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果物などを傷付けず、包み込むように掴めるロボットハンド

開発したROSEロボットハンド

 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 人間情報学研究領域のホ アン ヴァン准教授らは、バラの花から着想を得たロボットハンド「ROSE(ROtation-based-Squeezing grippEr)」を開発した。

 さまざまな分野でソフトハンドロボットが導入される中、特に農業分野においては、農作物を傷付けずに収穫するための手段としてロボットハンドが注目されている。一方で、デリケートな農作物を把持する際の結果が芳しくなく、対象物に特化した開発などが必要となり導入コストが高くなるため、普及が進まなかった。

設計概念

 今回の研究では、収穫物を傷付けないソフトマテリアルの採用、制御の簡素化、製造コストの抑制、汎用性に優れた把持の実現を目指し、ROSEロボットハンドを開発。先端部分は半休の頂点を押し込んで窪ませたような形状をしており、この中央と外側のスキンを逆方向に回転させることでスキンにねじれを起こし、バラの花のように対象物を包み込むように把持する機構となっている。

 人間の指を模したロボットハンドでは対象物に応じた姿勢制御が必要になるが、ROSEロボットハンドでは大面積の接触と閉じた構造によって把持するため、さまざまな対象物に対応が可能。従来のロボットハンドでは困難だった油に浸した対象物も把持できたという。構造や制御が簡単で、低コスト化できる点も特徴となっている。

オリーブオイルタンクから浸したゆで卵の把持の様子

 掴んで持ち上げて戻すといった一連の動作で耐久性についても実験を行なったところ、40万回の把持動作に成功。また、物体を掴んで保持した状態で荷重をかけて把持力を測定したところ、平均で400Nの荷重に耐えられることも分かった。

 研究グループでは、果物の種類を選ばすに収穫作業を代替するロボットや、被介護者のQoLを向上させるための生活支援介護ロボットなどへの活用が見込めるとしており、幅広い分野に提供することでソフトロボットハンドの普及促進が期待されるとしている。