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東北大、350℃でも動作する高耐熱性半導体素子「酸化ガリウムダイオード」を開発
2019年10月21日 14:20
東北大学 金属材料研究所の研究グループは、高い耐熱性と耐環境性を備えた半導体素子「酸化ガリウムダイオード」を開発した。
電気自動車の動力制御やIoT用センサーなど、半導体素子の需要が膨らむなかで、熱性や化学的安定性の高い半導体素子の開発が求められきた。半導体素子としてよく用いられるシリコンはバンドギャップが1.1eVと小さく、200℃以上の高温環境下では安定的な動作を行なうのが困難だった。
近年ではバンドギャップの大きな半導体として、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)に加えて、酸化ガリウム(Ga2O3)が注目されており、プラチナやニッケルなどといった金属とGa2O3を接合する研究が行なわれてきた。多くの金属酸化物が電気を通さないなかで、Ga2O3は金や銀、銅などといった単体金属に匹敵する高い電気伝導性を持つのが特徴で、pH=0の強酸やpH=14の強アルカリにも溶解しない優れた化学耐性も持っている。
しかし、ダイオードの高温動作の鍵となる界面のエネルギー障壁(ショットキー障壁)の高さが足りないために高温での動作が不安定で、高温環境下では金属電極の劣化や界面での原子拡散が引き起こされるため、劣化も進みやすいという問題を抱えていた。
今回研究グループでは、単体金属の代わりに高い電気伝導性・耐熱性を持った層状金属酸化物「PdCoO2」に着目し、Ga2O3との境界を原子レベルで制御する方法を発見。PdCoO2とβ-Ga2O3の界面を原子レベルで制御することで、接合の界面はPdCoO2のPd+と[CoO2]-が交互に積層した層状構造となっており、電気双極子を形成する。
それらの成果により、従来の1.4eVを大きく超える1.8eVのショットキー障壁の作製に成功し、350℃の高温環境下でも7桁以上のオン/オフ比を実現したという。
研究成果は自動車や工業プラントなどで用いられるセンサーなどへの応用が期待されるほか、高温で動作することから冷却機構の簡素化によるエネルギーの削減にもつながるとしている。