ニュース
Intel、デスクトップ向け第11世代Core「Rocket Lake-S」の詳細を発表
~CPUはIPCを大幅向上させたCypress Cove、GPUにXe Graphicsを採用
2020年10月30日 00:00
米Intelは29日(現地時間)、デスクトップパソコン向け次世代CPU「第11世代Coreプロセッサ Sシリーズ」(開発コードネーム : Rocket Lake-S)の詳細を公開した。
同社は10月7日にブログで、Rocket Lake-Sの存在を公表したが、その時点では新しいCPUが採用されることと、PCI Express 4.0に対応することが知らされただけだった。
CPUはIPCが2桁%向上する「Cypress Cove」
今回はそれに加えて、第11世代Core Sシリーズの詳細が明らかになっている。現行の第10世代Core Sシリーズ(Comet Lake-S)との違いをまとめると以下の表のようになる。
第11世代Core Sシリーズ | 第10世代Core Sシリーズ | |
---|---|---|
製造プロセスルール | 未公表(14nm?) | 14nm |
開発コードネーム | Rocket Lake-S | Comet Lake-S |
CPUマイクロアーキテクチャ | Cypress Cove | Skylake/Kaby Lakeマイクロアーキテクチャ |
最大コア/スレッド数 | 8コア/16スレッド | 10コア/20スレッド |
Intel DL Boost(VNNI) | 対応 | 未対応 |
GPUブランド | Intel UHD Graphics(EU未公表、32?) | Intel UHD Graphics 630(EU 24) |
GPU世代 | Xe Graphics | Gen.9 |
メモリ(最大) | DDR4-3200 | DDR4-2933 |
メディアエンコード | 4K60 12bit 4:4:4 HEVC,VP9,SCC/4K60 10bit 4:2:0 AV1 | HEVC(10bit)/VP9対応(8bit) |
ディスプレイ出力 | 3ポート(4K60×3、5K60×2)、DP1.4a/HDMI 2.0b/HBR3 | 3ポート、DP1.2/HDMI1.4a |
PCI Express(CPU側) | Gen4(16ポート+4ポート) | Gen3(16ポート) |
Intelは第11世代Core Sシリーズの製造プロセスルールに関しては何も語っていない。ただ、OEMメーカーなどの情報によれば、14nmの最新版(14nm++++などと呼ばれている)で製造されるとのこと。このトランジスタは10nm品に性能がかぎりなく近づいている14nmであるとされている。そのため、1世代前のプロセスルールとは言え、性能が上がっている可能性が高い。
この最新版の14nmで製造されるCPUは、第10世代Core(Ice Lake)以降の10nm製品で採用されているSunny CoveなどのCove系のCPUデザインとなる。
Coveの名称がついたCPUは、10nmで製造されている製品で利用されているが、以前の記事「Zen 3とRocket LakeでさらにヒートアップするAMD vs Intel」でも説明したとおり、Intelは従来は一体として開発してきたCPUと製造プロセスルールのデザインを分離しており、このCove系のCPUを14nmや、それこそ外部のファウンドリなどの別の製造プロセスルールにも落とし込むことが可能になっている。そのため、Cove系のCPUが14nmで製造されるRocket Lake-Sにも実装可能になったのだ。
今回の第11世代Core Sシリーズに搭載されているのは、そのIce Lakeに搭載されていたSunny CoveをベースにしたCypress Coveとなる。
Cypress Coveは、第10世代Core Sシリーズに搭載されているSkylake/Kaby LakeマイクロアーキテクチャのCPUと比較して、2桁%のIPC(Instruction Per Cycle : クロックあたりの命令実行数)の向上が実現されるという。
デスクトップパソコンのCPUコアのマイクロアーキテクチャは、2015年に発売された第6世代Core Sシリーズ(Skylake-S)からじつに5年以上更新されず、CPUコア数だけを増やすという拡張が行なわれてきた。しかし、このCypress Coveの導入で、デスクトップパソコンのCPUも最新のアーキテクチャに更新されることになる。
ただし、第10世代Core Sシリーズで最大で10コアとなっているCPUコア数は、第11世代Core Sでは最大8コアになる。IPCが向上するので、CPUが8コアでもトータルの性能では10コアの第10世代を上回ることが可能という判断だろう。
また、新しい命令セットのIntel DL Boost(VNNI)に対応しており、ディープラーニングの推論でFP32をINT8に置き換えて演算可能になり、ディープラーニングの推論を利用するアプリケーションで大きな性能向上を実現できる。
なお、メモリはDDR4で変わらないが、第10世代Core SシリーズがDDR4-2933までの対応だったのに対して、第11世代Core SシリーズはDDR4-3200までと強化されている。
GPUもXe Graphicsベースに強化。チップセットは「Intel 500シリーズ」に
第11世代Core Sシリーズのもう1つの特徴は内蔵GPUで、こちらも5年以上ぶりに更新されている。
というのも、現行の第10世代Core Sシリーズの内蔵GPUは、2015年に発売された第6世代のSkylake-Sで初搭載されたGen 9 GPUが5世代にわたり採用されてきた。
今回それがTiger Lakeに搭載されている最新の内蔵GPU(Xe-LP、開発コードネーム : Xe Graphics)に置き換えられる。ただし、フル機能(96基のEU)のXe-LPではなく、ブランドは「Intel UHD Graphics」のままになる。あくまで筆者の予想だが、そのためTiger Lakeの下位SKUのように、GT1と呼ばれる32基のEUに制約されたバージョンとなる可能性が高い。
ただ、ほとんどの場合、デスクトップパソコンはディスクリートGPUと組み合わせて利用するので、このことは大きな問題ではないだろう。とは言え、GPUアーキテクチャの改良によりGT1でもGen 9のGT2の24EUに比べて高い性能を発揮することが予想され、Intelは50%性能が向上する場合があると説明している。
GPUが最新のXeになったことで、メディアエンコーダやディスプレイ出力も強化されている。第10世代Core SシリーズのハードウェアエンコーダではHEVC(10bit)、VP9(8bit)に対応していたが、第11世代Core SシリーズではHEVCもVP9も12bit/4:4:4まで拡張され、さらに10bit/4:2:0のAV1に新しく対応している。
ディスプレイ出力は従来と同じ3パイプまでだが、GPU内蔵のトランスミッタがDisplay Port 1.4a、HDMI 2.0bに新たに対応しており、HDMI出力でも標準で4K60pをサポートする。第10世代Core SシリーズではHDMI 1.4までだったため、4K30pが限界だった。
すでに述べたとおり、第11世代Core Sシリーズは、CPU側のPCI Express 4.0に対応している。CPU側には、ストレージ用の4レーンと、GPU用の16レーンという合計で20レーンが用意されている。これにより、PCI Express 4.0に対応したNVMe SSDとディスクリートGPUの両方の性能をフルに発揮させることが可能になる。
第11世代Core Sシリーズに対応するチップセットは「Intel 500シリーズ」になり、USB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)に対応したUSBコントローラなどが統合されていることが今回明らかにされた。LPC、eMMC、SDXCのインターフェイスなどのレガシーインターフェイスは取り除かれる。また、どんな機能かは現時点では不明だが、新しいオーバークロック機能が実装される予定だ。
第11世代Core Sシリーズは、2021年の第1四半期に正式発表され、市場投入される計画だ。