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NTT、宇宙線に起因する「ソフトエラー」を試験するサービス開始

模式図

 日本電信電話株式会社(NTT)は、国立大学法人名古屋大学、および重試験検査株式会社(SHIEI)は19日、一般企業で保有可能なレベルの小型加速中性子源を用いて、宇宙線に起因する電子機器の誤作動を再現して試験可能であることを実証し、試験方法を確立した。

 地球上では、宇宙線が大気と衝突することによって発生する中性子線が降り注いでいるが、近年半導体デバイスの高集積化および微細化に伴い、ビット判定に必要な電荷は減少傾向にあり、従来と比較して中性子線によって引き起こされるソフトエラーの発生確率が増加しつつある。

 また、通信装置のソフトエラーへの注目は世界的に高まっており、国際電気通信連合、電気通信標準化部門(ITU-T)においては、NTTネットワークサービスシステム研究所が標準化活動を先導し、ITU-T K.124「通信装置の粒子放射線影響(ソフトエラー)の概要」が、2016年10月のITU-T SG5本会合で勧告化の承認がされた。このような背景から、ソフトエラー試験のサービス化に向けて、NTTと名古屋大学、SHIEIの3者が共同研究を続けた。

 今回は、SHIEIが所有する小型加速中性子源を用いて、ソフトエラーの再現、ソフトエラー再現時間の大幅短縮、および中性子照射エリアの制御を目的としたソフトエラー試験照射系を構築。サイクロトロンによって、加速された18MeVの陽子をベリリウムターゲットに照射することにより、中性子を発生させる。実験の前には粒子輸送シミュレーションを行ない、事前に中性子空間分布を把握した。

 実験によって、ソフトエラーを再現できることを確認できたほか、従来方式と比較してソフトエラーを再現する時間を最大で100分の1に短縮した。これは自然界に対して約1億倍の加速に相当し、倍率は任意に調節できるという。また、数cm程度の狭範囲から約50cm四方の広範囲に渡って両方の試験ができることを確認した。

 NTTではこの研究成果をもとに、NTT-ATにて「ソフトエラー試験サービス」を提供開始。ITU-T SG5で策定中の国際標準に準じた内容の試験を行ない、ソフトエラーを再現できるという。

試験装置