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Adobe MAXで15.6型液タブ、Meta Quest Proなどが展示される
2022年10月21日 10:29
Adobeは、10月18日から10月20日(現地時間、日本時間10月19日~10月21日)の3日間にわたり、同社のクリエイター向けサブスクリプション型ツール「Creative Cloud」に関する年次イベントとなる「Adobe MAX」を、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるLACC(Los Angeles Convention Center)において開催した。
この中でAdobeは10月18日(現地時間)に提供を開始したCreative Cloud最新版の詳細を説明したほか、同社が中心になって推進している静止画・動画などの無断使用、ディープフェイクを防止する取り組みとなるCAI(Contents Authenticity Initiative)に対応したカメラの開発意向表明をニコンやライカなどを行なうなどの発表を行なった。
また、Adobeはリアル会場となったLACCの会場において展示会を行ない、同社製品やAdobe MAXに出展しているサードパーティーが対応製品を展示した。この中でASUSTeK Computer(以下ASUS)は、同社が1月に発表を行なっていたワコムのProペン(EMR方式)に対応した15.6型モバイル液晶タブレット「ProArt Display PA169CDV」を展示して注目を集めた。
慣らし運転の意味もあり参加者は例年の3分の1の規模になったが、雰囲気は通常と同じだった3年ぶり対面のAdobe MAX
10月18日(現地時間)からAdobeが開催したAdobe MAXは、2020年、2021年の2年連続でコロナ禍によるオンライン開催となった後、今年は3年ぶりに対面開催となった。会場となったのは2019年の会場と同じLACCだが、2019年には2つあるホール(ウエストホール、サウスホール)の両方を使っていて開催されていたが、今回のAdobe MAXはほぼウエストホールのみで開催され、以前のような規模には達しなかった。
これは参加者希望が減ったということではなく、Adobe自身がコロナ禍後の対面イベントを開催するのが今回のAdobe MAXが最初となったため、参加者のキャパシティを絞ったためだ。2019年のAdobe MAXでは約19,000人の来場者を集めたが、今回は約6,000人と3分の1以下に絞っており、それが影響してウエストホールはほぼ使われていないという状況になった。従来はLACCの中で行なわれていた基調講演、Sneaksといったステージのイベントも、隣接するMicrosoft Theaterで行なわれるなど、イベントの構造も微妙に変えながら今回のAdobe MAXは開催された。なお、基調講演そして、Sneaksなどの様子は以下の記事をご参照いただきたい。
Adobe MAXの最大の特徴である、「Session」(セッション、製品の担当者や開発者などが参加者に直接説明する説明会)やHands-on Labs(ハンズ・オン・ラボ、たとえばPhotoshopの名人のような講師がPhotoshopの使い方を参加者に教える講習会)も以前と同じように行なわれており、2019年以前のAdobe MAXのように熱心に聞いている姿が印象的だった。
10月18日午前(日本時間10月19日未明)に行なわれた基調講演で、Adobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏が「ようやく対面(英語でin-person)でMAXを開催できるようになった!」と聴衆に呼びかけると、会場のMicrosoft Theaterに詰めかけた参加者(多くはクリエイター)は割れんばかりの拍手と叫びで応じて、多くの関係者が早くオンラインだけのMAXから対面のMAXへの復帰を期待していたことを伺わせた。
ハードウェアベンダーの展示ではASUSのEMR対応15.6型液タブPA169CDVが注目を集める
そのように対面で開催されたMAXだが、同時にCommunity Pavilion(コミュニティー・パビリオン)と呼ばれている展示会の完全に復活し、以前と同じようにAdobeやAdobeのパートナー企業による展示が行なわれていた。
その中で、最も目立つ一番手前にブースを構えていたのは、Acer、ASUS、Dell、HP、MSIなどのハードウェアベンダーで、それぞれAdobeのクリエイター向けの製品を展示していた。
その中で最も注目されていたのはASUSで、1月のCESで発表したが、実機はこれまで実際には見せてこなかった16型モバイルモニターとなる「ProArt Display PA169CDV」(以下PA169CDV)を展示した。ProArtはASUSのクリエイター向けブランドで、モニターやクリエイター向けのノートPCなどがランナップされて販売されている。PA169CDVもそうしたProArtブランドの1つで、やはりクリエイター向けと位置づけられている。
モニターとしては15.6型の4KのIPSパネルを採用しており、DisplayHDR 400のHDRに対応しているほか、sRGB/ Rec.709でそれぞれ100%の色域を実現している。また、本体の左側面に用意されているUSB Type-C(うち1つはDP over USB Type-C)が2つないしはHDMI端子(電源は別途USB Type-CのACアダプタなどで供給する必要がある)でノートPCと接続して利用することを前提としている。また、PCからはUSBデバイスとして見えるホイールも用意されており、それをアプリで利用して色調整を行なうなどが可能になる。
PA169CDVがユニークなのは、同社が「ProArt Pen」と呼んでいるワコムEMR方式のデジタイザーペン(4,096段階筆圧検知)に対応していることだ。クリエイターが、慣れ親しんでいるEMR方式のペンであり、ペン側のバッテリを必要としない(EMRではパネル側から電波を出してそれによりペンを検出するため)ので、携帯性に優れているのも特徴となる。実際に会場で試してみたが、ワコムEMR方式らしい、書き味が再現されていた。
また、本体の裏側に用意されているキックスタンド(本体に内蔵可能なスタンド)もユニークで、2つのキックスタンドが用意されている。それが、下部に用意されているMicrosoft Surfaceシリーズのような通常のキックスタンドと、上部に用意されているやや小さなキックスタンドがそれで、前者は通常のモニターとして立てて使う時に使い、後者はペンタブレットとして使う時に使う形になっている。ペンタブレットとして使う場合にはこの上部のスタンドを使うことで、結構な筆圧で書いてもグラグラせずに利用することができるのはよく考えられてあると感じた。
ASUSの担当者によればPA169CDVは来年(2023年)発売される計画で、現時点では価格などは未定ということだった。
Substance 3D Modeler向けにMeta Quest Proが展示される
Meta(旧Facebook)は先日発表したばかりのMeta Quest Proの展示やデモを行なっていた。
今回AdobeはSubstance 3D(同社の3Dコンテンツ作成ツールの統合ブランド)向けの新しいアプリとして「Substance 3D Modeler」をリリースしたことを発表した。Substance 3DはCreative Cloudとは別の料金体系(つまりオプションとして購入する形になっている)のアプリだが、クラウドストレージの利用やフォントの利用などで機能の共通化が進んでいる。今回発表されたSubstance 3D Modelerでは、Meta Questシリーズを利用して3D空間の中で3Dコンテンツをデザインするなどの使い方が可能になる。MAXの基調講演ではデモとして、3Dのドラゴンを描画する様子が公開されるなどして注目を集めた。
また、Adobeは同社が中心になって推進している静止画・動画などの無断使用、ディープフェイクを防止する取り組みとなるCAI(Contents Authenticity Initiative)の規格に対応したカメラを、ニコンとライカが開発意向を表明したと発表したが、展示会場ではそのプロトタイプが展示されていた。現状ではいずれもプロトタイプで販売されるようなものではないが、ニコンのZ9ベースのプロトタイプは実際に動作しており、それを利用してCAIのメタデータを持った画像を撮影することが可能になっていた。
さらにAdobeは同社がカメラクラウドと呼んでいる撮影した画像を、Frame.io(同社が買収してPremiere Proなどと連携できるようにしているクラウドベースのサービス)に直接アップロードできる仕組みに対応した動画カメラを、富士フイルムとREDが導入する計画であることを明らかにし、両社のカメラをブースに展示した。REDのカメラのモニターにはクラウドに接続している状況が表示されている様子などを確認することができた。
もちろん、こうしたカメラクラウドの機能は、基本的にプロ向けの機能で、たとえばスポーツ中継の会場で使って、カメラマンが撮影した動画をリアルタイムにアップロードした動画をFrame.io上で編集して切り出して、すぐにSNSに投稿するなどの使い方が考えられている。オリンピックの会場などで、TV中継を行なっているTV局が、視聴率を上げるために動画を添付してSNSへの投稿を迅速に行なうためにこうした機能を利用する、そうした用途に使われることになるだろう。