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東大とJDI、指紋/静脈認証と脈拍計測が同時に行なえる超薄型イメージセンサー

開発されたシート型イメージセンサー

 東京大学大学院工学系研究科および株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)は、指紋/静脈の撮像と脈波の計測を同時に行なえるシート型イメージセンサーを開発した。

 急速に進む高齢化に向けて、患者自身やその家族によるセルフケアや在宅医療の必要性が高まるなかで、健康状態を常に監視可能かつ患者本人のデータであることが確認できる、生体認証の機能を備えたウェアラブルセンサーが求められている。

 デバイスの形状にあわせて変形できるシート型のイメージセンサーは、これまでも開発が行なわれてきた。生体認証とバイタルサインの1つである脈拍を読み出す場合、高感度な「光検出器」と高速な「スイッチング素子」がそれぞれ用いられるが、この2つは相互が損傷を与えてしまうため、1つの小さな基板上に実装するのが困難だった。

センサーの構造

 研究グループでは、高効率の有機半導体を感光層に用いた光検出器と、低温ポリシリコン薄膜トランジスタのアクティブマトリクスを用いた高速読み出し回路を使用し、これらを高密度かつ相互に損傷なく集積するプロセス技術を開発。3つの機能を内蔵した世界初のシート型イメージセンサーの作製に成功した。前者は、指紋認証に必要とされる508dpiの撮像解像度を満たしており、後者は静脈認証などに利用される波長850nmの光(近赤外光)に対して高感度な「バルクヘテロ構造」の有機膜を感光層として備える。

開発したシート型センサーで撮像した静脈(左)、指紋(右)、脈拍(下)。なお、個人保護のため画像の一部に加工が施されている

 このセンサーで撮像した静脈や指紋の画像を一般的なCMOSセンサーのものと比較したところ、静脈部分のコントラスト差は5%以下にとどまっており、ほぼ同等の性能を発揮することがわかった。さらに、多点の高速読み出しが行なえるようになったことで、脈拍の分布も測定可能となった。

 今回開発されたセンサーの厚さは、高分子基板部分で10μm、シート全体でも15μmと非常に薄く軽量。加えて、フレキシブル基板上に実装されているため柔軟性が高く、ウェアラブルデバイスへ組み込みやすい。同グループでは、セルフケアや在宅医療でのなりすまし、病院でデバイスを多数導入したさいの患者の取り違えの防止などにつながるとしている。