イベントレポート

HPが新発表した軽量モバイルノート「EliteBook Ultra G1i」ってどんな製品?

HP EliteBook Ultra G1i 14-inch

 HPはCESに合わせて複数のノートPCを発表した。発表された製品に関しては別記事に詳しいが、本レポートでは現地でHPに取材して分かった新製品の注目製品に関して紹介していきたい。

 今回発表された中でも要注目の製品は「HP EliteBook Ultra G1i 14-inch」というモバイルノートと、「OMEN 16 Gaming Laptop」という薄型のゲーミングノートPCだ。

2024年には発表されなかったDragonflyの後継製品、HP EliteBook Ultra G1iとして発表される

CPUはCore Ultra 200Vで、今回のCESで発表されたvPro版にも対応している

 HP EliteBook Ultra G1iは、一般法人向けノートPCのフラグシップ製品だ。従来HPの一般法人向けのフラグシップノートPCはDragonflyブランドで、その最新製品は第13世代Core(Raptor Lake)を搭載した第4世代。2024年のCore Ultraシリーズ1搭載モデルはリリースされておらず、その後継がどうなるのかは多くのユーザーにとって注目になっていた。今回のHP EliteBook Ultra G1iがその答えになる。

 HP EliteBook Ultra G1iがDragonflyではなく「EliteBook Ultra」という製品名になっているのは、HPのPC向けのブランドの再編という昨年(2024年)の決定が大きく影響している。HP 上級副社長 兼 コマーシャルシステムズ・ディスプレイソリューションズ 事業本部長 グアイヨント・サンマルティン氏は「我々は昨年に一般消費者向けをOmniBookに、一般法人向けをEliteBookにするというブランドの簡素化を決定し、それを実行してきた。Dragonflyもその一環としてEliteBook Ultraに改称され、そのDNAを引き継いでいる製品になっている」と説明した。

昨年の5月に発表された、HPの新しいブランドスキーム(出典:HP)

 昨年5月20日にMicrosoftのCopilot+ PCの発表会において、HPはノートPC向けブランドを整理することを発表。一般消費者向けはOmniBookにU(Ultra)、X、8、6、4、2のサブブランドを付加し、一般法人向けはU(Ultra)、X、7、5、3のサブブランドを付加する計画であることが明らかにされていた。

 今回発表された「HP EliteBook Ultra G1i」は、そこにUltraの名称が入っていることからも分かるように、一般法人向けノートPCのフラグシップ製品であることを意味し、かつ「G1」(Generation 1、第1世代)で「i」(Intel)搭載している製品ということをブランド名は示していることになる。

Dragonflyの意匠を継承。900万画素のカメラも要注目

キーボードと大型のタッチパッドも、Dragonflyのそれを継承している

 そうしたHP EliteBook Ultra G1iだが、「Ultra」というブランド名を冠していることもあり、その完成度もフラグシップにふさわしいものとなっている。

 筐体はリサイクル由来の素材が90%となるマグネシウムから構成されており、同様にキーキャップのプラスチックも50%がリサイクルされた素材になっている。筐体色もDragonflyで人気だった濃紺のカラーが採用されている。

 筐体のサイズは313.7×217.25×9.1~12.1mmで、重量は1.195kg(ノンタッチモデル)ないしは1.215kg(タッチモデル)となっている。Dragonfly G4の297.4×220.4×16.4mm/1kgに比べるとやや大きく、重くなっているが、それはディスプレイが13.5型から14型に大型化されたこと、バッテリ容量が45Whから66Whへと増えているため。また、プロセッサがCore Ultra 200Vに強化されたことでアクティブ時の消費電力が減り、長時間バッテリ駆動時間が期待できる。

 プロセッサはCore Ultra 200V、メモリは最大32GB、最大2TBのストレージという構成になっており、MicrosoftのCopilot+ PCに対応している。14型3K(2,880×1,800ドット)のOLEDパネルを搭載しており、画面占有率(STBR:Screen To Body Ratio)は90.4%と比較的高めになっている。

カメラの動作をソフトウェア的に拡張する「Poly Camera Pro」と900万画素のWebカメラで高画質にビデオ会議を行なうことが可能に

 カメラも特徴の1つで、900万画素という、4K解像度を超える解像度のカメラが採用されている。もちろん、TeamsやZoomのようなツールはフルHD程度までしか画像の解像度をサポートしていないため、実際に利用する場合にはリサイズされて使われることになるが、圧倒的にクリアな映像になるのは言うまでもなく、きれいなカメラがほしいというニーズを持つユーザーには注目だ。さらにHP EliteBook Ultra G1iでは、HPの子会社Polyのノウハウを採用したWebカメラの画質向上ツール「Poly Camera Pro」を活用して、NPUを利用した各種エフェクトや自動フレーミングなどの機能を利用できる。

指紋認証は電源ボタンと共通
タッチパッドはかなり大型になっている
本体の右側ポート
左側のUSB Type-A端子は、カバーが開く形状になっている

 キーボードや大型のタッチパッドという特徴も、従来のDragonflyの特徴を引き継いでいるほか、本体をUSB Type-Aポートよりも薄型にするために採用されていた、開くカバーも引き続き採用されているのもフラグシップ製品の特徴と言える。HPの法人向け製品の特徴と言える「HP Wolf Security for Business」にも対応しており、BIOS改ざん防止などのOS起動前のセキュリティも担保されている。なお、搭載されているセキュリティ用のマイクロコントローラになるESC(Endpoint Security Controller)は第5世代で、2024年向けモデルのEliteBookに採用されている製品と同等の世代になる。

 HP EliteBook Ultra G1iは今月の末から米国で販売される計画で、米国での予想価格は2,019ドルからになると明らかにされている。

【表1】HP EliteBook Ultra G1iのスペック(HPの資料より筆者作成)
HP EliteBook Ultra G1i
CPUCore Ultra 200V(vPro対応)
メモリ最大32GB
ストレージ最大2TB
ディスプレイ14型3K(2,880×1,800ドット/タッチ or ノンタッチ)OLED
カメラ900万画素(IR対応)
生体認証指紋認証/顔認証
Wi-Fi/BTモジュールWi-Fi 7/Bluetooth 5.4
バッテリ容量64Wh
サイズ313.7×217.25×9.10~12.1mm
重量1.195kg(ノンタッチ)/1.215kg(タッチ)
OSWindows 11

ユニークな放熱機構により冷却効率を高めた、新OMEN 16 Gaming Laptop

OMEN 16 Gaming Laptop

 もう1つのHPの注目製品は「OMEN 16 Gaming Laptop」で、薄型ゲーミングノートPCのフラグシップ向け製品だ。大きな強化点は3つある。

OMEN 16 Gaming Laptopのメインボード、中央右の緑色のチップがCPU(いわゆる第14世代Core HX)、その左に見える基板がGeForce RTX 5080 Laptopが搭載される場所(この基板にはまだ実装されていない)

 1つ目はプロセッサの強化だ。従来製品は、Core 9-14900HXというRaptor LakeベースのHXプロセッサを採用していたが、今回の2025年モデルではIntelのCore Ultra 200HないしはCore HX(第14世代)、AMDのRyzen AI 300シリーズないしはRyzen 8000HXシリーズから選択できるようになり、選択の幅が広がっている。

 2つ目はディスプレイの解像度が少々引き上げられ、16:9のアスペクト比から16:10のアスペクト比のパネルに変更されている。従来モデルではWQHD(2,560×1,440ドット)だったのが、今回のモデルでは16型WQXGA(2,560×1,600ドット)に引き上げられている。

GeForce RTX 5080 Laptop(24GB、GDDR7)を搭載

 そして3つ目はdGPUの強化だ。今回のモデルでは最大でGeForce RTX 50 Laptopシリーズ対応に引き上げられており、GeForce RTX 5080 Laptop(24GB、GDDR7)を搭載している。

バイパーチャンバーになった冷却機構

 こプロセッサやdGPUのアップグレードに対応するため、熱設計にも見直しが入っている。具体的には、ヒートシンクがベイパーチャンバーに変更されている。また、デュアルファンにも新しいブレード構造が採用されており、従来モデルに比べて1.49倍のエアフローを実現。さらにユニークな構造として、ファンが通常の方向と自動的に逆回転する機構が入っており、ファンに蓄積しやすいゴミを外部に排出することが可能になっているという。それにより、ファンにゴミがたまって冷却効率が落ちるということを防ぐことができる。

左側面
右側面
背面
ゲーミングヘッドセットやマウスなどを専用2.4GHzで接続するドングルが内蔵されており、箱を開けた状態で、こうしたバンドルされている周辺機器をそのまま活用できる

 OMEN 16 Gaming Laptopは、米国では3月から販売開始される予定で、価格は1,599.99ドルからと予定されている。

OMEN 16 Gaming Laptop
【表2】OMEN 16 Gaming Laptopのスペック(HPの資料より筆者作成)
OMEN 16 Laptop
CPURyzen AI 300シリーズ/Ryzen 8000HXシリーズ/Core Ultra 200H/Core HX(第14世代)
dGPUGeForce RTX 50 Laptop/GeForce RTX 4050(6GB)
メモリ最大32GB
ストレージ最大1TB
ディスプレイ16型WQXGA(2,560×1,600ドット/240Hz/IPS)/WUXGA(1,920×1,200ドット/165Hz/IPS)/WUXGA(1,920×1,200ドット/144Hz/IPS)
カメラフルHD(IR)
生体認証顔認証
Wi-Fi/BTモジュールWi-Fi 6E/Bluetooth 5.3、Wi-Fi 6/Bluetooth 5.4
バッテリ容量83Wh/70Wh
サイズ357.5×269×23.75~29.6mm
重量2.458kg
OSWindows 11