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リチウム空気電池正極の高容量化と長寿命化に成功。岡山大ら研究

グラフェンメソスポンジの構造模型(左)と原子分解能の電子顕微鏡写真(右)

 岡山大学は7日、「グラフェンメソスポンジ」によってリチウム空気電池の高容量化と長寿命化を達成する正極技術を発表した。岡山大学、東北大学、信州大学、大阪大学、スロバキア科学アカデミー、University of Natural Resources and Life Sciences、上海科技大学の学際的研究チームによる成果。

 リチウム空気電池は、正極に多孔性カーボン材料、負極にリチウム金属、有機電解液を用いた次世代電池。正極の多孔質を通過してくる酸素とリチウムイオンが化学反応することで発電し、エネルギー密度はリチウムイオン電池の数倍が見込まれている。しかし正極、負極、電解液のそれぞれに課題を抱えており、実用化にはまだいくつもの壁がある。

 今回の研究は正極の劣化を克服する目的で行なわれた。リチウム空気電池の正極は、充放電の際に過酸化リチウムの析出と分解を繰り返すためカーボン材料が劣化し、また劣化反応は正極の電位が高くなるほど激しくなることから、酸化耐性の高い正極材料の検討と正極の電位を低下させる方策が求められていた。

 東北大が2021年に開発したグラフェンメソスポンジ(GMS)は、合成の過程で「エッジサイト」と呼ばれるグラフェンシートの断端(酸化することで劣化反応の起点となる)を高熱処理によって潰しており、酸化耐性を大幅に高めている。

 またGMSは三次元構造であることから炭素5員環/7員環からなる「トポロジー欠陥」を形成しており、トポロジー欠陥上ではグラフェンシート上で析出する過酸化リチウム粒子よりも低電位で分解する「過酸化リチウムナノシート」が優先的に析出することから、正極の充電電位を下げる効果も併せて得られることが分かった。

 GMSを採用した結果、これまでのカーボン正極材料の容量を大きく上回る6700mAh/gの容量を達成し、なおかつ従来と比較して6倍以上の充放電サイクル寿命を達成したという。

 今後さらに正極カーボン素材の研究を進めることで、リチウム空気電池の正極にかかわる課題の解消に期待するとしている。

カーボン材料の劣化の原因となるエッジサイト
通常の炭素六角網面上(ベーサル面)での過酸化リチウム形成(左)と、トポロジー欠陥での過酸化リチウム形成(右)の模式図