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パナソニック、技適マーク取得の特性試験サービスを開始。国内初のJET認定「特任外部試験所」に
2022年12月8日 07:20
パナソニックホールディングスは、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)から、電波法に基づく「特任外部試験所」の認定を、国内で初めて取得した。これに基づき、2023年1月11日から、電波法に対応した特性試験サービスの提供を開始し、技術基準適合証明(技適マーク)の取得支援を行なう。
「IoT化の進展により、特に、2.4GHz帯および5GHz帯の申請件数が年々増加しているが、限られた数の登録証明機関によって審査が行なわれているため、開発リードタイムが長期化するという課題が生まれている。設計段階での事前検討を含めて数回の測定が必要であるが、試験を行なうまで数日から数週間かかり、審査の見通しが立ちにくい。
だが、今回の特任外部試験所の認定を取得したことで、最短で1日で特性試験が実施できる。IoT機器の開発リードタイムの長期化という課題を解決できる」(パナソニックホールディングス プロダクト解析センターの石橋直人課長)とした。
特任外部試験所の仕組みによって、従来は民間企業では困難であった無線に関する特性試験サービスの提供が可能になり、パナソニックグループや同グループ以外の製造者が、これを利用することで、特性試験の結果をもとに、JETで技術基準に対する適合性審査を行ない、技適マークの取得が可能になる。
パナソニックホールディングスでは、技適マーク取得に向けた特性試験サービスのほか、設計検討段階での依頼測定サービスや、製造後の品質を担保する量産管理測定サービスも提供。2022年12月8日からサービスの受付を開始する。
まずは、電波法種別第19号に規定する特定無線設備である2.4GHz帯のWi-Fi、Bluetoothを対象に特性試験サービスを実施。2023年4月以降、5GHz帯にもサービスを広げる。さらに、ニーズに応じて、ほかの周波数帯にも試験サービスを拡大していく考えだ。
月20件の特性試験が実施できる体制となっているが、まずは月10件の試験を目標にする。当面は、パナソニックグループでの利用が多いと見ているが、徐々に社外からの利用も増加すると見込んでいる。
「パナソニックグループにとっては、内部で試験が行なえるようになるため、計画的に試験を実施し、効率的にIoT機器を開発できる。設計者が試験にも立ち会えるため、早期のフィードバックも可能になる。IoT機器の早期市場投入につながり、事業拡大を後押しすることにもつながる」と述べた。
日本国内では、無線装置だけでなく、Wi-FiやBluetoothなどの製品に搭載する無線モジュールなども、技適マークの取得が必要となっている。
電波法で定められた範囲の電波を発する場合、原則として、使用者による無線局免許手続が必要であるが、特定無線設備については、この技適マークを取得することで、免許手続の簡素化が可能だ。技適マークは、電波法の技術基準に適合していることを証明するもので、JETを始めとする登録証明機関が適合性を審査している。
技適マークには、1台ごとに異なる証明番号を付与する技術基準適合証明と、代表サンプルで認証し、同一機種に同一の認証番号を付与する工事設計認証があるが、いずれも実機を用いた特性試験が必要になる。
「特性試験では、利用可能な周波数帯域や強度、専有時間などが細かく決められている。無線機器が、特性試験で定められた技術基準および設計規格値を満足しているかどうかを、実機を用いて確認する必要がある」(パナソニックホールディングスの石橋課長)。
一般財団法人電気安全環境研究所 東京事業所長の渡邊靖之氏は、「これまでは、製造者などの顧客から、JETに試験品を送り、測定をしていたが、測定業務については特任外部試験所で行なえるようになった。JETが開発した測定用のソフトウェアを提供し、簡単に、正確な測定が実施できる。試験データに問題がなければ、JETでは、スムーズな認証発行が行なえる」と語る。
測定用のソフトウェアを活用することで、設定の手間などがなくなり、工数は5分の1程度になるというメリットもある。
また、「パナソニックホールディングス以外からも興味を持ってもらえるのならば、特任外部試験所を増やしたい。だが、試験を行なってもらえる設備や装置、要員などの力量があることが条件である。電波法の理解度や場所など、一定の条件を満たすことが前提となり、高いハードルを設けている。パナソニックホールディングスは、JETが設けた要件をクリアしたことから、最初の特任外部試験所として契約を結んだ」と述べた。
JETは、1963年に、電気用品取締法(現電気用品安全法)の指定検査機関として設立。電気製品などの試験、検査、認証を行なっている。2012年に無線機器試験センターを開設し、無線機器の適合性証明や認証を開始した。
一方、パナソニックホールディングスのプロダクト解析センターは、さまざまな解析評価技術の開発に取り組んでおり、モノやコトの出来栄えを数値化し、可視化しているのが特徴だ。持ち株会社であるパナソニックホールディングスの技術部門の中にあり、パナソニックグループ内の事業会社を横断的にサポート。社外にも解析評価技術を提供している。
パナソニックグループ向けの実績としては、今回のような無線関連の評価のほか、シェーバーやシャワーヘッド、インパクトドライバーなどの商品を手で握ったときの把持圧分布と、人の感じ方の関係を紐解き、人間工学に基づくグリップ形状を開発したり、工場の生産性や効率性を解析、評価したりといったことも行なっている。
パナソニックホールディングス プロダクト解析センターの難波嘉彦所長は、「プロダクト解析センターは、人間工学によるユーザビリティのほか、材料分析、EMC(Electromagnetic Compatibility)、電子回路解析、デバイス創造、電気・人体安全、バイオ評価、信頼性の8つのコア技術を保有している。これだけ幅広い範囲をカバーしている事業体は、国内外を見ても存在しない。
解析評価技術は、研究開発、企画構想、設計・開発、試作・評価、量産・販売といったさまざまな場面でお役立ちができる。これがパナソニックグループの技術や製品を支えている。それぞれのステップで、顧客視点で科学的ソリューションを提供できる『番頭』としての役割を目指す」とした。
パナソニックホールディングスでは、EMCおよびノイズ問題を冠する拠点として、認証、評価を行なう兵庫県丹波篠山市の篠山拠点と、設計、対策を行なう大阪府門真市の門真拠点を持ち、認証試験だけでなく、製品設計へのアドバイスを行なっている。
故訓戒の特任外部試験所の認定を受けた篠山拠点では、6基の電波暗室、5基のシールドルームを設置しているのに加え、リファレンスオープンサイトも配備。ISO/IEC17025認定取得による公的な試験所として活動しており、第三者評価体制を敷いているほか、iNARTE資格取得者による信頼性の高い評価を実施している。家電のほか、医療、産業、車載、半導体などのEMC評価および認証取得が可能になっている。
無線評価技術については、微弱無線評価や高周波利用設備測定などにより、日本国内の電波法申請に向けた測定基盤の強化を行なう「電波法対応」と、電波伝搬シミュレーションや住宅・工場環境での実測評価を行なうことで、電波の伝搬度合いを解析し、実使用空間まるごとの性能評価を行なう「電波伝搬解析」が可能であり、法規対応と実使用を想定した解析により、無線機器の開発を加速しているという。