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産総研、100GHz超の高周波数帯における金属導電率を計測する技術
2020年6月22日 15:49
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) 物理計測標準研究部門 電磁気計測研究グループは、100GHz超の周波数帯での金属の導電率を計測できる技術を開発した。
最大10Gbpsの高速無線通信を実現する5Gなど、ミリ波帯の電磁波の活用が近年拡大している。高周波数回路では、誘電体基板の誘電損失と金属線路の導電率によって伝送損失が決まるが、金属と誘電体の接着性を確保するために誘電体表面は粗化されるため、ミリ波帯では導電率が低下することが問題となっていた。加えて従来の導電率計測では、極小の誘電体柱を用いた共振器が用いられているが、この誘電体柱のサイズによって決まる単一周波数のみしか測定できなかったことから、100GHz超の周波数帯において金属導電率を計測するのが困難だった。
今回研究グループでは、同一の誘電体基板と異種の金属を組みあわせた2種類の平衡型円板共振器を利用して計測を実施。2枚の誘電体基板の間に金属円板を挟み、同軸線路で共振器中央に給電することで特定の共振モードのみを励振させ、共振周波数と共振の鋭さを示すQ値を測定した。
その結果、すべての共振器で等間隔に特定の共振モードが観測できた。これにより、基本モードとなる約16GHzと、約13GHz間隔で出現する高次モードの共振を利用し、共振特性を測定することで、各共振周波数のでの誘電率が求められる。そこで、基準銅円板からなる共振器と、測定対象の金属円板からなる共振器のそれぞれのQ値を解析し、誘電率を厳密に決定できる電磁界解析アルゴリズムを開発。10G~100GHz超の広帯域において高精度な金属誘電率を計測可能にした。
共振器の給電に用いた同軸線路の特性により、今回は110GHzまでの測定に留まっているが、極細の同軸線路を利用することで170GHzまでの信号入力が可能な共振器が実証されており、高周波化への対応に向けた開発を進めているという。
今回開発された計測技術により、100GHz超のミリ波を含む超広帯域での高精度な計測が容易に行なえるようになった。銅箔が誘電体基板上に実装された銅張基板の導電率計測にも原理的に適用でき、銅張基板の導電率計測を実証などを進めるとともに、500GHzまでの計測技術の開発を進めていくという。