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画面が伸び縮みするノートとスマホ。Lenovoがライブデモ

LenovoがMWCでライブデモを行なったディスプレイが伸縮可能なスマートフォンのPoC

 Lenovoは2月27日(現地時間)、ディスプレイが伸縮するノートPCとスマートフォンの試作機を再び公開した。昨年10月に行なわれたLenovo TechWorld '22にてすでにお披露目されたものだが、ここに来て新たに判明した内容をお伝えしていきたい。

昨年の10月に行なわれたLenovo TechWorld '22で公開

ディスプレイが伸びていくノートPC

 今回Lenovoが公開したディスプレイが伸縮するノートPCとスマートフォンは、昨年の10月22日に開催された「Lenovo Tech World ’22」で公開されたPoC(Proof of Concept)だ。PoCとは、そのアイデアが実際に実現できるかどうかを証明するために行なわれる試作のことで、多くの場合は実際に量産されて販売される製品とは直接つながらないものとなる。

 昨年のThinkPad 30周年時のLenovo開発者へのインタビューでも、レノボ・ジャパン 執行役員 兼 Distinguished Engineer 塚本泰通氏が「PoCやプロタイプ制作は以前に増して積極的にやるようになっている」と説明するなど、Lenovoは大和研究所に限らず近年さまざまなPoCに取り組んでおり、この伸縮可能なディスプレイのノートPCやスマートフォンもその一環となる。

 すでに述べた通り、このPoCが直接製品になるということではないが、今後その技術的な要素がThinkPadやIdeaPadなどのLenovoのノートPCなどに採用されていく可能性は十分にある。同じことはMotorolaがPoCとして作成したディスプレイが伸縮するスマートフォンにも言えるだろう。

折り曲げOLEDをモーターで上下させてディスプレイを伸縮

ディスプレイが縮んでいく様子

 このディスプレイが伸縮する仕組みはとてもシンプルだ。ハードウェア的には折り曲げ可能なOLED(有機EL)パネルをモーターで上下に動かしている。そのため、伸縮するように見えるわけだ。伸縮状態に合わせてソフトウェアなどが解像度を自動で調整しており、表示する範囲が変わるようになっている。

ヒンジ部分を見るとディスプレイが折り曲げ可能なOLEDであることが分かる

 ディスプレイ素子そのものは、LenovoがThinkPad X1 Fold Gen 2で採用しているのと同じ、折り曲げ可能なOLEDパネルとなる。実はこのパネルは、昨年の10月にLenovoが東京で行なった記者会見で、シャープディスプレイテクノロジー製であることが明らかにされており、今回のPoCもシャープディスプレイテクノロジー製である可能性が高い。

 なお、ディスプレイを上下させるモーターは本体側(キーボード面と底面)に入っているものの、外観からはうかがい知ることができない。一般的なノートPCで言えば、スピーカーが入っているようなキーボードの左右の下あたりに入っているということだった。

 ただ、こうした構造にすると、それだけシステム側の実装面積をモーターにとられてしまい、バッテリの容量やマザーボードを小さくしないといけなくなったりするという弊害が出る。

 また、モーターで駆動させるとなると、それだけ電力は消費するので、バッテリ駆動時間への影響も考えられる。Lenovoもそれは百も承知で、逆にそれについて理解したいからこそ、実際にPoCで実現してみたということだった。

 今後はそうして課題をどのように解決していくのかを検討し、将来の製品につなげていきたいという。

ディスプレイが伸び縮みするMotorola製スマホのPoC

ディスプレイが伸びた状態でのGmailアプリを利用している様子

 Lenovoの子会社にあたるMotorolaは、前述のノートPCと同じように折り曲げ可能なOLEDを搭載するスマートフォンを公開した。基本的な構造も同じで、モーターを利用して伸縮させるものとなる。

裏側の様子、ディスプレイを縮めた状態では、裏側に表示部分が来る形になる
よく見ると、保護カバーの下にもディスプレイがあり、折り曲げ可能なOLEDであることが分かる
このように裏側に折れ曲がったOLEDのディスプレイに時計やカメラアプリなどを表示も可能

 ノートPCとの違いは、スマートフォンの場合はそもそも画面=本体サイズなので、伸ばした場合には本体のサイズからディスプレイパネルがはみ出る形になる。

 また、縮めた場合には、ディスプレイが本体の裏側に折り返して収納される。このため、裏側に回ったディスプレイ部分を通知や時計として利用するなどの工夫も可能になる。

ディスプレイが伸縮するスマートフォン

 ノートPCと同じくモーターのスペースや消費電力などの点で課題もあるし、伸ばす時にはパネルが剥き出しになるので、その保護をどうするのかなども今後の検討課題だという。

 これまで折り曲げ可能なOLEDを伸縮させて使うという利用方法がなかっただけに、これらのデバイスは実にユニークだ。PoCに過ぎないため、このまま製品化されることはないが、将来のどこかのタイミングでノートPCやスマートフォンに採用される可能性もないとは言えず、今後の展開に期待したいところだ。