ニュース

新型コロナ、非感染者よりも感染者がマスクをつけたほうが感染拡大防止に効果的

BSL3施設内に設置したウイルス噴霧チャンバー

 東京大学医科学研究所 感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するマスクの防御効果を検証した結果を発表した。

 実験は、バイオセーフティーレベル(BSL)3施設内で行なわれ、SARS-CoV-2を噴射できるチャンバーを開発。そのなかに人工呼吸器をつないだマネキンを設置して検証した。

 放出側はヒトの咳と同等の速度で口元からSARS-CoV-2を飛沫やエアロゾルとして放出できる装置、吸入側はゼラチン膜でできたウイルスを捕集する装置を呼吸経路に設置。マスクを通過するウイルス量を調べた。

 この結果、吸い込む側にマスクを装着した場合、マスクなしと比較して、布マスクでは60~80%、N95マスクを密着させた場合では10~20%まで抑えられたという。ただ、N95マスクでは密着させなかった場合、効果は低減した。

距離によるウイルス吸入量の違い
吸入側がマスクをつけた場合の効果。N95マスクは防御効果が高いが、正しくフィットしないと効果が低減する

 その一方でウイルス吐出側にマスクを装着させた場合、ウイルスの吸込量が大きく低下。よって、マスクにはウイルスの吸い込みを抑える働きよりも、対面するヒトへの曝露量を減らす効果が高いことを示唆した。両方にマスク装着した場合、相乗的にウイルスの吸込量が減少できるという。

吐出側がマスクをつけた場合、吸入側へ曝露量を大幅に低減できる

 ただ、この実験では定量性を確保するために高濃度ウイルスを噴霧して解析を行なったものであり、実際の感染者の呼気に含まれるウイルス量は不明である。そのため噴霧するウイルス量を段階的に減らした実験を行なったところ、いずれのマスクも通過した感染性ウイルスは検出限界未満だった。

濃度を下げた場合、いずれのマスクも通過した感染性ウイルスは検出限界未満だった

 ただ、ウイルスの遺伝子はどのマスク着用時においても検出されたため、実際にウイルスがマスクを通過して感染を引き起こすかどうかについては、今後さらなる解析が必要だとしている。