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東北大とJST、マグネシウム電池実用化につながる硫黄系正極を開発

硫化物粉末の電気化学的酸化により、液体硫黄/硫化物複合材料を作製

 東北大学科学技術振興機構(JST)は26日、液体硫黄を用いたマグネシウム電池用正極複合材料の開発に成功したと発表した。

 電池の性能向上が求められる中で、高エネルギー密度が実現できるとされるマグネシウム電池の研究開発が進んでいる。その正極材料としては、酸化物系材料に加え、より高容量化が可能な硫黄系正極材料が検討されているが、煩雑な工程が必要な点や、硫黄や反応中間体が電解液中に溶け出す点など、課題が多かった。

 研究グループでは、硫黄系正極材料の新たな作製法を開発。金属硫化物から金属元素成分を電気化学的に脱離することで、液体硫黄とポーラス状の硫化物による複合体を生成する。前者は活物質、後者は電導性フレームとして機能する。

 実験では、二硫化鉄から流体硫黄/二硫化鉄複合材料を作製。150℃のイオン液体中で試験を行なったところ、生成した硫黄基準として、鉄の脱離時(初回充電に相当)に1,246mA/gの高電流密度で約900mAh/sと高容量な充放電が可能なことが分かった。

 硫黄系正極では一般的にサイクル特性に課題があるが、今回の正極材料に対する充放電試験では、50回以上のサイクルを安定して行なえた。二硫化コバルトや二硫化チタンでも同様の充放電特性が得られ、様々な硫化物に適用可能だとしている。

液体硫黄/二硫化鉄複合材料の150℃における充放電特性
液体硫黄/二硫化鉄複合材料の150℃におけるサイクル特性
非平衡状態からの放電では、平衡状態よりも高電位で放電反応が発生

 また、高速充電後にすぐに放電を始めると、従来よりも1Vほど高電位で放電が進行するといった反応も確認。充電で生成された液体硫黄が非平衡状態になっているものとみられ、放電電圧の引き上げに応用できる可能性がある。なお、1時間放置してから放電すると、こういった現象は発生しないという。

 本材料を利用した電池については、充放電中の電解液中への溶出や新規イオン液体系電解液の開発など、多くの課題があるものの、新たな選択肢になり得るとしている。研究グループでは、安全/安価で高性能な次世代電池の開発が期待されるとしている。