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raytrek、業界最安を謳うGPUクラウドサービス。急拡大するAI利活用を後押し

GPUクラウドの「raytrek cloud」。リモートワークステーションと高速コンピューティングから構成される

 ゲーミングPCブランド「GALLERIA」や、PCショップの「ドスパラ」を展開するサードウェーブが、独自のクラウドサービスを開始する考えを明らかにした。

 同社では「GPUクラウド」と呼んでおり、自宅のPCを利用して、画像生成AIや言語生成LLM、シミュレーションのほか、CADやBIM(Building Information Modeling)など、高い処理性能が要求される用途で利用できるという。

 同社が開催した「Dospara plus Synapse2023」において明らかにしたもので、近日リリースする予定だ。サービスの名称は、「raytrek cloud」とし、GPUをクラウドで使用するユーザー向けと位置付けた。

 raytrekは、2023年9月に発表した同社PCのリブランドにおいて、新たに法人向けブランドに再定義されており、今回のraytrek cloudも、ブラント名からも分かるように、基本的には法人向けサービスとして提供することになる。

 サードウェーブの尾崎健介社長は、「AIの世界は一気に広がっていくのは間違いない。サードウェーブは、AIを成長領域の1つに捉えており、サーバーやワークステーションを、企業や研究所などに提供するとともに、クラウドサービスによるAI活用を促進することにも力を注いでいく」と述べた。同社が成長戦略の柱の1つに位置付けるAIの普及戦略において、raytrek cloudの役割が重要になるとの見方を示した格好だ。

サードウェーブの尾崎健介社長

 raytrek cloudは、CADやBIMが快適に使えるGPUクラウドサービスの「リモートワークステーション」と、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用するための業界最安GPUクラウドとする「高速コンピューティング」の2つのクラウドサービスで構成する。

サードウェーブ 法人事業統括本部 上席執行役員の高橋良介氏
リモートワークステーション
業界最安値を謳い、柔軟性や操作性、堅牢なセキュリティも特徴とする

 サードウェーブ 法人事業統括本部 上席執行役員の高橋良介氏は、「リモートワークステーションは、自分のPCがクラウド上にあるようなもので、リモートデスクトップのGPU使用版ともいえる。自宅にあるPCの性能が高くなくても、CADやBIM、CGといった用途で使えるようになる。高いスペックの物理PCを購入することなく、ローカルPCにアプリをインストールするだけで利用できる。自宅でのリモートワークでも効果がある」とした。

 リモートワークステーションでは、「業界最安値」を打ち出す考えであり、「大手クラウドベンダーの2分の1から、5分の1の月額料金で利用できる。Windowsだけでなく、AndroidやiOS、Chromeでも利用ができる」という。スモールスタートでの利用が可能であり、性能を柔軟に拡張できるほか、国内データセンターを通じてサービスを提供するという。

高速コンピューティング。生成AIやシミュレーションなど向け
コストパフォーマンスや柔軟性の高さなどを謳う

一方、高速コンピューティングは、NVIDIAの高性能GPUを搭載したインスタンスを、業界最安値で使えるIaaS型クラウドサービスで、画像生成AIや言語生成LLM、マシンラーニング、シミュレーションといった負荷が高い処理を、クラウドを通じて利用できる。

 「大手クラウドベンダーの半分から3分の1程度の料金で利用できる。また、従量課金であり、時間単位での利用を可能にする。使いたいときだけ、小刻みに使うことができるため、コストメリットが出やすいクラウドサービスとなっている。OSは、Ubuntuとなり、国産データセンターからサービスを提供する。ローカルPCからインスタンスにリモート接続するだけで、膨大な計算を短時間で処理できる。クラウドインフラの未経験者でも手軽に使える」などと述べた。

クラウドとオンプレミスの両面からAI利活用を支援

サードウェーブの井田晶也副社長

 一方で、オンプレミスにおいても、AIの利用促進を提案する。

 サードウェーブの高橋上席執行役員は、「サードウェーブでは、AIの利活用において、オンプレミスとクラウドの両面で支援する。オンプレミスは構成が自由であり、高度なセキュリティを実現できるが、コスト面での課題がある。一方で、クラウドはコストパフォーマンスが高く、短期間で導入ができるが、カスタマイズに課題がある。それぞれの長所を生かした提案をしていく」と述べる。

 また、サードウェーブの井田晶也副社長は、「raytrekの役割の1つが、AIにフォーカスすること。AIの学習などにも活用できるデバイスも投入し、AIに最適化した製品として展開していくことになる」と語る。

raytrek Workstation X4630。リブランド後に投入した第1弾製品で、AIでの利用を想定

 サードウェーブでは、リブランド後のraytrekシリーズにおいて、法人向けのデスクトップPC、ノートPC、ワークステーションをラインアップすることになるが、リブランド第1弾として10月6日から販売を開始したraytrek Workstation X4630は、まさにAIでの利用を想定したものになる。

 高橋上席執行役員は、「サードウェーブは、長年に渡り、ワークステーションを販売し、高い拡張性や良好なプライスパフォーマンス、短納期などに高い評価と特徴がある。これを継承するとともに、最新技術を実装する。また、オフィスに設置できる冷却性能と静音性を両立している点も大きな特徴になる」と自信をみせる。

 CPUにXeon Silver 4410Yを2個搭載した標準モデルのほか、Xeon Gold 6448Yを2個搭載することも可能であり、GPUにはNVIDIA T1000の搭載から、NVIDIA RTX 6000 Adaを2個搭載するまでの拡張性を持つ。また、Xeon専用に設計されたNoctua製空冷モジュール「NH-U12S DX-4677」をデュアルで搭載。風量の最大化と風切り音の低減を両立したという。

これまで好評だった特徴は継承
最新のCPUやGPUも採用
Noctua製クーラーにより冷却性と静音性を両立

 井田副社長は、「AI研究者やデータサイエンティスト、建築設計士、プロダクトデザイナー、映像制作クリエイター、ソフトウェア開発者などの高度な要求に応えるハイパフォーマンスマシンである。複雑なVR制作やVFX、大規模シミュレーションなどの用途にも最適化したワークステーションになる」と語った。

 サードウェーブは、成長戦略の重点項目にAIを掲げるなか、ハードウェアによるビジネスだけでなく、クラウドサービスにおいても事業拡張を目指していることが示された。

raytrek Workstation X4630の内部