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Intel、「ムーアの法則は死なず、新しい時代に入る」。TSMC、Samsungとも協力

ムーアの法則は死なずとIntelのパット・ゲルシンガーCEO

 Intelは、年次イベント「Intel Innovation」を開催している。9月27日の午前中(日本時間9月28日深夜)には同社 CEO パット・ゲルシンガー氏による基調講演が行なわれ、この中で製造戦略について説明し、「ムーアの法則は死んでいない、これからも進化していくが、今後は新しい時代に入っていく」とコメントした。

 その上で、同社をはじめとすると半導体産業の主要企業が中心と設立されたUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)の取り組みについて触れ、Intelとファンダリ事業では競合することになるTSMCやSamsung Electronicsなどとも協力して、サプライチェーンの構築といった課題を解決していくと強調した。

今年の末までにIntel 18Aで最初のテストチップを製造する、4年間に5ノードは計画通りに進んでいる

半導体の製造技術は、半導体メーカーにとっても、今や社会にとっても重要な技術になりつつある

 Intelは、パット・ゲルシンガー氏がIntelに出戻りCEOに就任して以来、製造や製品展開などに新しい戦略を打ち出している。半導体製造に関しては「IDM 2.0」という新戦略を打ち出しており、従来からのIDM(自社で製造から販売まで垂直的に統合していること)に加えて、外部のファウンダリも活用し、そしてIntel自身の製造施設を外部の半導体メーカーに開放するIFS(Intel Foundry Service)を開始することを3つの柱として半導体の製造を行なうことを明らかにしている。

 その肝となるのが、同社が進めているプロセスノード開発の加速だ。10nmの立ち上げが大きく遅れて、TSMCやSamsung Electronicsといったファウンダリにも抜かれてしまったことで、プロセスノードや製造面でのIntelの優位が大きく揺らいだことは周知の事実だが、それを取り返すにはプロセスノードの開発を加速し、TSMCやSamsung Electronicsをキャッチアップするしかない。

 そこで、Intelが打ち出したのは、今後4年間で5世代のプロセスノードを矢継ぎ早に投入して、TSMCやSamsungに追い付くどころか追い越してリーダーに返り咲こうという意欲的なロードマップだ。

 ゲルシンガーCEOは「我々はIntel 18Aノードで、誰にも疑問を挟まれないような明確なリードを築くつもりだ。その鍵となるIntel 18Aは今年(2022年)の末までにテストチップの生産を行なうことが可能になる予定だ」と述べ、Intel 18Aの開発は順調に進んでいることをアピールした。

 「“ムーアの法則は死んだ”と言う人がいるが、答えはノーだ。今もムーアの法則は有効で、リボンFETなどを導入することで今後も進化していく」とも述べ、ムーアの法則に沿って半導体製造技術が進化していくことが半導体産業、引いては社会の進化に役立っていくと強調した。

チップレット技術の標準化を実現するUCIeの普及に向けてTSMC、Samsungと協力していく

UCIeに参加している企業

 しかし、半導体の進化はそうしたムーアの法則の進化、つまりはプロセスノードの進化だけでなく、パッケージング技術などの進化なども同時進行的に起こると強調し、UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)の取り組みに関して紹介した。

 UCIeは、IntelやTSMC、SamsungなどのIDM/ファウンダリやAMD、NVIDIA、Qualcommといったファブレスの半導体メーカーなどが中心になって設立されたコンソーシアムで、チップレット(パッケージ内でのチップの混載技術のこと)の標準化を推進する組織となる。

複数のファウンダリで製造したチップが1つのパッケージに

 「このUCIeによりIntelが製造したチップ、TSMCが製造したチップ、GlobalFoundriesが製造したチップ、TIのマイクロコントローラ……そうしたメーカーも製造する技術も違うチップを、チップレットとして1つのパッケージにまとめることができるようになる」と述べ、UCIeによる標準規格が半導体製造の仕組みを大きく変える可能性があると指摘した。

3社がUCIeの普及に向けて協力していく
TSMCとSamsung Electronicsはビデオメッセージで3社の強力に言及

 そしてそのUCIeの普及に向けて、現状最先端のプロセスノードを提供できるファウンダリビジネスを行なっているIntel、TSMC、Samsung Electronicsの3社が協力して、UCIeのサプライチェーンや開発環境の構築などの点で協力し、半導体産業がさらに発展していけるようにすると強調した。

 また、ゲルシンガーCEOは、Intelが20年前からずっと開発し続けている「シリコン・フォトニクス」のデモを行なった。まず、自身が20年前にシリコン・フォトニクスは未来のCPUのトレンドになると語っている映像を見せて笑いを誘った後で、スコットランドの研究所から、チップのパッケージにシリコン・フォトニクス用のコネクタを用意し、それによりチップとチップを光通信でデータのやりとりができる様子をデモした。

20年前の若かりし頃のゲルシンガー氏
シリコン・フォトニクスを利用可能にした試作チップ
抜き差ししても通信できる様子が公開された