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日本ではMicrosoft 365 PersonalがOffice 365 Soloの後継として同価格帯で展開、商用利用可
2020年3月31日 09:02
米Microsoftは、3月30日(現地時間)に記者会見を開催し、同社のサブスクリプション型クラウドサービス「Microsoft 365」の個人・ファミリー向けバージョンを4月21日より米国で販売開始すると明らかにした。現在米国では個人向けに1ユーザーで利用可能なOffice 365 Personal、契約者を含めて6ユーザーで利用可能なOffice 365 Homeが展開されているが、前者はMicrosoft 365 Personalに、後者はMicrosoft 365 Familyに置き換えられるかたちとなる。前者は月額6.99ドル、後者は月額9.99ドルという価格設定になっている。
Microsoftの日本法人となる日本マイクロソフトによれば、今回発表された2つのサブスクリプションのうち、日本ではMicrosoft 365 Personalが提供開始される予定で、Microsoft 365 Familyに関しては提供は未定とのこと。Microsoft 365 Personalの日本でのMicrosoft Store価格は月額1,284円(税込み、参考価格)となる予定だ。日本版Microsoft 365 PersonalはOffice 365 Soloの後継と位置づけられており、引き続き商用利用が可能なライセンス形態になっている。
従来の個人/ファミリー向けOffice 365のブランドをMicrosoft 365に変更した新プラン
Microsoftが発表したMicrosoft 365の個人・ファミリー向けのプランは、基本的には従来のOffice 365の個人・ファミリー向けのプランを拡張したものという扱いになる。
法人向けのMicrosoft 365では、Office 365にWindows 10 BusinessないしはWindows 10 Enterpriseのライセンスと拡張デバイス管理機能を加えたものとされており、Office 365とMicrosoft 365が併存して企業側のニーズに応じて選べるようになっている。
これに対して今回発表されたMicrosoft 365の個人・ファミリー向けのプランは、Windows 10のライセンスや拡張デバイス管理機能などはバンドルされておらず、従来の個人版Office 365に機能を追加し、Microsoft 365にしたものと考えられるだろう。したがって、実質的にはブランド変更の側面がとても強いアップグレードだと言える。
従来米国の個人・ファミリー向けOffice 365は、いずれもデバイスへのインストールは無制限で同時に5台まで利用できるという仕組みになっており、契約者を含めて6人までの家族メンバーが同時に利用できるOffice 365 Home、1ユーザーのみが利用できるOffice 365 Personalの2つのプランが用意されていた。
今回発表されたMicrosoft 365では前者(6人までの家族が利用できる)のプランがMicrosoft 365 Family、後者(1ユーザーが利用できる)のプランがMicrosoft 365 Personalとなる。価格もOffice 365 Home、Office 365 Personalの価格を踏襲しており、Microsoft 365 Familyが月額9.99ドル、Microsoft 365 Personalが月額6.99ドルとなっている。基本的な位置づけはOffice 365のそれと同等になっていると考えられる。
基本的な機能は、従来のOffice 365 Home、Office 365 Personalと同じで、電子メールのOutlookは50GBまでのストレージ、クラウドストレージのOneDriveは1TB(Office 365 Familyでは1ユーザーあたり6TBで、最大6TB)、月あたり60分のSkype無料通話権が付属するといった基本的な特典などは変わっていない。
Microsoft 365 Family、Microsoft 365 Personalの両プランは米国では4月21日(現地時間)より提供開始予定で、現在Office 365 Home、Office 365 Personalを契約しているユーザーは自動で契約が切り替わるかたちとなる。
Microsoftアカウント | Microsoft 365 Personal | Microsoft 365 Family | |
---|---|---|---|
利用できるユーザー | 1ユーザー | 1ユーザー | 最大6ユーザー |
Officeアプリ | Webアプリ/Android、iOSアプリ | Webアプリ/Android,iOSアプリ/デスクトップアプリ(Windows/macOS) | Webアプリ/Android,iOSアプリ/デスクトップアプリ(Windows/macOS) |
Microsoft Editor | スペル/文法 | スペル/拡張文法/スタイル | スペル/拡張文法/スタイル |
PowerPointデザイナー | レイアウトリコメンデーション | プレミアムコンテンツ付属の拡張レイアウトリコメンデーション | プレミアムコンテンツ付属の拡張レイアウトリコメンデーション |
Money in Excel | - | ○ | ○ |
OneDrive最大容量 | 5GB | 1TB | 1ユーザーあたり1TB(最大6TB) |
OneDrive Personal Vault | 3ファイル | 無制限 | 無制限 |
OneDriveランサムウェア検出とリカバリ | - | ○ | ○ |
OneDriveパスワードと期限つきリンク | - | ○ | ○ |
Outlookアプリ | Web/Android,iOSアプリ | Webアプリ/Android,iOSアプリ/デスクトップアプリ(Windows/macOS) | Webアプリ/Android,iOSアプリ/デスクトップアプリ(Windows/macOS) |
Outlookストレージ容量 | 15GB | 50GB | 50GB |
Outlookカスタムドメイン | - | ○ | ○ |
Outlook拡張セキュリティ | - | ○ | ○ |
Skype無料通話 | - | 60分/月 | 60分/月 |
サポート | アカウント/セットアップサポート | Windows 10/Microsoft 365アプリのサポート | Windows 10/Microsoft 365アプリのサポート |
パートナーベネフィットプログラム | - | ○ | ○ |
Microsoft 365へのブランド変更にあたり、Microsoft EditorやMoney in Excelなどの新機能を追加
今回MicrosoftはOffice 365からMicrosoft 365へとブランドを変更するにあたり、単なる看板の掛け替えだけでなく、新機能の追加も行なっている。
今回新しい機能として搭載される「Microsoft Editor」は、Word(Web版/デスクトップアプリ版)、Outlook(Web版/デスクトップアプリ版)、そして新しいChromiumベースのMicrosoft Edge用のエクステンションとして動作するアプリで、文法や綴りなどをAIがチェックし、校正を行なってくれるツールとなる。いわゆるタイポと呼ばれる間違いなどをAIが探して指摘してくれるという意味で利便性が高いだろう。WordやOutlookだけでなく、ChromiumなMicrosoft Edgeを利用した場合にはFacebookなどのWebサイトでも利用可能になる。対応言語は日本語や英語を含む20言語。
「Money in Excel」は表計算ソフト「Excel」の拡張として用意される家計簿ツール。Excelを使って銀行やクレジットカードの履歴にアクセスし、家計簿を手軽に作成できる。そのデータを利用してグラフを作ったりということも容易になる。このMoney in Excelは、銀行やクレジットカードなどのオンラインサービスなどと連携する必要があるため、まずは今後数カ月を目処に米国で最初にサービスが開始される。
このほかにも、PowerPoint向けのレイアウトをAIがサジェスチョンしてくれる機能や、デザインのスタートになるテンプレートなどのプレミアムコンテンツ、AIを利用したPowerPointを利用したプレゼンテーションをよりよくやるためのコーチ機能などが追加される。
従来の個人/ファミリー向けOffice 365にはなかった機能として、新しくMicrosoft Family Safetyと一般消費者向けのTeamsがラインナップに加わる。
Microsoft Family Safetyは、子供がどのようにデバイスを使っているのかを監視するためのツールで、Android版とiOS版が提供される。子供が利用しているWindows 10 PC、Xbox、Androidスマートフォンが、いつディスプレイがオンになってどのような使われ方をしているかなどをダッシュボードで確認できる。子供にデジタルデバイスをどのように使わせるかは親にとっては頭の痛い問題だが、そうしたデジタルできちんと監視できれば適正な使い方を指導したりすることが容易になるだろう。
Teamsは、Microsoftのチームコラボレーションツール 兼 電話会議ツールで、SlackとZoomを1つにしたような機能を持つ。もともとTeamsはSkype for Businessの後継として企業向けのOffice 365/Microsoft 365向けに展開されてきたが、一般消費者向けのMicrosoft 365ではSkypeと併存するかたちで提供される。一般消費者版のTeamsは、個人/ファミリー向けのMicrosoft 365のOutlook、OneDrive、カレンダーなどにアクセス可能なアプリとして提供され、そうした複数のアプリやサービスを横断的に使えるツールとしても動作する。
また、Adobeなどのサードパーティベンダーから特典が提供されるプログラムも付属する。すでに米国では米国向けのAdobeの特典としてはCreative Cloudのフォトグラフィープラン、Premiere Rushのプラン、Acrobat Pro DCのプランを3カ月無料で利用できる特典などが提供されている。
日本マイクロソフトからOffice 365 Soloの後継としてMicrosoft 365 Personalが投入、引き続き商用利用可能
米Microsoftの発表後、日本法人となる日本マイクロソフト株式会社からも日本での展開が発表された。それによれば、日本ではMicrosoft 365 Personalだけが展開予定で、Microsoft 365 Familyの提供は現時点では未定。また、Microsoft 365で新しくサポートされるとされたMicrosoft Family Safetyに関しても日本での展開は現時点では未定、つまり提供される計画が現時点ではないという。
なお、それ以外のMicrosoft Editor、Money in Excel、サードパーティの特典プログラムなどの新機能は、提供時期にズレはあるものの、じょじょに日本でも展開が行なわれる計画だと明らかにされた。
日本で提供予定のMicrosoft 365 Personalは、Microsoft Storeで提供され、参考価格は1,284円(税込み)。米国価格の6.99ドル(1ドル=108円換算で約755円)に比べるとやや高い値段設定になっている。これは、日本のMicrosoft 365 Personalが、日本で提供されていたOffice 365 Soloの後継とされており、商用利用が可能なことが影響している。
Microsoftの一般消費者向けOffice 365は、米国で提供されているOffice 365 Home/Personalは商用利用が不可(具体的には会社の仕事を家に持って帰ってきて利用するといった使い方が不可)になっており、今回発表された米国でのMicrosoft 365 Family、Microsoft 365 Personalはいずれも商用利用ができないかたちのライセンスになっている。
それに対して日本だけで販売されていたOffice 365 Soloは、個人向けPCにバンドルされているMicrosoft Officeのライセンスが商用利用が可能な形態になっており、一般消費者向けとして販売されているPCでそうした使い方が一般的であるため、例外的に商用利用できるようになっていた。
今回日本で提供される計画のMicrosoft 365 Personalも、商用利用が可能なライセンス形態になっており、その結果として従来のOffice 365 Soloと同じ価格帯の価格設定になっているのだ。よりシンプルにまとめると、名前が変わって機能が増えるけど、お値段据え置きということだ。
なお、現在Office 365 Soloを契約しているユーザーは、日本でMicrosoft 365 Personalが発売されると自動的にそれに切り替わる。また、デバイスの扱いも米国のMicrosoft 365 Personal、Office 365 Soloと同じく1ユーザーがデバイス数の制限なくインストールでき、同時に利用(具体的にはサインイン)できるのは5台までという扱いもOffice 365 Soloのときと変化はない。
日本マイクロソフトによれば、日本での発売も米国に準じる予定で、米国時間の4月21日、通例で言えば米国太平洋時間の午前6時からの販売開始となるため、日本時間に直すと4月21日22時以降の販売開始になる可能性が高い。