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ブラウザ版PhotoshopやIllustratorが登場。Web活用でコラボレーションを強力に支援

Web版Photoshop(ベータ)

 Adobeは、クリエイター向けイベント「Adobe MAX 2021」を10月27日から28日にかけて開催。同社の提供する「Creative Cloud」製品の新機能などについて発表した。

 2020年に引き続き、2021年も完全オンラインで全世界同時イベントとして実施。参加費は無料で、基調講演のほか、様々なクリエイターによるセッションも多数行なわれる。本稿では、先立って報道関係者向けに行なわれた説明会の内容をお届けする。

Webを活用してCreative Cloud全体でコラボレーションを支援

プロジェクトに関する情報を1カ所にまとめて管理できるCreative Cloudスペース
レイアウトやビジュアルなどを共有するCreative Cloudキャンバス

 同社では、地域やタイムゾーンなどをまたいだチーム制作など、テレワーク環境下における課題解決を支援するツールとして、新たに「Creative Cloud Web」を発表。アイデアから実際の制作まで、すべての段階においてハブとなるような場所として提供し、リアルタイムで効率的な共同作業を実現する。

 この中で、プロジェクトに関する素材や資料などを集中管理できる「Creative Cloudスペース」、およびレイアウトやビジュアル、デザインレビューなどを共有できる「Creative Cloudカンバス」を発表。まずはプライベートベータ(招待制ベータ)での提供となり、一般ユーザーには2022年の提供開始を見込んでいる。

 さらに、Web版のPhotoshop(ベータ)およびIllustrator(プライベートベータ)も発表。Webブラウザで動作するのが大きな特徴で、Creative Cloudメンバーでなくても共有されたデータの閲覧やレビュー、コメントなどができる。アプリの導入が必要なく、コラボレーションをよりスムーズに行なえるようになるとしている。加えて、Creative Cloudメンバーであれば、基本的な編集機能も利用できる。

Creative Cloud Webでは、Web版のPhotoshopやIllustratorも用意
WebブラウザでもPhotoshopが使えるように。スポット修復ブラシなど、基本的な編集も行なえる

Photoshopには風景写真の季節感などをプリセットから変えられる「風景ミキサー」が追加

風景ミキサー(元の写真)
風景ミキサー(プリセットを適用後)

 デスクトップ版Photoshopでは、ニューラルフィルターに新たに「風景ミキサー」を追加。プリセットで選択した写真の季節や空模様といった要素を、元の写真に対して適用できる。「スタイルの適用」などについても強化を図っている。

 また、「オブジェクト選択ツール」がAdobe Senseiを活用して進化。画像全体に含まれるオブジェクトを個別に自動で認識し、オブジェクトごとの選択やマスクの適用などをまとめて簡単に行なえる「オブジェクトファインダー」機能を追加した。iPad版向けには、Camera Rawへの対応やスマートオブジェクト機能の追加なども実施している。

 Lightroomでは、部分補正機能がマスクへと強化。Adobe Senseiを活用し、空の選択や被写体の選択が簡単に行なえるようになり、調整がしやすくなった。カラー範囲や輝度範囲での選択も行なえる。また、切り抜き機能には、黄金螺旋など、構図の参考となるオーバーレイを追加した。

画像内のオブジェクトを自動で認識するオブジェクトファインダー
Lightroomでは空の選択が可能に
被写体の選択は髪の毛や手に持っているものなどにも対応

iPad版Illustratorはリピート機能を強化。デスクトップ版は3D機能を改善

iPad版Illustratorに追加されたリピートの「ブレンド」

 Illustratorでは、iPad版のリピート機能に「ブレンド」のオプションを追加。2つのオブジェクトの中間を自動で生成し補完しながらリピートする。

 さらにデスクトップ版では、3D機能を刷新し、「3Dとマテリアル」として提供(テクニカルプレビュー)。表面加工から3軸での回転、Substanceマテリアルの適用、ライティングなどの調整を行ないやすくなった。また、HEIFなどを新たにサポートしたほか、Photoshopとの連携機能も強化しており、Illustratorからコピー&ペーストしたさいに、レイヤー構造を維持できるようになった。

 Frescoでは、Photoshop同様の非破壊な色調補正に対応。さらに立体的なイラスト作成に便利な遠近グリッドや、モーション/アニメーションの作成/設定も可能となった。

新しくなった3Dとマテリアル
Substanceマテリアルも適用できるように
Frescoではモーションやアニメーションの設定も可能に

Premier Proでは動画にあわせてBGMの尺をAIが自動調整

Adobe SenseiがクリップにあわせてBGMの長さを自然なかたちで調整してくれる

 Premiere Proでは、Adobe StockなどからBGMをシーケンスに取り込んださいに、Adobe Senseiがクリップの長さにあわせて自動でBGMの長さを調整してくれる「リミックス」機能(パブリックベータ)を追加。また、空のトラックや無効化されたクリップなどを削除し、シーケンス全体を簡単に整理できる「シーケンスの簡易化」機能や、Frame.ioを活用したコラボレーション機能の強化も図る。

 After Effectsでは、レンダリングを高速化するマルチフレームレンダリングに加え、スマートフォンのCreative Cloudアプリを通じたレンダリング完了時の通知機能などを用意。

 Character Animatorでは、Webカメラを利用したボディトラッキング機能にも新たに対応。全身でのアニメーション表現が行なえるようになった。

Frame.ioでは編集の指示などを手描きやテキストで共有。シーケンスとの同期機能も
Character Animatorではボディトラッキングにも対応
XDはLottieを新たにサポート

 そのほか、XDではビデオファイルや軽量でリッチなアニメーションを実現するLottieに対応。直接Behanceへプロトタイプを公開する機能なども追加した。

コンテンツクレデンシャル機能で制作者や編集履歴が確認可能に

コンテンツ認証イニシアチブの取り組み

 作品の盗用やフェイク情報を防ぐコンテンツ認証イニシアチブ(CAI)の取り組みについても紹介。同社の調査では、クリエイターの54%が作品を盗用されていると回答しており、さらに85%は作品がオリジナルであることを証明できるツールがあれば使いたいとの意向を示しているという。

 今回、すべてのCreative Cloudメンバー向けにコンテンツクレデンシャル機能(ベータ)の提供を開始。同機能に対応する画像のメタデータと編集履歴を暗号化して署名する技術をPhotoshopに実装するなど、誰が、何を使って、どのように、どんな素材を用いて編集したのかといった情報を記録できるようにする。また、閲覧者向けには同機能に対応し、編集履歴を見返せるWebサイトも用意している。

専用のWebサイトに画像を読み込ませると編集履歴がすべて分かる