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Wi-Fiルーターで呼吸状態の変化を検知する技術

©S. Mosleh/NIST

 米国国立標準技術研究所(NIST)は20日、人間の呼吸がWi-Fiの信号に与える変化により、咳や喘鳴を検出する技術を発表した。

 Wi-Fiでは、チャネルの状態情報(Channel State Information:CSI)という信号を、子機とアクセスポイント間でやり取りしている。子機から送信されるCSI信号は常に一定で、物体に跳ね返ったり、通り抜けたりする際に強度が変化するが、人の動きや呼吸も影響を与える。それを受信したアクセスポイント側が歪みの量を分析してリンク速度の調整や最適化を行なっている。研究チームはこのCSI信号を利用して、COVID-19の治療に役立てられないか考案した。

 具体的には、電波暗室に市販のルーターを置き、CSIストリームをより頻繁に(具体的には1秒間に最大10回)要求するようルーターのファームウェアを変更。そして、異常に速い呼吸や喘息、肺炎、慢性閉塞性肺疾患を再現できるマネキンを置いて、CSI信号の変化をより詳細に調べた。その結果、胸の動きによってWi-Fiの信号経路に変化が生じたことが分かった。

 そして、ここから収集できたデータをディープラーニングによって学習させることで、さまざまな呼吸の問題を示すパターンを認識できたという。「BreatheSmart」と名付けられたこのアルゴリズムは、99.54%の確率で呼吸パターンを正しく分類できたとしている。

 研究者のSusanna Mosleh氏およびJason B. Coder氏は「アプリおよびソフトウェア開発者が、今回の研究プロセスをフレームワークとして使用し、呼吸をリモートで監視するプログラムを作成できることに期待している」と述べている。

テスト風景©S. Mosleh/NIST