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AzureでAIモデルGPT-3.5とDALL-Eが利用可能。“思い立ったら数分で開始”

 日本マイクロソフトは、クラウド&ソリューション事業本部の事業戦略説明会を開催した。事業本部長である日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏は、マイクロソフトのクラウド事業の強みについて、「クラウドはいわゆるインフラだけでなく、アプリケーション、ローコード開発、セキュリティなど包括的な領域提供が求められている。我々はお客様に対し多様な選択肢を提供できる、多様なポートフォリオを持っていることが強みの1つ。2つ目については、確かにクラウドによってインフラ部分は大きく進化したが、例えばDXを実現したいお客様は、インフラだけが早くなっても実現は難しい。アプリケーション開発を含めたイノベーションが必要になる。マイクロソフトはそこまで含めたイノベーションを素早く実現できる。だからこそ、ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている」と開発まで含めた総合力を持っている点であるとした。

 また、OpenAIが提供するGPT-3、DALL-EをAzureのネージドサービスとして利用可能になったことについては、「GPT-3、DALL-Eが最近になって話題になっているものの、実はマイクロソフトとOpenAIとの協力関係は2019年から、CEOであるサティア・ナデラ自身の手で実現したもの」(岡嵜氏)と説明。現在のように話題になる前からの協力関係が築かれていたと強調した。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 岡嵜禎氏

データの利活用にOpenAIの技術

 マイクロソフトのクラウド&ソリューション事業本部では、「マイクロソフトクラウドのスペシャリストとして、お客様が取り組むあらゆるDXテーマに対し、最適なソリューションを提案することが我々の役割」(岡嵜氏)だと説明する。それを実現するためにクラウド&ソリューション事業本部の注力分野は、専門性を活かしたクラウドビジネスの推進、ユーザー・パートナーと共に成長する仕組み、体験を共有することにより顧客のDXを加速の3点だとしている。

 日本だけでなく全世界でマイクロソフトが推進するキーワードが、「Do more with less」。より少ない資源や時間でより多くのことに取り組むを意味するキーワードだが、クラウド事業本部でも次の5つの価値創造を目標に掲げる。(1)よりデータトリブンになり、業務を最適化、(2)自動化+AIで効率化、(3)開発者向けプラットフォームでイノベーションを創出、(4)仕事のやり方を変革し従業員を再活性化する、(5)あらゆるもの、人、場所を保護する。

 データトリブンによる変革は売上、市場投入までの時間削減、顧客満足度向上、増益効果といった点で成果を上げることにつながる。さらにデータによって効果を上げていくためには、データレイクとデータウェアハウスのメリットの融合など最新のデータアーキテクチャの採用など、課題を克服するためのデータ活用戦略が必要になる。

 それを実現するためにマイクロソフトでは、「Microsoft Intelligent Data Platform」を活用することが最適な方法だと説明。それを実践し、成功を収めた事例として横河電機を挙げた。

 「製造業のお客様事例になるが、ポイントの1つがERP、CRMといったITシステムから上がってくるデータと、工場系システムから上がってくるOTデータを、いかにシームレスに融合していくのかを模索し、製造業における差別化と新しいビジネス推進につなげていくことを実践した事例となっている。これを実現するためのデータ統合基盤としてAzureを採用し、Azure Databricks、Azure Synapse Analytics、Microsoft Purviewを中心としたアーキテクチャとなっている。もう1つのポイントは、単にデータを融合するだけではなく、そのデータがどこで発生し、どこで活用されているのかをMicrosoft Purviewを活用し、実装している点にある」(岡嵜氏)。

 データを最適に活用する方法として、マイクロソフトが推進しているのが自動化+AIだ。Azure AIは、業務シナリオに特化したサービス、カスタム可能な学習済みAIモデル、エンドツーエンドの機械学習サービスとさまざまなAIサービスを用意する。OpenAIとの連携もこの流れで提供される。

 「Azure OpenAI Serviceの利用が可能となった。世の中を騒がせているサービスなので認識している人も多いと思うが、利用時に申請が必要であるものの、使いたいと考えてから最短で数分で使い始めることも可能となった。マイクロソフトの“責任あるAI”をベースに、お客様にとって意味のあるサービスを提供していく。話題のOpenAIを、自分たちのビジネスによりフォーカスした形で取り込んでいくことが可能となる」(岡嵜氏)。

 Azure AIについては、3月16日に開催のイベント「Azure AI Day 2023」、サイト「Find new value on Azure」での情報提供も行なっている。

 マイクロソフトのクラウドの特性になっているのが、豊富な開発ツールだ。マイクロソフトクラウドによる開発プラットフォームによって、アプリのモダナイゼーションを実現する。

 「マイクロソフトはAzureの開発プラットフォームだけでなく、Visual Studio、Power Apps、GitHubとさまざまな開発プラットフォームを提供している。これらの開発ソリューションを組み合わせ利用することで、インフラだけでなくアプリ開発のスピードを上げることでDXのスピードを上げることができることがポイント」(岡嵜氏)。

ローコード・ノーコードでも開発可能

 開発ツールの豊富さを実現するもう1つのプロダクトがMicrosoft Power Platformだ。マイクロソフトが「市民開発者」と呼ぶ、プロの開発者ではない企業の業務担当者など現場での開発を支援する開発ツールで、ローコード・ノーコード開発のためのツールとなる。

 岡嵜氏は、「最近のトレンドとして、プロ開発者と市民開発者の融合による開発事例が増えている」と新しいトレンドを紹介。それを実践した事例として東京地下鉄を紹介した。

 東京地下鉄ではAzure AIとPower Appsを活用し、社内で鉄道関連施設の保守管理を担当する工務部のスタッフがAIを活用したソリューション開発の内製化に取り組んだ。ローコード・ノーコードで利用可能なAIサービスであるAzure Cogbitive ServiceとMicrosoft Power Platformを活用した。

 「路線設備の異常検知をする部分にAIのケーパビリティを使っているが、異常検知をする機械学習モデルを作るためにはある程度AIの知識がある人が作らないと難しい。そこでプロ開発者がそこのAPIサービスを作ったが、パラメータ入力やどういった形で表現するかなどについてはユーザーサイトのニーズが強い部分となる。

 そこでその部分は市民開発者がPower Appsを使って開発を行なうという、プロ開発者と、市民開発者が融合しながら、イノベーションを加速する良い事例になった。こういったニーズのお客様がどんどん増えているので、マイクロソフトがそのニーズに答える、補足をさせていただきたいと思っている」(岡嵜氏)。

 マイクロソフトでは開発者支援として、内製化に向けた支援策としてパートナー企業と共に学習プログラムを提供している。また、コミュニティ活動を通じたプロ開発者と市民開発者の連携の加速するためにコミュニティ「MICUG(Microsoft Cloud Users Group for Enterprise)」を発足し、4,000人を超す会員が参加している。市民開発に対してはマイクロソフトDXユーザー会によって、企業間交流など開発を後方支援している。

 また、企業の注目度が高い働き方の変化に対しては、日本マイクロソフト自身のハイブリッドワーク実践例などを紹介しながら、ハイブリッドワーク体験会などを開いている。この会場でMicrosoft Vivaを活用した従業員の知識共有や文化共有など、ハイブリッドワーク下で再構築することで従業員体験を向上させるといった紹介も行なっている。

 「ハイブリッドワークは、マイクロソフト自身が経験者でもある。品川のマイクロソフトのオフィスは、全ての会議室にTeams Roomsを活用したハイブリッドワークミーティングを実施できる環境を整えている。これを体験しながら、ハイブリッドワークとはどんなものかを体感することができる。」(岡嵜氏)。

 さらにこれまで紹介した取り組みのベースとしてセキュリティ対策を紹介し、「50以上の製品カテゴリを統合した6つの製品ファミリとMicrosoft Cybersecurity Reference Architecture(MCRA)によって、激しさを増しているサイバー攻撃に対処し、マルチクラウドIT環境に対応していく」(岡嵜氏)とベースとしてセキュリティ対策があると話した。

最新テクノロジーのハブとなるMTCがリニューアル

 マイクロソフトの最新テクノロジーのハブとなる、品川オフィスに設けられているマイクロソフトテクノロジーセンターがリニューアルした。MTCのセンター長である吉田雄哉氏は新しい役割を次のように説明する。

リニューアルされたMTC

 「テクノロジーセンターは、全世界28か国、合計43チームにに分かれ、活動している。お客様を支援するために各チームのノウハウを共有している。従来、お客様は自分たちのやりたいことを整理し、ベンダーに依頼するというやり方だったが、現在お客様が実現したいと考えることは単一サービスには終わらないことも多い。そこでお客様が目指す目標、課題を深く危機、我々のサービスを最大化していくために、ソリューションを体感できるMTCを活用してもらう」。

 MTCにが経営層など意思決定層への情報提供やディスカッション等を行うExecutive Theaterや、マイクロソフトが提供する製品やサービスを体験できるExperience Room、特定業種でのテクノロジーを紹介する展示ブースインダストリー・ポッドなどが設けられている。プレス関係者にMTCが公開されたが、当日も一部の部屋は実際に顧客が利用中。人気の高い施設であることが伝わってきた。

 プレス向けに公開されたExperience Roomでは、Teams Roomsを体感することができる。Teams Roomsは、会議室に紐づいたTeamsで、公開された部屋ではマイクやカメラが設置されている。

 「室内にカメラ、マイクが埋め込まれているので、ストレスなく社外とつながって会議を行なうことができる」(吉田氏)という状況を体感できる。

カメラ、マイク、モニターなどを活用し、Teams Roomsを体感できる

 インダストリーメタバースを体験できる部屋では、「未来のではなく、現在利用可能なメタバースを体感することができる」(吉田氏)ことが大きな特徴となっている。用意されたHoloLensをつけると、工場の作業中に操作指示を見ながら作業を進めていくことになる。従来のHoloLensの画面にTeamsが統合され、Teamsの画面を見ながらコミュニケーションを取り、作業内容を確認するといったことが可能となった。

 「コンシューマ向けメタバースが話題となり、アバターばかりに注目が集まっているが、インダストリーメタバースではアバターではなく、コミュニケーションを取りながら、作業を進めるスタイルになる」と実態に即した内容となっている。