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AMD、最大96コアの「Ryzen Threadripper PRO 7000 WX」を11月21日に発売。非PROも

Ryzen Threadripper 7000シリーズのBOX品外箱(写真提供:AMD)

 AMDは10月19日(現地時間)、ワークステーション向けCPUとなる「Ryzen Threadripper PRO 7000 WX」シリーズ、およびHEDT向けとなる「Ryzen Threadripper 7000」シリーズを発表した。PROではないThreadripperは、Zen 3世代では一時的に消滅した形になっていたが、Zen 4世代で復活した。

 いずれの製品も、CPUソケット「sTR5」を採用しており、前者は最大96コア/192スレッドで8チャネルメモリ、後者は最大64コア/128スレッドで4チャネルメモリ構成。それぞれWRX90、TRX50というチップセットが用意される。

Zen 3世代で一時的に消滅していたPROではないHEDT向けThreadripperが復活

Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズ(写真提供:AMD)

 AMDは以前からサーバー向け製品となるEPYC向けのダイをベースにして、ワークステーション用としたRyzen Threadripper PROと、ハイエンドデスクトップPC(HEDT)用となるRyzen Threadripperという2種類の製品をリリースしてきた。ソケット的にはサーバー向け製品と形状は同じでも、メモリはRDIMMと呼ばれるサーバー向けのバージョンではなく、通常のDIMMが利用できるなどの違いがあった。

 ただ、CPUコアがZen 3となっている世代では、ワークステーション向けのRyzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズはリリースされたが、HEDT向けのThreadripperはついにリリースされることはなかった。このRyzen Threadripper PRO 5000 WXシリーズからは、メモリもRDIMMのみになり、よりワークステーション向けという性格が強くなった。

【表1】Ryzen Threadripper PRO 7000 WX/7000シリーズの比較
Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-シリーズRyzen Threadripper 7000 シリーズ
最大CPUコア/スレッド96/19264/128
CPUソケットsTR5sTR5
メモリ/メモリモジュールDDR5-5200/R-DIMM/1DPCDDR5-5200/R-DIMM/1DPC
メモリチャンネル/最大容量8(TRX50では4)/2TB4/1TB
PCI Expressレーン数(うちPCIe Gen 5)144(128)88(48)
PRO機能-
オーバークロック機能○(OEM版は未対応)
チップセットWRX90/TRX50TRX50

 しかし、今世代ではHEDT向けのRyzen Threadripper 7000も投入される。

 ただし、以前のThreadripper PRO/Threadripperではメモリモジュールは通常のデスクトップPCと同じDIMMが利用できたが、今回はPROでないモデルも含めてRDIMMのみの対応となっている。

左がPRO、右が無印。PROでは12つのCCD+IODで、無印は8つのCCD+IODという最大構成(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)
Ryzen Threadripper 7000 シリーズのチップレット(写真提供:AMD)
無印Ryzen Threadripperが帰って来た(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)

 CPUソケットはSocket sTR5へと変更され、メモリモジュールはDDR5に対応したRDIMMがサポートされる。Ryzen Threadripper PRO 7000 WXは8チャネルに対応、Ryzen Threadripper 7000は4チャネルに対応する。1DPC(1DIMM per Channel)にのみ対応しており、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズは最大2TBまで利用できる。

 AMDは同社のCPUをチップレットから構成しており、複数のCCD(Core Complex Die)とIOD(I/O Die)から構成されている構造は、サーバー向けのEPYCと同じだが、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXは最大12個のCCDを搭載できるのに対して、Ryzen Threadripper 7000は8つのCCDを搭載する形になっている。

 Zen 4世代では1つのCCDあたり8コアのCPUが実装されているので、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズは最大96コア、Ryzen Threadripper 7000シリーズは最大64コアの製品がラインナップされている。

2つのチップセットが用意されており、無印用のTRX50でもThreadripper PROを利用可能

2つのチップセットが用意されている。TRX50はPROにも対応(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)

 AMDはRyzen Threadripper PRO 7000 WX向けのチップセットとしてWRX90、Ryzen Threadripper 7000のチップセットとしてTRX50の2つを投入する。最大の違いは、前者はAMD PROで知られる企業向けの管理機能(業界標準規格DASH互換)に対応しているほか、PCI Expressレーンが前者は最大148レーン(うち4レーンはチップセットとの接続に利用するので使用可能は144レーン)、後者は最大92レーン(同88レーン)であることが大きな違いとなる。

TRX50を搭載したマザーボードではRyzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズも利用可能(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)
メモリの詳細(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)
プラットフォーム図(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)

 なお、WRX90はRyzen Threadripper PRO 7000 WX専用のチップセットとなるが、TRX50の方はRyzen Threadripper 7000に加えてRyzen Threadripper PRO 7000 WXも利用できる。従って、最初は64コアのRyzen Threadripper 7000で自作PCを組み立てた後、将来96コアのRyzen Threadripper PRO 7000 WXに乗り換えるなどのアップグレードも可能になる。

 ただし、TRX50でRyzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズを利用する場合にはメモリが4チャネルに制限されるほか、AMD PROの機能なども利用できないため、本来の性能を出すならマザーボードごとWRX90搭載品に交換する必要がある。

Ryzen Threadripper PRO 7000 WXを出荷予定のOEMメーカー
Ryzen Threadripper PRO 7000 WXのボックス(写真提供:AMD)

 Ryzen Threadripper PRO 7000 WX、Ryzen Threadripper 7000のSKUと価格は以下の通りだ。AMDによれば、現時点ではPROシリーズの価格は未定だが、いずれの製品も11月21日にリテール販売が開始される計画になっている。Ryzen Threadripper PRO 7000 WXに関しては搭載ワークステーションが、Dell Technologies、HP、Lenovo、Supermicroから提供される予定だ。

【表2】Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズ
モデルナンバーソケットコア/スレッド最大ブーストクロック/ベースクロックL3キャッシュメモリチャンネルTDP最大PCIe 5.0レーンAMD PROオーバークロック機能価格
7995WXsTR596/1925.1/2.5GHz384MB8350W128未定
7985WXsTR564/1285.1/3.2GHz256MB8350W128未定
7975WXsTR532/645.3/4GHz128MB8350W128未定
7965WXsTR524/485.3/4.2GHz128MB8350W128未定
【表3】Ryzen Threadripper 7000シリーズ
モデルナンバーソケットコア/スレッド最大ブーストクロック/ベースクロックL3キャッシュメモリチャンネルTDP最大PCIe 5.0レーンAMD PROオーバークロック機能価格
7980XsTR564/1285.1/3.2GHz256MB4350W48-4,999ドル
7970XsTR532/645.3/4GHz128MB4350W48-2,499ドル
7960XsTR524/485.3/4.2GHz128MB4350W48-1,499ドル
Ryzen Threadripper PRO 7995WX(96コア)とIntelのXeon w9-3495X(56コア)の比較データ(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)

 その性能だが、AMDが公開したデータによれば、Ryzen Threadripper PRO 7995WX(96コア)はIntelのXeon w9-3495X(56コア)と比較してAutodesk AutoCADで最大38%、Dassault Solidworksで最大43%、Ansys Mechanicalで最大92%、Chaos V-Rayで最大123%高速だという。

Ryzen Threadripper 7980X(64コア)とXeon w9-3495X(56コア)の比較データ(出典:Ryzen Threadripper PRO 7000 WX-Series、AMD)

 また、Ryzen Threadripper 7980X(64コア)は、Xeon w9-3495X(56コア)と比較してUnreal Engineで最大32%、AfterEffectsで最大20%、Metashapeで最大94%高速だと説明している。