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NTT、宇宙線による半導体ソフトエラー発生率の全貌解明。中性子による誤動作が対策可能に

低エネルギー中性子のソフトエラー発生率を測定

 日本電信電話株式会社(NTT)および北海道大学は、10meV~1MeVの低エネルギー領域における、中性子が引き起こす半導体ソフトエラー発生率の測定に世界で初めて成功したことを発表した。

 電子機器において、宇宙線に起因する誤動作である「ソフトエラー」への対策は、より安全で安心な社会インフラの実現において不可欠だ。ソフトエラーは、宇宙線により発生する中性子が電子機器の半導体に衝突することで保存されたデータが書き変わる現象で、ソフトエラー発生率の解明は対策において重要となる。

ソフトエラーの発生メカニズム

 NTTは、2016年よりソフトエラーを再現してその対策および評価ができる「ソフトエラー試験サービス」を開始し、2018年にソフトエラー対策と評価に関するITU-T勧告を主催となって制定。そして、2020年には北海道大学および名古屋大学と共同で、高エネルギー中性子領域(1MeV~800MeV)のソフトエラー発生率の測定に世界で初めて成功している。

 同社らは今回、高速ソフトエラー検出器を用いた飛行時間法により、1MeV以下でのソフトエラー発生率を解明。結果によると、ソフトエラー発生率は0.1MeV付近で最も減少し、さらにエネルギーが低くなると増加する傾向がみられることが分かった。

今回測定された中性子エネルギーごとのソフトエラー発生率

 ソフトエラー発生率の全貌を解明したことで、同社は今後、電子機器の周辺環境を考慮したソフトエラーによる故障数のシミュレーションや、エネルギー領域に応じた対策などを行なっていくという。