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NTTとIPAの「シン・テレワークシステム」はラズパイだった。1ユーザーあたり月14円で運用可能
2020年5月15日 15:21
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は14日、契約やユーザー登録が不要ですぐに利用できる無償のVPN+リモートデスクトップ環境を実現するサービス「シン・テレワークシステム」のシステムの詳細、利用状況経過報告、および新機能などについて解説した。
このシステムは、新型コロナウイルス対策としての政府の緊急事態宣言や、在宅勤務の社会的要請を受け、迅速に開発し4月21日より提供開始したもので、10月31日までは無償で利用できる。14日の現状報告にて、そのハードウェア機構が明らかとなった。
今回IPAがこの施策のために、国のお金を使って調達した物品は、SSL-VPN中継システムのハードウェア50台のみだった。具体的には、シングルボードコンピュータ、ケース、ストレージ、電源、LANケーブル50台分をすべて含めた金額である。
そのうえで、ソフトウェアの工夫により、1台の装置あたり少なくとも1,000セッション、多くて2,000セッションの1GbpsのSSL-VPNを処理を可能とした。つまり、合計5~10万セッションを同時に処理できるシステムをわずか65万円で構築したという。
現時点でのユーザー数は2万ほどのため、同時利用でもまだ余裕がある。現時点では1ユーザーあたり32円かかっているが、将来的に5万ユーザーに増えた場合1ユーザーあたり13円となる。実証実験が7カ月間であることを踏まえて仮定すると、コストは1ユーザー1カ月あたり2~5円程度になると試算している。
NTT東とIPAは採用されているARMベースのシングルボードコンピュータの製品名について明示的に説明していないが、写真を見るかぎり「Raspberry Pi 4 Model B」そのものだ。
続いてハードウェアを稼働する電気料金についてだが、現時点で常時630Wの電力を消費している。これで5万ユーザーのセッションを維持できるため、1カ月あたり15,000円程度の電気代が発生。このほかスイッチや冷却のための冷房費用も勘案しても月5万円程度。よって、1ユーザー1カ月あたりの電気代は1~3円程度だという。
さらに、設置スペース代についても、東京都内で試算した場合多くても年間約62万円程度、逆算すると1ユーザーあたりの設置スペースのコストは月額1~3円となる。画面転送もプロトコルが相当に最適化されていて、通信量がとても小さいため、1ユーザーあたりの送受信は全二重で6Kbps程度で足りることから、通信コストも月額1~3円で済むという。
以上のすべてのコスト足した場合、1ユーザーあたりの月額は5~14円程度になるとしている。NTT東およびIPAは、「このわずかなコストだけで、1人の通勤や移動を削減でき、新型コロナウイルスの動きを阻害できる。そしてテレワークの普及によって新型コロナウイルスが早期に収束すれば、その経済的価値は数十兆円規模にのぼると考えている。
なお、14日からは「Beta 5」を提供し、ユーザーから寄せられた要望機能の大半を開発したという。
1.エンタープライズ環境用ポリシー規制サーバー機能を実装。社内LANでの規制/統制が可能
2.二要素認証(ワンタイムパスワード)機能を実装
3.マイナンバーカードを用いたユーザー認証機能を実装
4.クライアント端末検疫機能を実装。アンチウイルスとWindows Updateの実施が検索可能
5.クライアント端末MACアドレス認証機能を実装
6.社内HTTPプロキシ経由時のUser-Agent値を自由に変更できる機能を実装
7.シン・テレワークシステムの利用禁止規制申請の仕組みを作り、運用開始
8.行政情報システム適合モードを実装、FWに登録可能なIPアドレスのホワイトリストを公開
9.マルチディスプレイ機能を実装
10.クライアント端末側のカメラとマイクを職場内のテレビ会議ソフトで利用可能な機能を実装
なお、4月21日のリリース時では開発メンバーの1名の個人名がデジタル証明書の発行元として表示されていたが、Beta 5ではIPA名義に変更された。