ニュース

理研、超音波検査時の“影”を深層学習で自動検出可能に

AIがディープラーニングを用いて自動で影を学習する

 理化学研究所(理研)は、富士通、昭和大学、国立がん研究センターと共同で、超音波検査にAI技術を適応する上で大きな課題の一つである「影」の検出に関して、効率的な新技術を開発したと発表した。

 超音波検査では、超音波ビームが骨などの構造物に反射し、それより遠い場所の画像情報を取得できないために、その箇所が影として映る「音響陰影」と呼ばれる現象があり、画像の質を劣化させるだけでなく、検査そのものの精度を著しく低下させる最大の原因となっていた。

 共同研究グループは2018年度から、深層学習を用いて、胎児心臓超音波画像の解剖学的構造をリアルタイムに検知することで疾患による構造変化を検出するAI技術の研究開発を進めていた。

 しかし、今後AIの応用を進めていく上で、さらに多様な超音波検査画像を処理する必要があった。さらに、そのような検査画像のなかには診断支援AIにとって重要な臓器を隠してしまう影などそのまま解析すると誤った検知結果を導くものが含まれる可能性があった。そのため、不適切なデータに対しては、再取得を促す機能の開発が求められた。そこで開発されたのが今回の技術である。

 今回の新技術は、深層学習によるデータ学習により、影を自動検出するもの。従来手法に比べて高精度に影を検出できることを確認したという。加えて、自らデータで学習することから、技術を実装する労力が大幅に削減されるというメリットもある。

超音波検査画像の処理可否をAIが判定

 この技術の実装により、AIが検出した影が胎児心臓の異常検知に悪影響を及ぼす可能性を見いだし、超音波検査の検査者に対して「再走査の指示」を出し、誤った異常検知を防ぐことが可能になった。また、本技術は検査対象によって手法やモデルを変える必要がなく、危険性の高い影がどこにあるかの事前学習も不要であることから、従来手法に比べて、技術を実装する労力やコストが大幅に削減されるという長所も持つ。従って、成人循環器やがん検診など、超音波検査が用いられている幅広い領域で横断的に活用されることが期待できるという。

 今後は、本技術を2018年度に開発した胎児心臓超音波スクリーニングの基盤技術と統合し、異常検知性能を向上させるとともに、条件を満たさない入力を判定して再走査を指示する仕組みの構築を目指すという。