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東海大、カーボンナノチューブを用いたIoTセンサー向け熱電発電デバイス実現につながる技術

 東海大学工学部応用化学科 高尻雅之教授の研究グループは11日、熱伝導率が低く、長期間安定してN型特性を示すカーボンナノチューブ複合膜の開発に成功したと発表した。熱電発電をはじめとしたN型とP型カーボンナノチューブを用いる半導体デバイスの長寿命化や普及が期待できるとしている。

 熱電発電デバイスでは、P型半導体とN型特性を示す2つの材料を用いることで、効率的に電圧/電力を取り出せる。しかし、カーボンナノチューブを使用する場合、空気中の酸素分子の影響でP型になりやすいことから、安定したN型カーボンナノチューブの作製が困難で、希少金属によるN型無機熱電材料との組み合わせなどが採用されてきた。

 研究グループでは、カーボンナノチューブの表面を陽性界面活性剤のDODMACによってコーティングすることで、N型の熱電性能を長期間安定させることに成功。加えて熱伝導率が従来品の約10分の1と非常に低く、デバイスの性能向上にも寄与できるという。また、これを用いて試作した熱電発電デバイスの14日目と160日目の出力電圧と最大電圧を測定したところ、性能に劣化がないことも確認できたという。

 カーボンナノチューブのみで構成されたPN接合型の熱電発電デバイスは、希少金属を用いないため、持続的に安定供給が可能。柔軟性もあり、人の体温を利用したウェアラブルセンサ向け電源など、さまざまなIoTセンサー用電源としての活用が期待されるとしている。今後は出力電圧や電力の向上を図るという。