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「Project Athena」でユーザーの声を汲み上げたモバイルPCを提供するIntel
2019年9月25日 15:44
インテル株式会社は25日、2019年第3四半期の活動と今後の展望について、プレス向けセミナーを開催した。
セミナーにはインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木国正氏、同社 執行役員パートナー事業本部 本部長 井田晶也氏、同社 技術本部部長 工学博士 安生健一郎氏が登壇。
鈴木氏は、第10世代Coreプロセッサの発表、Project Athena、2020年東京五輪への取り組み、Intel World Openなどeスポーツの推進を第3四半期のハイライトとして紹介。
今回のセミナーは、おもにクライアント・コンピューティング事業での取り組みについて紹介が行なわれた。同社では注力分野として、プロセッサだけでなくメモリやストレージ、これからのPCに求められる“没入感”を提供するGPUにも取り組んでいると説明。プラットフォームレベルでPCを良くしていくのがIntelの役割であると語った。
次世代のモバイルPCを定義した「Project Athena」については、業界トップのイノベーターと社会学者の協力のもと、モバイルでのPC体験を引き上げる最先端のプログラムであると説明。
COMPUTEXで発表した第10世代Coreプロセッサについては、AI処理の高速化と新GPUの搭載、Wi-Fi 6対応とThunberbolt 3を1つのSoCで実現しているとした。なお、プロセッサの供給問題については第4四半期で克服し、第10世代Coreの生産備蓄を積んでいくとした。
第4四半期以降については、Project Athenaなどイノベーションの追求、ゲーミングPC市場の拡大、ビジネスPC/教育向け市場の取り組み強化を図るとした。
鈴木氏は、Intel本社では「Catalystになる」という新たなスローガンが使われ始めており、新たなビジネスや良い商品を作るための“触媒”となって社会に貢献していくとした。
井田氏は、ノートPCの利用環境は大きく変化していると説明。働き方改革によってモバイルPCの活用が進み、使い方も多様化しているほか、ネットワーク環境も4G以降大きく向上し、インフラが充実したことでモバイルワークが進んでいるとした。
国内のPCおよびタブレット市場は、2019年上半期で900万台が出荷されており、うち820万台がIntelプラットフォームを採用していると紹介。2019年はWindows 7のサポート終了と消費税増などを背景に2018年を上回る出荷の推移を見せているとアピールした。
年末に向けて搭載製品が発売される10世代Coreプロセッサについては、10nmプロセス製造のIce Lakeと14nmプロセス製造のComet Lakeの2つの製品ラインが投入されると説明。
Ice LakeではDL BoostによるAI処理の高速化で、Whiskey Lake比2.5倍の処理性能を実現したとするほか、3Dゲームも遊べるというGen11 GPU(Iris Plus)を内蔵し、低消費電力アクセラレータによって消費電力も削減されているとした。
一方Comet LakeはUプロセッサとして投入され、最大6コアにコア数が増加し、前世代比で10%以上の性能向上を実現。とくにマルチタスク処理で性能を発揮するとした。
同社では、Ice Lakeはクリエイターやゲーミング市場向け、Comet LakeはビジネスクライアントのモバイルPC向けとして位置づけており、井田氏は数量としてはComet Lakeが多数を占めるとの予測を示した。
Wi-Fi 6については、クライアント製品への投入のほか、パートナー各社から対応ゲートウェイが年内にも提供されると説明。最大転送速度の高速化だけでなく、2.4Hz/5GHzの両対応で、複数端末の接続時でも低遅延であることも特徴であると述べ、公共施設など人が多い場所で効果を発揮するとした。セキュリティも強化され、リモートワークへの支援にもつながるほか、ゲーミングでの訴求も打ち出していくとする。
安生氏は、まずProject Athenaの詳細について紹介。
Project Athenaは、人間の理解に根ざしたイノベーションを目指し、高い志向を持って活動的にモバイルPCを使うユーザーを対象にヒアリングを実施。それらのユーザーが期待するデバイスを実現するためのプラットフォームを目指すものであるとした。
需要に合わせた進化が必要であり、短期で実現できるものではなく、3~5年といった単位で実現していくものと考えているという。
Project Athenaでは複数ある需要のうち、優先度の高いものを定義しており、1つ目が「フォーカス」で、PCに向かっているときに“待つ時間”を短くすることを目的に、瞬時の起動と高い性能、応答性が要件とされている。
2つ目が「常に利用可能」なことで、いつでもどこでも使いたいという需要に合わせ、ACアダプタが携帯不要な長いバッテリ駆動時間、高速で信頼性の高い常時接続環境が必要とされている。
3つ目の「適用性」は今後の課題として位置づけられているもので、AI対応や折りたたみなど新たなフォームファクタの可能性をカバーしている点として定義されている。
具体的な体験指標(Key Experience Indicator)としては、1秒以内のスリープ復帰、電源非接続時でも高速動作する応答性、ローカル動画再生で16時間以上、無線接続状態でWebブラウジング9時間以上、4時間分の容量を30分以内で充電できるというバッテリ要件が定められている。
Intelでは、実際のユーザー体験につながるベンチマークとしてKEIを検証するツールセットを独自に作成し、認定に活用しているという。
安生氏はProject Athenaはデバイスメーカーとの連携によって行なわれる中長期のイノベーションであると紹介し、現在はイノベーションプログラムに100社超が参加。エコシステムと共同開発、マーケティングの3点で協力体制を構築しているとした。