualcommがSnapdragon X Eliteを搭載した製品の出荷時期としている来年半ばよりも早く製品を出荷する見通しで、その意味で、Qualcommの天下がどこまで続くのか分からない。

Oryonは2024年のスマートフォン向けのSnapdragonに採用、Xiaomiは搭載デバイスを中国で明日発表

Oryon CPUは2024年にSnapdragon 8シリーズに採用される

 Qualcomm 社長 兼 CEO クリスチアーノ・アーモン氏はそうしたOryon CPUが、PC向けの「Snapdragon X Elite」だけでなく、近い将来、具体的には来年(2024年)発表する予定の次世代のSnapdragon 8シリーズにも採用する予定であることを明らかにした。

 今回発表されたSnapdragon 8 Gen 3には、プライムコアとしてCortex-X4、パフォーマンスコアとしてCortex-A720、高効率コアとしてCortex-A520という3つの種類のCPUデザインが採用されている。そのうちどれをOryonに置きかえるかなど詳細は明らかにされていないが、常識的に考えれば、プライムコアだけ、ないしはプライムコアとパフォーマンスコアをOryonに置きかえることになるだろう。

 それにより、スマートフォン向けのSnapdragon 8シリーズも大幅に性能が引き上げられることになるため、性能を重視するAndroidユーザーにとっては良いニュースだと言える。

Xiaomi 14をチラ見せするXiaomiグループ パートナー・プレジデント ウイリアム・リュー氏
Xiaomi 14は10月26日(中国時間)に発表予定

 また、今回のSnapdragon 8 Gen 3は例年と違って、来年発表されるフラッグシップスマートフォンではなく、今後数週間以内に搭載機が発表されるとQualcommは説明していた。そうしたことを裏付けるように、今回は中国のXiaomiがイベントに参加しており、Xiaomiグループ パートナー・プレジデント ウイリアム・リュー氏は「10月26日に中国で発表会を行なう予定だ。そこでSnapdragon 8 Gen 3を搭載したXiaomi 14シリーズを発表する計画だ」と述べ、早速日本時間で明日となる10月26日にSnapdragon 8 Gen 3を搭載したXiaomi 14シリーズを発表する計画であることを明らかにした。