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新発想のメモデバイス「Croqy」。簡単即座に同期してスマホとも連携可能

Shiftallが発表した「Croqy」

 株式会社Shiftallは、ネット接続型電子メモデバイス「Croqy(クロッキー)」を発表した。家族のコミュニケーションに新たな価値をもたらすIoT機器と位置づけており、付属のタッチペンで書いた文字や絵を、別のCroqyと同期したり、専用アプリを使ってスマートフォンに送信することが可能だ。

 「書くだけ、かんたん。ネットで送れる手書きメモが、Croqyの開発コンセプト」(Shiftallの岩佐琢磨CEO)とする。

 メーカー希望小売価格は1万9,999円で、スマホアプリやクウラドの基本利用料金は無料とする。今後想定されるプレミアムサービスには課金する可能性があるという。2020年度中(2021年1~3月)の発売を予定している。

Croqyとスマホを同期して利用できる

 Shiftallは、パナソニックを退職して、ハードウェア開発などを行なうCerevoを設立した岩佐琢磨氏が、2018年4月に新たに設立したパナソニックのグループ企業だ。

 B2C領域におけるIoT製品の設計、開発から、販売、サポートまでをトータルで行なっている。すでに、視界を閉ざして集中力を高めることができる「WEAR SPACE」をパナソニックのPanasonic FUTURE LIFE FACTORYと共同開発。100BANCHとは影をデザインする照明器具「RGB Light」を共同開発した経緯がある。

 Shiftallの岩佐琢磨CEOは、「既存製品とのカニバリゼーションが起きたとしても、既存製品の延長ではないものを、市場と対話をしながら、投入していく企業がShiftall」と位置づける。

Shiftallの岩佐琢磨CEO

 また、「新たな事業を鉱山に例えることがあるが、パナソニック本体は、金や銅が出ることがわかっている鉱山を、大きなショベルカーやダンプカーを使って、効率的に掘り出すのが役割。しかし、鉱山はいつか枯渇する。同様に、自動車に乗らなくなったり、スマートフォンを使わなくなる日がやってくるだろう。

 Shiftallの役割は、そうしたことを捉えて、新しい自動車、新しいスマートフォン、新しい家電を考えて、新たな鉱山を探すアプローチをしていく。鉱山を探しにいくときに使う道具は、大型のショベルカーやダンプカーではない。小さなチームで、機動的に新たな商品を生み出していくことになる」と語る。

 今回発表したCroqyは、表示部には電子ペーパーを採用。本体は、手のひらよりも少し大きい130×13.5×80mm(幅×奥行き×高さ)のサイズ。斜め置き用スタンドに設置して利用できるほか、重量は約160gであり、持ち運びにも便利だ。

 付属のペンを使って、手書きでメモをすると、ネットを通じて転送することができる。抵抗膜式タッチパネルを使用していることから、指で書くことも可能だ。

Croqyは軽量小型の筐体となっている
Croqyはメモを表示したままスタンバイする
手書きメモを行なっているところ
手書きメモを送信しているところ

 操作方法もシンプルにすることにこだわっており、一度設定すれば、手書きでメモをして、右上の送信ボタンを押すだけで済む。「3歳の子供でも書いて送れる」とする。

 Croqyを2台使えば、キッチンと子供部屋といったように、離れた部屋同士をつないで、メモで送受信できたリ、自宅と離れた家族の家に設置すれば、祖父母と孫のやりとりにも使える。

 また、外出先では、スマホアプリで手書きメモを受信。外出先からも、スマートフォンを使って、伝え忘れたことを、手書きメモでCroqyに送ることができる。

 「薬飲んでね」、「お弁当を忘れないようにね」といった手書き文字でのメモのやりとりが、家族のコミュニケーションを円滑にするというわけだ。

シンプルな画面となっており直感的に利用できる
薄い筐体となっているのも特徴だ

 省電力駆動する電子ペーパーを使用しているため、スタンバイ時には、つねにメモが表示されているのも特徴だ。スマートフォンを起動する回数が少ないシニア層や、スマートフォンを持たない子供でもメモに気がつくことができる。

 「若年層もスマホを開く前に気がつくことができる。朝起きたばかりで、まだスマホを手に持っていない段階でもメモを読むことができる。まさに紙のメモと同じ使い方ができる」とする。

スマホのアプリでも手書きメモが利用できる

 商品開発においては、消費電力に配慮。30分に1回程度の更新を行なうといったように頻度を設定することで長期間のバッテリ駆動を実現。1日10分間の書き込みでも、一度の充電で約2カ月間利用できる。

 「10分更新でも1カ月は利用できる。毎日充電するようなものでは、食卓に置いても文鎮と同じになる。Croqyであれば、1年に6回充電するだけで済む」などとした。

 さらにデータは、すべてクラウドに蓄積。いつでも過去のメモを呼び出すことができる。「3日前に頼まれた買い物のメモも確認できるし、3年前に孫が書いてくれたイラストも呼び出せる。また、Croqyをもう1台追加したり、仮に壊れてしまった場合にもデータの共有や保存が容易である」とした。

タブレットにデータを転送した様子

 複数のタイムラインを管理できるようになっており、企業などでグループを分けて、複数のCroqyを組み合わせて利用するといったことも可能になるという。

 「家庭での利用を想定して外装には天然木材を使ったデザインとしているが、企業などでも需要があればビジネス利用を想定した商品企画も考えたい。また、手書きの需要は日本だけではない。ポストイットも海外で生まれた商品である。グローバルでもビジネスチャンスはある」とした。

 Croqyで、Shiftallが着目したのは、紙のメモの課題解決である。
 「手書きでもらったメモを見て、ほっこりとする場合もある。だが、欠点もある。なくしてしまうこと、書き置きしたかったのに外出してしまったというように書き忘れること、メモを書いてくれた人に返事をしたいがそれができないことなどである」とする。

 もちろん、LINEなどのメッセンジャーアプリを使えば、解決できる部分も多いだろう。しかし、こんな指摘もする。

 「アプリを開かないと意外と見落とすことが多いこと、情報が流れていってしまうといった課題に加えて、スマホを与えられない年齢の子供や、入力などが面倒に感じるシニア層もいる」とする。

 そして、「温かみがある紙のメモならでの良さと、デジタルならではのメッセンジャーの良さの良いところ取りをした製品を考えた。手書きのメモにはいいところがたくさんあるというのが発想の原点」とする。

 手書きならではの味と、ちょっとしたイラストや図版が添えられるのが紙のメモの利点。この良さを活かし、新たなコミュニケーション需要を創出したいという。