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半導体逼迫の根本原因は供給量、解決に向け積極投資。Intel CEOが言及

Intel CEO パット・ゲルシンガー氏

 Intelは、5月10日~5月11日(現地時間、日本時間5月10日~5月12日)に同社のプライベートイベントとなる「Intel Vision」(インテル・ビジョン)をアメリカ合衆国テキサス州ダラスフォートワース空港近くの「Marriott Gaylord Texan & Convention Center」で開催している。

 5月10日(現地時間、日本時間5月10日深夜~5月11日未明)に行なわれた基調講演の中で、同社のパット・ゲルシンガーCEOは、「デジタルはCOVID-19のパンデミック下ではテクノロジーは先へ進むための橋になったが、それだけに社会にとって重要な存在になった」と述べた。

 たとえばテキサスで昨年(2021年)発生した停電のような災害が発生すると、長時間ネットワークが使えず、社会生活に影響をおよぼすようになるなど、デジタルが社会にとって重要な存在になってきており、さまざまな環境下でも快適に使え、半導体を途切れることなく社会に供給することが半導体産業にとって重要だと説明した。

 また、ゲルシンガー氏は講演後の質疑応答の中で、「半導体逼迫が発生した根本的な原因は産業全体での供給量が足りなかったことだ。だから我々は供給量を増やす、つまりより多くの工場を建設することにした」と述べ、Intelが工場を増やしていることは、半導体逼迫の緩和につながることになるという説明を行なった。

パンデミック下でのデジタルトランスフォーメーションを実現する上で重要になった半導体

基調講演に登壇したIntel 上級副社長 兼 クライアントコンピューティング事業本部 事業本部長 ミッシェル・ジョンストン・ホルトス氏は、この講演の中で発表された第12世代Core HXプロセッサを公開した

 今回のVisionの基調講演には、昨年の2月にIntelに復帰して、会社を引っ張るCEOに就任したパット・ゲルシンガー氏をはじめ、PC事業を統括する上級副社長 兼 クライアントコンピューティング事業本部 事業本部長 ミッシェル・ジョンストン・ホルトス氏、AXG(GPUなどのアクセラレータ)事業を統括する上級副社長 兼 AXG事業本部 事業本部長ラジャ・コドリ氏などの各事業部の幹部が登壇し、Intelの全体の戦略と各事業部の新製品やロードマップなどを説明した。

デジタルによる社会変革がパンデミック下で進展

 この中でゲルシンガー氏は「一昨年からのCOVID-19のパンデミック発生により、デジタルトランスフォーメーションは進展し、デジタルはパンデミック下で社会が前に進むために重要な橋となった。それだけに社会にとって重要さが増しており、昨年ここテキサスで発生したような停電では多くの人がそれを使えずに立ち往生した」と述べ、デジタルの重要性が一般社会にとって以前よりも増していることを説明した。

Pegatronが作成したポータブルの5G基地局。半導体だけでなくソフトウェアに関してもIntelから提供されている

 そして台湾のODMメーカー「Pegatron」が作成したポータブルな5Gの基地局を紹介し、「Pegatronによれば、Intelのソフトウェアと半導体があってこそ、こうしたポータブルな基地局が作れるようになった」と述べ、Intelがそうした顧客の課題を解決するために、テクノロジーを開発し、半導体を製造し、供給しているのだということを強調した。

今は半導体産業にとって戦略的転換点。供給不足の根本原因を取り除くべく製造施設へ巨額投資

Intelの半導体逼迫解決への答えは供給を増やすこと

 そして話は半導体逼迫の話になり、ゲルシンガー氏は「今は故アンディ・グローブが言っていた戦略転換点にあると考えている」と述べ、半導体が社会の中でさまざまな産業で使われるようになり、すべてのビジネスがデジタルに依存する社会になっていると指摘した。そしてパンデミックが、半導体のサプライチェーンに大きな影響をおよぼし、地政学的にも偏った産業構成になっていたことなどから半導体逼迫が起きたと考えられるため、今後はより強力な半導体のサプライチェーンが必要になると説明した。

 すでにIntelは、アリゾナにある既存の工場の近くに「メガファブ」と呼ばれる巨大工場を建設することを明らかにしているほか、オハイオ州やドイツに新しい工場を建設することを発表している。これらはIntel自身の製品の製造だけでなく、他社製品を製造するファンダリー・ビジネス(IFS: Intel Foundry Services)にも供用される見通しだ。これまでにAmazonやQualcommとの契約が明らかになっており、数年後にはIntel製品だけでなく、競合の製品も製造される計画だ。

 また、顧客にはIntelが開発しているパッケージング技術(2.5D混載技術のEMIBや3D混載技術のFoverosなど)、さらにはこれまで門外不出だったIntelのIP(知的所有権)も提供される計画で、たとえば顧客がIntelのIPであるx86 CPUやGPUなどを自社製品に取り込みたいというニーズにも応えられるようになると明らかにしている。

 基調講演後に行なわれた会見の中でゲルシンガー氏は「半導体の逼迫の根本的な要因は十分な供給量がなかったことだ。だから、現在製造キャパシティを増やす取り組みを行なっている」と述べ、Intelが現在積極的に進めている製造拠点の拡張が半導体逼迫を根本的に解決する手段だという認識を明らかにした。

 また、昨年7月に米国上院を通過しながら下院での議論が続いている「CHIPS法」の議論がさらに進展することに期待感を表明した。そうした半導体メーカーの取り組みを支援する法案を可決することが、米国の半導体における競争力を維持する上で重要だと指摘した。