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専用ベンチではRyzenが高性能でも、ゲーム性能ではCoreが勝つ理由とは
~Intelがベンチマーク説明会を開催
2020年8月20日 12:56
Intelは19日、「Intel Platform Advantage」と題した説明会をオンラインで開催した。説明会では、同社マーケティング&パフォーマンス担当ディレクターのHiral Gheewala(ヒラル・ジワラ)氏がメインスピーカーとして登壇。同社のベンチマークについての考え方やモバイル向けのCore H/Uシリーズの性能についての解説が行なわれた。
より現実に即した処理性能の計測
まずはベンチマークについての説明が行なわれた。技術書「コンピュータアーキテクチャ」(ジョン・L・ヘネシー、デイビッド・A・パターソン著)の一節を引用し、コンピュータの性能は、実用に則した適切なアプリケーションの選択と使い方をもって計測すべきであるとした。
一般的にコンピュータを利用する場面として、ネットサーフィンや事務作業、画像/動画編集、ゲームなどがあるとしたうえで、検証に用いるベンチマークソフトとして「SYSmark 25」や「MobileMark 2018」、「WebXPRT」などを挙げた。これはより実用に近い環境で性能検証が行なえるためだとしており、一例として、SYSmark 25がMicrosoft OfficeやGoogle Chrome、Adobe製アプリなどをテストに用いるのに対し、PCMark 10ではChromium、FFmpeg、GIMPなどを用いるといった違いによるものだという。
あわせて、Representative Usage Guides(RUGS)と呼ばれる評価基軸についても紹介された。スプレッドシートでの計算やドキュメントのPDFへの変換、画像の識別など、特定のタスクを実行するアプリケーションの動作からコンピュータの性能やバッテリ寿命などを指標化するもので、自動化により正確で再現性の高い結果を求められるという。
ゲームで強さを発揮するCore Hシリーズ
Core Hシリーズは、ゲーミングパソコンを想定した製品ラインナップで、幅広い価格帯で多くの採用機種が販売されている。ここでは、Lenovo製のRyzen 7 4800H(8コア/2.9GHz)搭載ノート「R7000-2020」と、Core i7-10750H(6コア/2.6GHz)およびCore i5-10300H(4コア/2.5GHz)搭載ノート「Y7000-2020」による性能比較の結果を用いて解説が行なわれた。なお、メモリ、ストレージ、GPU、バッテリ容量は共通となる。
Cinebench R15/R20、3DMark Time Spy/Firestrikeを用いたベンチマークテストでは、Ryzen 7 4800Hがもっとも高いスコアを記録した一方で、実際のゲームプレイ時の平均FPSを計測すると同CPUがもっとも低い結果となった。
さらに36のゲームタイトルで検証を行なったところ、うち35のタイトルでCore i7-10750HがRyzen 7 4800Hを上回る性能となり、残り1タイトルではほぼ同等の結果となったという。Core i5-10300Hの場合でも、31タイトルがRyzen 7 4800Hより優れた結果を記録しており、エントリーグレードの製品においても競合するRyzen CPUに対して優位だとした。
Core i7-10750HはRyzen 7 4800Hと比べてコア数の面で不利だが、ゲームプレイにおいてはコア数よりも動作クロックの上昇の方が性能向上に大きく影響するという。コア数による性能の上げ幅は平均で、6コアから8コアで2%、8コアから10コアで1.5%程度と小さいのに対し、動作クロックでは3GHzから4GHzで20%、4GHzから5GHzで10%程度と大きくなる。こういった要因から、高い動作クロックで優れた性能が発揮できるCore Hシリーズプロセッサは、モバイルゲーミングに適した製品だとした。
バッテリ駆動時でも性能が落ちづらいCore Uシリーズ
モバイル向けのCore Uシリーズでは、HP製のRyzen 7 4700U(8コア/2GHz)搭載2in1「ENVY x360 15z」と、Core i7-1065G7(4コア/1.3GHz)およびCore i5-1035G1(4コア/1GHz)搭載「ENVY x360 15t」による性能比較を実施。なお、前者2つは16GBメモリ、512GB M.2 NVMe SSD搭載製品となるが、Core i5-1035G1は8GBメモリ、256GB M.2 NVMe SSD搭載となり、GPUは順にRadeon Graphics、Iris Plus Graphics、UHD Graphics 920となる。
モバイル向けとなるCore Uシリーズでは、AC電源接続時とバッテリ駆動時の性能差について言及。SYSmark 25、PCMark 10、WebXPRT 3を用いたテストにおいて、Ryzen 7 4700Uでは、バッテリ駆動時に30~50%弱程度の性能低下が見られる一方で、Core i7-1065G7およびCore i5-1035G1では10~20%程度の低下に留まった。RUGSを用いた検証でも、とくにバッテリ駆動時においてはCoreプロセッサの方が良好な結果となったとした。
Ryzen 7 4700Uはバッテリ駆動時にCPU消費電力が大きく制限され、動作クロックが上がりづらいと分析。一方でCore i7-1065G7では、AC電源接続時とバッテリ駆動時のCPU消費電力の差が少なく、動作クロックの低下も抑えられるため、高い性能を維持でき、モバイル使用時でも遜色ない性能が発揮できると強調した。これはHシリーズについても同様で、モバイル向けRyzen CPUはバッテリ持続時間と引き換えに性能低下してしまうと指摘した。
AI支援機能やデスクトップ向け製品でも競合より優位
第10世代Coreでは、DL Boostと呼ばれるディープラーニングを支援する新しい命令を追加し、OpenVINOのようなツールキットを提供。これによりアプリケーション開発者はAI支援機能が活用しやすくなる。実際にこれらを活用したソフトウェアでは、AIによる処理が高速に行なえるという。
デスクトップパソコン向けCPU製品についても触れられ、AMDが7月にRyzen 9 3900XTなどを投入したが、従来のモデルと比べて1~2%程度の性能向上に留まったとした上で、Core i7-10700K(8コア/3.8GHZ)ではより安価で高いゲーム性能が発揮できるとしている。