ニュース

富岳、7,200万CPU時間かけた世界最長計算

 京都大学基礎物理学研究所の木内建太特任准教授らの研究グループは10日、連星中性子星の合体について、既存の10倍で世界最長となる合体後1秒間の一般相対性論シミュレーションに成功したと発表した。

 2017年8月に合体する2つの中性子星からの重力波が検出されたが、その一方でこのような合体で何が起こっているのかは詳細に分かっておらず、直径約20kmで太陽の40%以上の質量を持つ中性子星について知るには、高精度の理論計算が必要だった。

 研究グループでは、スーパーコンピューターの富岳を使って、合体する2つの中性子星のシミュレーションを実施。2017年8月に観測された合体とパラメータが一致する、1.2および1.5太陽質量の2つの中性子星を使用し、7,200万CPU時間におよぶシミュレーションを行なった。

 その結果、合体後約0.01秒から物質が放出され、約0.04秒後にはこの動的質量放出がピークに達し、約0.3秒後には合体時に形成されたトーラスから物質が再び放出されることが分かった。また、動的質量放出が合体時の潮汐力と衝撃加熱によるものなのに対し、合体後の物質放出はトーラス内の磁気乱流によるものであることも分かったという。

 今回の結果により、合体過程で放射される重力波や電磁波の特徴について高精度で統一的な理解が得られ、合体で実際に起こったことの詳細な理解につながるほか、宇宙分野だけでなく、原子核物理や素粒子物理学にも大きな波及効果があるとしている。