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東工大ら、温室効果ガスを光照射で水素や化学原料に変換できる高性能光触媒を開発

光触媒によるドライリフォーミングの反応構図

 科学技術振興機構(JST)は、温室効果ガスを光照射で水素や化学原料に変換できる高性能光触媒を発表した。東京工業大学 物質理工学院 材料系の庄司州作博士後期課程3年と宮内雅浩教授、物質・材料研究機構の阿部英樹主席研究員、高知工科大学の藤田武志教授、九州大学 大学院工学研究院の松村晶教授、静岡大学の福原長寿教授らの共同研究グループによる成果としている。

 これはメタンの二酸化炭素改質反応(ドライリフォーミング)反応を応用したもの。ドライリフォーミング反応はメタン改質反応の1つで、温室効果ガスであるメタンと二酸化炭素から、水素と一酸化炭素の合成ガスに変換できる(CH4+CO2から2CO+2H2)。生成された合成ガスはアルコールやガソリン、化学製品を製造する化学原料となるため、ドライリフォーミング反応は天然ガスやシェールガスの有効利用、および地球温暖化抑止のために注目されている。しかし、反応を効率よく進行させるためには800℃以上の高温が必要とされ、大量の燃料消費と高温条件における触媒の劣化が問題となり、実用化には至っていなかった。

 今回、研究グループは光エネルギーを使って、別途光熱を必要とせずにドライリフォーミング反応を起こす紫外線応答型のチタン酸ストロンチウム光触媒を開発。チタン酸ストロンチウムに金属ロジウムがナノスケールで複合され、チタン酸ストロンチウムとロジウム塩水溶液を密閉容器内で加熱処理することによって簡便に合成できるという。

 この光触媒に紫外線を照射すると、加熱をしない条件でも50%を超えるメタンと二酸化炭素転換率を示した。これにより、燃料の消費が大幅に抑えられ、加熱による触媒の劣化が起こらず、長期間安定的に反応を継続できるため、地球温暖化ガスを有効利用できる方策として期待される。

開発された光触媒。左が触媒の透過型電子顕微鏡観察図、右は触媒粒子の高倍率観察像

 今回の研究では光触媒として紫外線応答型のチタン酸ストロンチウムを使っているが、実用化の面では、太陽光の主成分を成す可視光の利用が重要となる。その一方で、研究成果として酸素イオンが媒体となるエネルギー製造型反応の機構をはじめて見い出しており、今後はこの新しい反応機構をもとに、可視光を吸収できる光触媒材料に展開することも可能であるとする。

 また研究成果は天然ガスやシェールガスの有効利用につながるとともに、温室効果ガス低減に貢献できると期待され、低温で合成ガスを製造することができるため、既往の工業的手法と組み合わせることでガソリン製造などの施設の大幅な簡略化と効率化が望めるとしている。

 研究成果は1月27日(英国時間)に英国科学誌「Nature Catalsys」にオンライン掲載される予定。

光触媒の各温度での活性および水素と一酸化炭素の生成速度
光触媒および従来型熱触媒の反応前後の電子顕微鏡像