ニュース

ロボットやIoTを活用したスマートビル「東京ポートシティ竹芝」が9月14日開業

 東急不動産株式会社と鹿島建設株式会社が共同で開発中の「東京ポートシティ竹芝」が9月14日に開業する。

 「東京ポートシティ竹芝」はオフィスタワー・レジデンスタワーからなり、敷地面積は約15,591平方m、延べ床面積は約201,410平方mの大型開発だ。浜松町駅方面から首都高の上を歩行者用デッキで新たにつなぎ、ソフトバンクグループ株式会社とソフトバンク株式会社の本社が2020年度中に移転する予定のオフィスタワー全館には5Gを整備した。

 ビルは東急不動産とソフトバンクによりAIやIoTセンサーを活用してビル内外の人流データや環境データを収集・解析し、環境整備と効率的なビル管理、テナントへのマーケティング支援等に役立てるスマートビルのモデルケースとして構築される。

 具体的にはエレベーターホールの混み具合やトイレ空き情報がわかるようになり、デジタルサイネージには飲食店舗のリアルタイム空席情報が表示され、施設利用の傾向情報を分析して売上予測や在庫管理最適化をサポートする。レジデンスでも専用アプリで電気代やデジタルキーなどの一括管理が可能。

店舗やトイレの空き状況がリアルタイムにわかる
テラスなど屋外の状況もサイネージに表示される
ゲートには顔認証システム
各店舗のカメラで入退場数をカウント
ゴミ箱の量も距離センサーを使って実測して通知、管理する
ビルマネジメント用のアプリ画面
テナント向けアプリ画面。開催イベントや来場者からニーズを予測
竹芝エリアの模型。中央が旧芝離宮恩賜庭園で、その右横(東側)が東京ポートシティ竹芝オフィスタワー

 ビルだけではなくエリア全体でスマート化を推進しており、「Smart City Takeshiba」プロジェクトは、東京都が「スマート東京」実現を目指して公募したプロジェクトにも採択されている。

 またすでに実施された東京都「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」のほか、9月からは屋内外の自動配送を検証・評価するNEDO「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」、東京都による先端テクノロジーショーケーシング事業「Tokyo Robot Collection」などにも参画し、竹芝エリアで実証実験が行なわれる。

 9月18日から9月20日までは、リアルとオンラインが融合した街びらきイベント「TAKESHIBA SMARTCITY FES」を開催する予定。9月9日には内覧会が行なわれた。ロボットを中心にレポートする。

「Tokyo Robot Collection」

Tokyo Robot Collection参加ロボット。9月14日(月)〜9月17日(木)、一般公開で行なわれる

 「Tokyo Robot Collection」は東京都が実施しているロボット活用により社会的課題の解決に資する新しい社会実装モデルのショーケース化事業。今回、おもに静展示にて先行で公開されたが、9月14日(月)〜9月17日(木)の日程で実施される実験には、avatarin株式会社のテレプレゼンスロボット「newme(ニューミー)」、PSYGIG株式会社の発熱検知・マスク着用検知ロボット「PSYKUN(サイくん)」、THK株式会社のサイネージ・発熱検知用の「自律移動型ディスプレイロボット」、株式会社サイバーエージェント・大阪大学基礎工学研究科(先端知能システム(サイバーエージェント)共同研究講座)の「操作者の能力を拡張させる遠隔操作ロボット」、ソフトバンク株式会社の搬送用屋外走行実証機「Cuboidくん(キューボイドくん)」、株式会社電通テックが国内で展開しているUBTECHの案内ロボット「Cruzr(クルーザー)」が参加する。とくに初日の14日には、ロボットが多く稼働する予定とのこと。

Tokyo Robot Collection参加ロボット。左からPSYGIG「PSYKUN」、サイバーエージェント・大阪大学基礎工学研究科の「操作者の能力を拡張させる遠隔操作ロボット」、avatarin「newme」、ソフトバンク「Cuboidくん」、電通テック「Cruzr」。THKは今回は展示なし
PSYGIG「PSYKUN」。発熱検知・マスク着用検知ロボット
サイバーエージェント・大阪大学基礎工学研究科の遠隔操作ロボットは通行客に声がけして店舗への呼び込みを行なう
ANAグループのavatarinによるアバターロボット「newme」
電通テック「Cruzr」(右)。4か国語対応できるコミュニケーションロボット

 今回、おもに動作デモを行なっていたのは、ソフトバンクの「Cuboidくん」。もともとROSベースの研究開発用のプラットフォームとして、ソフトバンクがリース販売しているロボットだ。価格は月額20万円(税別)。設定ルートの移動、自動充電機能のほか、20kgの可搬能力があり、さまざまなものを載せられる。

 実証実験ではテナントの「タリーズ」との連携による搬送のほか、殺菌・ウイルス不活化用の紫外線(UV-C)照射ユニットを搭載したモデルで実証実験を行なう。内覧会ではブラックライトを搭載してデモ走行を行なった。実証実験の場はつねに求めているとのこと。

「Cuboidくん」
「タリーズ」と連携してコーヒーポットを館内に配送するなどの実験を行ないたいとのこと
UV-C照射ユニット搭載「Cuboidくん」
ウイルス不活化を狙う。今回はブラックライトでの走行デモ

警備・掃除はロボットで省力化。エレベーターとも自動連携

巡回中のSEQSENSE社の警備ロボット「SQ-2」

 実証実験だけではなく、施設管理には人手不足解消を目的としてロボットが積極的に活用される。具体的にはソフトバンクロボティクス株式会社のロボット掃除機「Whiz」、SEQSENSE株式会社の自律移動警備ロボット「SQ-2」などが活用される。警備ロボットの導入台数は1台。巡回ルートも、まだこれから決める段階。

 移動ロボットの課題となるビルの上下階移動には、三菱電機株式会社の「ロボット・エレベーター連携システム」を用いることで、配車号機の通知、戸開閉情報や乗車/後者指示のやりとり、複数種類/複数台のロボットへの対応が可能となる。エレベーターをロボットが使うときには、ロボット専用となり、原則として人と一緒に乗り込むことはできない。

警備ロボット「SQ-2」からの画像
自分でエレベーターを呼ぶことができる
ソフトバンクロボティクスのロボット掃除機「Whiz」

ロボットによるコンビニ品出しも

1Fにある次世代コンビニ「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」

 1~3F、6Fには、商業エリア「竹芝グルメリウム」として、近隣住民も使えるカフェやレストラン、コンビニがオープンする。なかでもTelexistence株式会社と東急不動産株式会社が共同で1Fにオープンする次世代コンビニ「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」には、陳列業務を行なう遠隔操作ヒューマノイドロボット「Model-T」を導入し、実証実験を行なう。

 店舗業務の省人化や、どこからでもロボットを通じて就労可能な新しい店舗オペレーションの実現を目指し、人手不足などの社会課題の解決に貢献することを目標としている。

 残念ながら内覧会ではロボットはお披露目されなかった。14日のオープン時には姿を見せ、ガラス越しに品出しを行なう様子が見られる予定。なお、Telexistenceはファミリーマートとも同様の取り組みを行なっている。

店内の様子
14日には右側のシャッター部分が空き、ガラス越しにロボットが見られるそうだ

スマートシティの先進都市を目指す竹芝エリア

東急不動産株式会社 代表取締役社長の岡田正志氏

 説明会で、東急不動産株式会社 代表取締役社長の岡田正志氏は「このプロジェクトは渋谷とは異なる新たな街づくり。水と緑の豊かな立地だが交通が分断され、これまでは魅力を発揮できていなかった。竹芝は国家戦略特区第一号案件として認可を受け、行政との連携を深め事業推進を行なってきた。交通利便性向上のために首都高の上空を通る地上16mの歩行者デッキを整備し、新たな賑わいを生み出す。これまでに約40社と連携して200回以上のイベントを実施してきた。この協議会を中心に一丸となって街を盛り上げていきたい。

 現在、竹芝では多くの建て替え事業が進んでいる。街が大きく進化するきっかけとなった。開業後も引き続き街の牽引役として役割を果たしていきたい。竹芝エリアに最先端技術とコンテンツ産業を集積させる。ソフトバンクを共創パートナーとして迎え、新たな街づくりを推進していく。テクノロジの力により混雑回避や非接触を実現し、ウィズコロナ時代にマッチする働き方改革となった。これからも最先端実験を行ない、スマートシティの先進都市として東京の国際競争力を高める」と語った。

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内謙氏

 続けて壇上に呼び込まれた、ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は「非常に景色がすばらしい。早い段階で入居を決めていたので1,300以上のセンサーがついた本格的なスマートビルになると興奮している」と語った。

 そして「デジタルシフトが進むなか、働き方はガラッと変わる。この竹芝をもっとも進化した街にしようと岡田社長と意気投合した。AIカメラやセンサーなどによって混雑回避や街の発展をデジタルシフト化したスマートビルディング、さらにスマートシティへと広げていく。

 東京都からは「スマート東京」にも採択された。まだスタートの段階。今後、さまざまなパートナーと進めてスマートシティへ拡大していく。最先端テクノロジーを体験できる場所にして竹芝を盛り上げていく。1、2年でスマートシティと言えるようになるだろう。国内初の取り組みではないかと考えている」と述べた。

 東京都知事の小池百合子氏はビデオで登場。小池氏は「東京都はこれまで東京の魅力と活力を高めて国際競争力を高めるためプロジェクトを進めてきた。竹芝地区はその1つとして整備を進めてきた。国内外から多くの人を惹きつける魅力あるエリア。低層部には4つのスペースに都立の産業スペースを設けた。歩行者デッキからは街が見渡せる。多くの魅力にあふれている。浜松町・芝浦エリアを先進エリアとして指定し、継続してイベントなどの誘致のサポートする。竹芝地区のみならず東京の持続的成長をリードする存在となることを期待する」と述べた。

 港区長の武井雅昭氏もビデオで登場した。「竹芝地区は伊豆や小笠原への玄関口であり羽田空港ともつながっており、高いポテンシャルを持っている。港区では大規模な開発事業と連携して災害にも強いビジネス拠点形成を目指している。官民連携による賑わいの創出も図られている。コンテンツ産業のビジネス拠点も設置される。地区のさらなる発展に取り組む」と語った。

東京ポートシティ竹芝
浜松町駅からのびる歩行者用デッキ。全長500m
1Fの「ポートホール」
スマートビル導入のまとめ

生まれ変わる竹芝の象徴となるプロジェクト

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部 統括部長 根津登志之氏

 事業説明は東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部 統括部長の根津登志之氏と、東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部 グループリーダーの仲神志保氏が行なった。

 根津氏は東京ベイエリアの開発背景から紹介。竹芝は都心にありながら海と緑を感じられる地区であり、このプロジェクトはランドマークとなる開発として進められた。東京都が都市再生ステップアッププロジェクトを募集。これに東急不動産と鹿島が応募してプロジェクトがスタートした。また国家戦略特区第一号案件となった。「生まれ変わる竹芝の象徴となるプロジェクト」と改めて紹介した。

 「ポート」という名前には「港町」という意味と、IT用語の「ポート」がかけられている。オフィスタワーは地上40F、地下2F。大型複合施設だ。オフィスフロアからは浜離宮や芝離宮、東京湾を眺望できる。多様化するニーズにこたえるため、祈祷室やオールジェンダートイレも整備した。

 2Fから5Fには東京都立産業貿易センター浜松町館、8Fにはシェアオフィスが入居する。スタジオも設置し、企業が独自に映像を撮影することが可能。CiP協議会の拠点が設けられ、竹芝をコンテンツとデジタルの拠点とする活動も行なう。

 2Fから6Fには階段状に配置された「スキップテラス」を整備した。オフィスビルにおいて緑のちからを活用する取り組みの1つで、生物多様性に関する情報発信や教育の場を提供する。イベントホールは屋外とも一体で利用できる。職住近接のレジデンスタワーは1ルームから3LDKまで。フィットネスルームやDIYラウンジ、ワークラウンジなどが共用施設として整備されている。

 竹芝地区全体のエリアマネジメント活動も継続する。都心にありながら水と緑に囲まれた竹芝の魅力を発信してきた。JR東日本とも連携し、浅草やお台場との舟運も整備してエリア回遊性の向上をさらに進める。

 「単なるオフィスビル・集合住宅の整備ではなく、まちづくりのフロントランナーとしてさまざまな実証実験を進めてきた。街のあらゆるデータを収集、スマートシティプラットフォームに集約することで社会課題解決と経済発展の両立を目指す。

 複数の技術の実験が進められており、ロボットやMaaS、自動走行ロボットによる配送サービスなどが行なわれている。スマート東京の先行実施エリアプロジェクトにも選定された。東京を代表する地区の1つとして、東急不動産とソフトバンクのデータ活用の力で進めていく」と語った。

 今後については、港区と連携した竹芝Marine-Gateway Minato協議会の設立、MICE(Meeting、Incentive tour、Convention・Conference、Exhibition)誘致に取り組んでいるエリアとして「東京ビジネスイベンツ先進エリア」に指定されたことなど官民連携プロジェクトについてふれ、「ベイエリア活性化のリーディングプロジェクトとしてさまざまな取り組みを実施してきた」と述べた。開業を通過点として、今後も進化し続ける街づくりを実現すると述べた。

階段状のスキップテラス
飲食店が入居するみなと横丁

コンセプトは「人間のパートナーになるビル」

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部 グループリーダー 仲神志保氏

 仲神氏は、ソフトバンクのロボット「cuboidくん」に持ってきてもらったiPadを使ってプレゼン。コンセプトは「人間のパートナーになるビル」だという。

 リアルタイムデータを活用し、プラットフォームで一元管理。オフィスワーカー、テナント、来館者、ビルマネジメントに配信・活用される。オフィスワーカー向けには専用アプリが開発され、エレベーターの混雑状況やオススメ時間、お気に入りのお店の状況などを見ることができる。

 テナント向けには建物のどの入り口からどのくらい人が来たのか、各店舗の状況を分析できる。来館者向けにはAIカメラで把握する店舗内の混雑状況などを、30カ所に置かれたデジタルサイネージを使って案内を行なう。

 1,000台を超えるデバイスの状況も一元管理できる。館内の異常発生もリアルタイムで地図上で発報される。ゴミ箱の状況やテラスの水の状況もわかるという。イベント開催予定を見て来場者推移を知ることもできる。

多数のセンサーからのリアルタイムデータを活用
プラットフォームで一元化

 オフィスロビーには顔認証システムを実装。エレベーターと連動し、オフィスまでタッチレスで行ける。また全館に5Gを実装した。ロボットと人との共存も目指す。レジデンスでも入居者向けアプリが提供される。管理会社からのお知らせや電気代、玄関の鍵の開閉状況などがすべて1つのアプリで閲覧できる。顔認証システムはこちらでも実装される。またデジタルキーを使うことで不在宅配にも対応する。

シェアオフィス「ビジネスエアポート竹芝」フロアからの眺望