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中古パーツも活用!フォートナイトもVALORANTも遊べちゃう3万円自作プラン

 予算3万円でPCの自作は可能なのか? しかも3万円台ではなく、3万円以内という条件で。ミドルレンジのCPUを買うだけで大半が吹き飛ぶ厳しい予算だが、やりようはある。

 とはいえ、すべてのパーツを最安クラスにすればよいという話ではない。CPUはCeleronやAthlonなど2コアの低価格モデル、SSDも120GBなど小容量にすると、Webブラウザやビジネスソフト程度のアプリならなんとかこなせるが、そこが限界。やっぱりちょっとはゲームを遊べる性能を持ち、将来的にCPUをアップグレードできたり、ビデオカードを追加できたりと自作ならではの自由度は残しておきたいもの。そんなよくばりな要望でも、中古を活用したり、コスパの高いパーツをうまく組み合わせれば達成は不可能ではない。

 もちろん、パーツは基本的にコストを最重視して選択していくことになるが、組み合わせには注意点がある。CPUの世代によっては、CPUソケットが共通でも動作しないマザーボードがあるためだ。安さだけではなく、組み合わせるパーツも重要だ。その辺りも含めて、まずはパーツ選びのポイントを紹介、そして性能チェックへと移っていこう。この予算でも、VALORANTなど軽めの人気ゲームを十分遊べるPCに仕上げられるのだ。(TEXT:芹澤正芳)

【CPU】中古の活用でワンランク上へ

 PCの心臓部と言えるCPUには予算中最大の1万円を割り振りたい。ビデオカードを別途購入する余裕はないだけに、内蔵GPUの性能が高いもの、ある程度の性能を確保するために4コア以上、という条件になるとおのずとRyzen 3000Gシリーズに絞られる。

 しかし、最安値のRyzen 3 3200Gでも、実売価格は1万3,000円前後で予算オーバー。Athlon 3000Gなら予算内だが、CPU性能も内蔵GPU性能もガクンと下がる。そこで中古の出番だ。CPUは中古を取り扱っているショップも多く、状態のよいものを1万円前後で購入できる。ただ、CPUクーラーが付属しているかは必ず確認しておこう。

Ryzen3200G
4コア4スレッドのTDP 65WのCPU。3000番台だが、アーキテクチャは第3世代の「Zen 2」ではなく第2世代の「Zen+」。GPUコアとしてRadeon Vega 8を備え、CPU内蔵のGPUとしては高い性能を実現している
Athlon 3000G
2コア4スレッドで、内蔵GPUはコア数の少ないRadeon Vega 3とRyzen 3 3200Gよりワンランク下がる。ただ、TDPは35Wと低いので、低消費電力、低発熱PCの自作には向いている
主なスペック
製品名コア/スレッド定格/最大内蔵GPU実売価格中古価格
Ryzen 3 3200G4/43.6GHz/4GHzRadeon Vega 813,000円前後10,000円前後
Athlon 3000G2/43.5GHz/-Radeon Vega 38,000円前後6,000円前後

【検証環境】CPU:AMD Ryzen 3 3200G(4コア4スレッド)、Athlon 3000G(2コア4スレッド)、マザーボード:ASRock A320M-HDV R4.0(AMD A320)、メモリ:CFD販売 CFD Panram W4U2666PS-4GC19(PC4-21300 DDR4 SDRAM 4GB×2)、グラフィックス機能:各CPU内蔵、SSD:Micron Crucial BX500 CT240BX500SSD1JP(Serial ATA 3.0、240GB)、OS:Windows 10 Pro 64bit版

【マザーボード】3200GならA320で決まり

 CPUに1万円も予算を投入すると、そのほかのバランスを考え、マザーボードに割り当て可能なのは6,000円前後。Ryzen対応のマザーボードは中古でも価格がそれほど安くないので、買うなら新品を選びたいところ。そして、Ryzen 3 3200Gに対応となると、A320チップセット搭載マザーに絞られる。

 A320の新品で6,000円以内となれば、ASRockの「A320M-HDV R4.0」で決まりだ。一つ注意したいのは、UEFIのバージョン。A320M-HDV R4.0がRyzen 3 3200Gに対応するのは、「P2.30」以降。ASRockによると現在出荷されているものは対応済みとのことだが、購入時には確認しておきたい。UEFIがRyzen 3 3200Gに対応していなければ、そもそも起動できないためだ。

ASRock A320M-HDV R4.0
A320チップセット搭載マザーは低価格だが、第3世代Ryzenにも対応している。将来的に上位CPUにもアップグレードが可能なのは心強い
B550やA520は3200G非対応
AMD最新のB550とA520チップセット。比較的価格は安いが、Ryzen 3 3200Gは動作しない。今回のプランには使えないため、選択肢から除外している

【メモリ】安さ重視ならDDR4-2666

 全体の予算配分から考えると、メモリに割り振れるのは4,000円が限界なので、容量は必然的に4GBが2枚の8GB構成になる。速度もDDR4-2666でないと予算内に収めるのは厳しい。もちろん、予算に余裕があるならメモリは高クロックのものを選びたい。CPUの内蔵GPUは、ビデオメモリにメインメモリの一部を使用するため、メモリが高速なほどGPU性能も伸びるからだ。実際にゲーム系のベンチマークでもRyzen 3 3200Gにおいて、DDR4-2666とDDR4-3200では5%から10%程度の性能差が出る。

 ちなみに、対応するメモリのクロックはマザーボードによって大きく異なる。今回選んだASRockのA320M-HDV R4.0がサポートするのは、DDR4-3200まで。ハイエンドマザーでは、もっと上のクロックまでサポートされていることも多い。マザーのWebサイトで対応メモリを確認しておくとよいだろう。

メモリの最安値クラスの価格
規格容量実売価格
DDR4-26664GB×24,000円前後
8GB×26,000円前後
DDR4-32004GB×25,000円前後
8GB×27,000円前後

【検証環境】CPU:AMD Ryzen 3 3200G(4コア4スレッド)、マザーボード:ASRock A320M-HDV R4.0(AMD A320)、メモリ:センチュリーマイクロ CD8G-D4U3200H(PC4-25600 SDRAM 8GB ※動作クロックを変更して使用)×2、グラフィックス機能:CPU内蔵 、SSD:Micron Crucial BX500 CT240BX500SSD1JP(Serial ATA 3.0、240GB)、OS:Windows 10 Pro 64bit版

【SSD】GB単価からSerial ATAの240GBが狙い目

 ストレージの予算も4,000円を上限とした。最安値ならSerial ATA接続の120GBクラスだが、最近のゲームは容量が大きいので、すぐ容量不足になる上にGB単価が割高。240GBクラスならGB単価が下がり、予算内ですむので今回のプランではベターだ。

Crucial BX500シリーズのGB単価
容量実売価格GB単価
480GB6,000円前後12.5円
240GB4,000円前後16.7円
120GB3,000円前後25.0円
M.2 SSDの追加もOK
今回のマザーボードにはM.2スロットもあるので、NVMe SSDも搭載できるが予算的に厳しい。しかし将来的に増設できる余裕があるのは心強い

【PCケース】電源付きで安くする

電源付きのPCケースなら5,000円台も存在する。ただし、多くはスリム型。大型のビデオカードを増設できないのは知っておきたい

 残すはPCケースと電源だが、3万円以内を目指すと予算の残りは6,000円。それぞれ用意するのは厳しいので、電源付きのPCケースを狙う。スリム型なら6,000円を切るものも。将来ビデオカードを増設したいなら、300W以上の電源を備えているものを選ぼう。

コイツが3万円で組んだ使えるマシン!

 最終的に完成したのがこのPC。内部の狭いスリム型だが、5インチと2.5インチシャドーベイは取り外しが可能なので、ケーブルの取り回しがしやすく、意外とパーツの組み込みはラクだった。電源が最初からPCケースに取り付けられているのも組み立ての負担を減らしてくれる。

 5インチベイや3.5インチシャドーも備わっているので、光学ドライブや3.5インチのHDDを追加でき、Low Profileサイズのビデオカードなら搭載可能と拡張性もある程度確保されている。ケースファンは備わっていないが、天板と底面に8cm角ファンを1基ずつ増設が可能だ。安定性を重視するなら、追加するのもアリだろう。

 予算3万円の低価格PCだが、思いのほか“普通のPC”に仕上がった。自作の入門機としては悪くないのではないだろうか。

パーツ一覧
カテゴリーメーカー名・製品名実売価格
CPUAMD Ryzen 3 3200G(4コア4スレッド)※中古10,000円前後
マザーボードASRock A320M-HDV R4.0(AMD A320)6,000円前後
メモリCFD販売 CFD Panram W4U2666PS-4GC19(PC4-21300 DDR4 SDRAM 4GB×2)4,000円前後
グラフィックス機能CPU内蔵
ストレージMicron Crucial BX500 CT240BX500SSD1JP(Serial ATA 3.0、240GB)4,000円前後
PCケース恵安 KX-M01(microATX)6,000円前後
電源ユニットケース付属(300W)
合計30,000円前後
共通ベンチマーク結果

【検証環境】アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 5.5.4のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値

3万円PCの実力チェック

 ここからは、ベンチマークソフトや実ゲームを使って実際の性能を見ていく。CPUのRyzen 3 3200Gは4コア4スレッド。p.51で紹介しているCINEBENCH R20のスコアから、Haswell世代のCore i5クラスの性能を持っているのが分かる。Webサイトや動画を見たりと一般的な使い方であれば十分快適だ。さらに、内蔵GPUはRadeon Vega 8を搭載しているので、ゲームもそれなりに遊べることが期待できる。

 まずは、軽めのゲームから。基本無料で遊べる人気FPSの「VALORANT」はフルHDなら最高画質でも平均60fpsオーバー。快適にプレイできる。同じく人気FPSのレインボーシックス シージは画質最高でもプレイできるレベル。画質を中設定にまで落とせば、平均60fpsをわずかに割るレベル。軽めのゲームなら、このPCでも存分に遊べる。

 次はちょっと重めのゲーム。フォートナイトは画質を中設定まで落とせば約60fpsまで平均を伸ばせる。Apex LegendsはフルHDだと各種画質設定を最低まで落としても平均37fps。プレイできなくはないが、カクつくシーンも見られる。プレイするなら、解像度を落とす必要があるだろう。

 注意したいのは今回SSDは240GBしかないこと。複数のゲームを同時進行でプレイしたいなら、ストレージは増設したい。

Radeon専用アプリが使える
Ryzen 3 3200Gは内蔵GPUがRadeon Vega 8なので、Radeon専用ドライバ「Radeon Software Adrenalin 2020 Edition」が使用できる。プレイしたゲームの平均fpsを記録したりゲームの配信ができたり、なにかと便利なソフトだ
ストレージの速度も見る
今回はCrucial BX500の240GBを採用している。CrystalDiskMarkで最大速度を見たが、Serial ATA接続のSSDとしては十分高速だ

【検証環境】VALORANT:射撃場で一定のコースを移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、レインボーシックス シージ:内蔵ベンチマーク機能で測定、フォートナイト:ソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、Apex Legends:トレーニングで一定のコースを移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

DOS/V POWER REPORT 2020年秋号では「大満足自作プラン」と題し、3万円・5万円・7万円・10万円の予算で作れる自作PCを紹介した特集を掲載している。2020年秋号ではこのほか、巻頭企画「価格据え置き 性能2倍!? GeForce RTX 30シリーズ」、第2特集「徹底ベンチで見えた! 最新SSD事情」などを掲載。さらに声優の小岩井ことりさんの32コアモンスターPC自作にも密着取材を敢行! PC自作初心者から上級者までマストバイの1冊です。