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理研、レーダ複数台活用で線状降水帯の予測精度が向上すると実証

2020年7月4日午前4時を初期時刻とした1時間先の雨粒量の水平分布

 理化学研究所計算科学研究センターデータ同化研究チーム 三好建正チームリーダー、前島康光特別研究員らによる共同研究チームは7日、フェーズドアレイ気象レーダを活用することで、線状降水帯がもたらす豪雨の予測精度を大きく改善できることを実証した。

 昨今、夏季を中心に線状降水帯による豪雨災害の脅威が増しており、被害の軽減に向けた予測技術や観測システムの開発が求められている。単独の積乱雲が急発達するゲリラ豪雨は、単体のフェーズドアレイ気象レーダで十分に捉えられる一方で、広範囲で多数の積乱雲が組織化する線状降水帯は1台のレーダでは捉え切れない。

 研究チームでは今回、2020年7月に熊本県で発生した線状降水帯について、多数のレーダを組み合わせた場合を想定。まず、スーパーコンピュータ「富岳」を活用し、九州の地方気象台および特別地域気象観測所の17地点にフェーズドアレイ気象レーダを展開した場合の観測データをシミュレーションした。この結果を正解データとして、レーダ反射強度と動径風の観測データを算出した。

 次に、線状降水帯を上手く再現しない別のシミュレーション実験(NO-DA)を実施。そのうえで、全17台のフェーズドアレイ気象レーダの観測データを想定した数値天気予想シミュレーション実験として、同レーダによる30秒ごとのデータを用いたもの(30SEC)と、通常の気象レーダを仮定した5分ごとのデータを用いたもの(5MIN)を行なった。

 その結果、NO-DA実験は正解データより南に100km以上ずれ、5MIN実験はも同様に豪雨の予測が行なえない一方で、30SEC実験では予測精度が大幅に向上した。これは、九州全土に展開したフェーズドアレイ気象レーダネットワークによって、線状降水帯の予測が大きく改善できたことを示しており、同レーダから得られる30秒ごとのデータは、ゲリラ豪雨だけでなく、線状降水帯の予測改善にも貢献できることが新たに分かった。

 研究チームでは、2030年までに気象庁が目指す線状降水帯の予測精度向上に向けた取り組みなど、新たな予測技術や観測システムの開発だけでなく、豪雨災害による被害軽減などにつながるとしている。