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東工大、給電せずに電気化学反応を駆動する手法

 東京工業大学(東工大)と科学技術振興機構(JST)は27日、東工大大物質理工学院応用化学系の稲木信介教授らが、電解液の送液により生じるエネルギーを利用して有機化合物の電解反応を駆動する手法を開発したと発表した。

 従来の化学反応は熱エネルギーや試薬を利用したもの。簡単で装置も安価というメリットがあったが、廃棄物が発生する、試薬に危険性があるなどの課題があったという。

 化学反応の代替手法として用いられている電解反応は、棒状や板状の電極に電気を流すことで、電極に触れた物質との電子授受による反応を進める手法。化学反応と比較し、種類や量を減らすことができる、熱エネルギーを必要としないなどのメリットがあり、世界的に化学反応を電解反応に置き換える試みがなされているという。

 電解反応にもデメリットがあり、電極に電気エネルギーを供給する電源装置が高コスト、配線が煩雑などが課題という。

 今回、東工大の稲木教授らが開発した手法では、希薄電解液をマイクロ流路に送るさいに生じるエネルギーを駆動源として利用する。「試薬不要」で「給電不要で装置を使わない」と電解反応のデメリットの解消を目指すものだ。

 研究では、3V程度のエネルギーが発生し、電解反応の駆動に成功した。現時点では高圧で送液する必要があるため、より低圧での送液により同様の反応を駆動するための改良が望まれるというが、ファインケミカル合成や有害物質の分解などの電解反応にも適用可能と見られている。

実験で用いた装置

 近年、SDGsの達成に向けた取り組みとして、有害かつ危険な試薬を用いる化学反応を、今回の手法に代表される「クリーンかつ安全な電解反応」へ置き換えることが望まれている背景もあるという。