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電通大、MIMOの電波利用効率を7倍にする技術

セルフリーMIMOシステムの概念図

 国立大学法人 電気通信大学の先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センターの石橋教授らの研究グループは7日、5G以降の次世代モバイル通信におけるMIMOの周波数利用効率を最大で7倍に引き上げられるビームフォーミング設計法を発表し、特許申請したと発表した。

 5Gで採用された大規模MIMOでは、複数のアンテナ素子から、信号の振幅や位相を制御して、特定の送受信角度に向けて電力を集中させるビームフォーミング技術を利用して通信効率を向上させているが、実際には位置といった通信環境に依存するため、無線資源を十分に活かしきれなかった。

 そこで、基地局の機能を、信号を放射するアクセスポイント(AP)と、信号処理を行なう中央制御局(CPU)に分割して、お互いを光フロントホールで接続することで、信号の送受信点を空間中に分散させて配置するセルフリーMIMOシステムが注目されているが、ドローンや自動運転車、ロボットといった、大小やアンテナ数が異なるユーザー端末(UE)に対する検討は不十分であるという。

 セルフリーMIMOでは、CPUから全AP、各UEから送信された信号が異なる伝搬路を介して送り受信された際に、UE数と同数の、それぞれサイズが異る通信路行列として表現可能なのだが、この通信路行列はテンソル演算である「ML-GSVD」を用いて共通成分と固有成分に分解できる。今回発表された技術は、このML-GSVDを用いることで、通信路構造に基づき、各UEに対して直交した次元での通信を行なうビームフォーマー設計を実現した。

ML-GSVDを用いて共通成分と固有成分に分解

 また、各UEへの割当次元をお互いに排他的にすることで、ユーザー間の干渉を極限まで抑圧でき、次元割当と電力割当の規範を変更することで、周波数利用効率の最大化と、ユーザー間公平性の向上に対応可能になったとしている。

 加えて、今回開発したビームフォーミング設計に適した「OEML-GSVD」アルゴリズムを提案し、同技術と組み合わせることで、従来比最大7倍の周波数利用効率を実現したとしている。

OEML-GSVDアルゴリズム