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AMD、最大96コアの「Ryzen Threadripper PRO 7000 WX」を11月21日に発売。非PROも
2023年10月19日 22:00
AMDは10月19日(現地時間)、ワークステーション向けCPUとなる「Ryzen Threadripper PRO 7000 WX」シリーズ、およびHEDT向けとなる「Ryzen Threadripper 7000」シリーズを発表した。PROではないThreadripperは、Zen 3世代では一時的に消滅した形になっていたが、Zen 4世代で復活した。
いずれの製品も、CPUソケット「sTR5」を採用しており、前者は最大96コア/192スレッドで8チャネルメモリ、後者は最大64コア/128スレッドで4チャネルメモリ構成。それぞれWRX90、TRX50というチップセットが用意される。
Zen 3世代で一時的に消滅していたPROではないHEDT向けThreadripperが復活
AMDは以前からサーバー向け製品となるEPYC向けのダイをベースにして、ワークステーション用としたRyzen Threadripper PROと、ハイエンドデスクトップPC(HEDT)用となるRyzen Threadripperという2種類の製品をリリースしてきた。ソケット的にはサーバー向け製品と形状は同じでも、メモリはRDIMMと呼ばれるサーバー向けのバージョンではなく、通常のDIMMが利用できるなどの違いがあった。
ただ、CPUコアがZen 3となっている世代では、ワークステーション向けのRyzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズはリリースされたが、HEDT向けのThreadripperはついにリリースされることはなかった。このRyzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズからは、メモリもRDIMMのみになり、よりワークステーション向けという性格が強くなった。
Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-シリーズ | Ryzen Threadripper 7000 シリーズ | |
---|---|---|
最大CPUコア/スレッド | 96/192 | 64/128 |
CPUソケット | sTR5 | sTR5 |
メモリ/メモリモジュール | DDR5-5200/R-DIMM/1DPC | DDR5-5200/R-DIMM/1DPC |
メモリチャンネル/最大容量 | 8(TRX50では4)/2TB | 4/1TB |
PCI Expressレーン数(うちPCIe Gen 5) | 144(128) | 88(48) |
PRO機能 | ○ | - |
オーバークロック機能 | ○(OEM版は未対応) | ○ |
チップセット | WRX90/TRX50 | TRX50 |
しかし、今世代ではHEDT向けのRyzen Threadripper 7000も投入される。
ただし、以前のThreadripper PRO/Threadripperではメモリモジュールは通常のデスクトップPCと同じDIMMが利用できたが、今回はPROでないモデルも含めてRDIMMのみの対応となっている。
CPUソケットはSocket sTR5へと変更され、メモリモジュールはDDR5に対応したRDIMMがサポートされる。Ryzen Threadripper PRO 7000 WXは8チャネルに対応、Ryzen Threadripper 7000は4チャネルに対応する。1DPC(1DIMM per Channel)にのみ対応しており、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズは最大2TBまで利用できる。
AMDは同社のCPUをチップレットから構成しており、複数のCCD(Core Complex Die)とIOD(I/O Die)から構成されている構造は、サーバー向けのEPYCと同じだが、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXは最大12個のCCDを搭載できるのに対して、Ryzen Threadripper 7000は8つのCCDを搭載する形になっている。
Zen 4世代では1つのCCDあたり8コアのCPUが実装されているので、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズは最大96コア、Ryzen Threadripper 7000シリーズは最大64コアの製品がラインナップされている。
2つのチップセットが用意されており、無印用のTRX50でもThreadripper PROを利用可能
AMDはRyzen Threadripper PRO 7000 WX向けのチップセットとしてWRX90、Ryzen Threadripper 7000のチップセットとしてTRX50の2つを投入する。最大の違いは、前者はAMD PROで知られる企業向けの管理機能(業界標準規格DASH互換)に対応しているほか、PCI Expressレーンが前者は最大148レーン(うち4レーンはチップセットとの接続に利用するので使用可能は144レーン)、後者は最大92レーン(同88レーン)であることが大きな違いとなる。
なお、WRX90はRyzen Threadripper PRO 7000 WX専用のチップセットとなるが、TRX50の方はRyzen Threadripper 7000に加えてRyzen Threadripper PRO 7000 WXも利用できる。従って、最初は64コアのRyzen Threadripper 7000で自作PCを組み立てた後、将来96コアのRyzen Threadripper PRO 7000 WXに乗り換えるなどのアップグレードも可能になる。
ただし、TRX50でRyzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズを利用する場合にはメモリが4チャネルに制限されるほか、AMD PROの機能なども利用できないため、本来の性能を出すならマザーボードごとWRX90搭載品に交換する必要がある。
Ryzen Threadripper PRO 7000 WX、Ryzen Threadripper 7000のSKUと価格は以下の通りだ。AMDによれば、現時点ではPROシリーズの価格は未定だが、いずれの製品も11月21日にリテール販売が開始される計画になっている。Ryzen Threadripper PRO 7000 WXに関しては搭載ワークステーションが、Dell Technologies、HP、Lenovo、Supermicroから提供される予定だ。
モデルナンバー | ソケット | コア/スレッド | 最大ブーストクロック/ベースクロック | L3キャッシュ | メモリチャンネル | TDP | 最大PCIe 5.0レーン | AMD PRO | オーバークロック機能 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
7995WX | sTR5 | 96/192 | 5.1/2.5GHz | 384MB | 8 | 350W | 128 | ○ | ○ | 未定 |
7985WX | sTR5 | 64/128 | 5.1/3.2GHz | 256MB | 8 | 350W | 128 | ○ | ○ | 未定 |
7975WX | sTR5 | 32/64 | 5.3/4GHz | 128MB | 8 | 350W | 128 | ○ | ○ | 未定 |
7965WX | sTR5 | 24/48 | 5.3/4.2GHz | 128MB | 8 | 350W | 128 | ○ | ○ | 未定 |
モデルナンバー | ソケット | コア/スレッド | 最大ブーストクロック/ベースクロック | L3キャッシュ | メモリチャンネル | TDP | 最大PCIe 5.0レーン | AMD PRO | オーバークロック機能 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
7980X | sTR5 | 64/128 | 5.1/3.2GHz | 256MB | 4 | 350W | 48 | - | ○ | 4,999ドル |
7970X | sTR5 | 32/64 | 5.3/4GHz | 128MB | 4 | 350W | 48 | - | ○ | 2,499ドル |
7960X | sTR5 | 24/48 | 5.3/4.2GHz | 128MB | 4 | 350W | 48 | - | ○ | 1,499ドル |
その性能だが、AMDが公開したデータによれば、Ryzen Threadripper PRO 7995WX(96コア)はIntelのXeon w9-3495X(56コア)と比較してAutodesk AutoCADで最大38%、Dassault Solidworksで最大43%、Ansys Mechanicalで最大92%、Chaos V-Rayで最大123%高速だという。
また、Ryzen Threadripper 7980X(64コア)は、Xeon w9-3495X(56コア)と比較してUnreal Engineで最大32%、AfterEffectsで最大20%、Metashapeで最大94%高速だと説明している。