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DJI、戦車型教育用ロボット「RoboMaster S1」体験会を実施。レースや対戦でプログラミングを楽しく学べる

RoboMasterS1

 DJI JAPAN株式会社は2019年6月26日、教育用ロボット「RoboMasterS1」の体験会を東京都千代田区にある武蔵野大学附属千代田高等学院で開催した。

 「RoboMaster S1」は、DJIが主催する国際ロボット大会「DJI
RoboMaster」から生まれた戦車型の教育用ロボット。6月12日にリリースされた。「S1」は「Step1」の略称で、ロボットプログラミングやAI技術に初めてふれる人でも簡単に操作できることをコンセプトとしている。

 ライントレース、人を認識する自動追尾機能、44種類のビジョンマーカー認識、拍手認識、ジェスチャー認識などのほか、対戦やレースで遊べる。相手のロボットを自動認識して追尾することもできる。価格は64,800円(税込)。公式ストアほか正規代理店で販売されている。

戦車型教育用ロボット「RoboMaster S1」

RoboMaster S1

 「RoboMaster S1」の大きさは240×320×270mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約3.3kg。台車部分にはブラシレスモーターと、各12個のローラー付き4輪メカナムホイールを搭載しており、全方向移動が可能。最大速度は前進で3.5m/秒、後退で2.5m/秒、横移動で2.8m/秒。バッテリ持続時間は連続で35分。スタンバイ状態では約100分。

本体を構成する各種パーツ
メカナムホイールで全方向移動が可能

 本体上には2軸メカニカルジンバル上に、FPVカメラとブラスターを搭載。ブラスターからは専用のゲル弾または赤外線ビームを発射する。本体側面や正面には感圧センサーや赤外線受光センサーがついており、撃たれたことを検知できる。ピッチ角が10度を超えると弾は発射できないよう安全制御されている。カメラではmicroSDカードを挿入すると写真と1080p動画を撮影できる。microSDカードなしの場合、720p動画のみに対応する。

 機体内の通信にはCAN-BUSを採用している。6つのPWMポートを装備しており、サードパーティ製品を接続することができる。

2軸ジンバルにカメラとブラスターを搭載
通信にはCAN-BUSを採用
コントローラにはPWMポートが6つ

 プログラミングはScratch3.0とPythonに対応。モバイル端末とPCで利用できるプログラミング・プラットフォーム「RoboMasterLab」を使ってプログラミングし、ロボットへの書き込み、動作確認や操作ができる。バーチャルとリアルを即座につなぐことで、トライアルアンドエラーを繰り返すことができる。

 またFPV(1人称視点)での運転やバトルなども「RoboMasterアプリ」で楽しむことができる。カリキュラムも用意されている。バトルではスキルを自作して装備することができる。

Scratch3.0とPythonでプログラミングできる

 ロボットは組み立て式で、バラバラのパーツの状態で届けられる。メカナムホイールのローラーもバラバラとなっている。購入者は組み立てを楽しみながらロボットについで学ぶことができる。

組み立て式となっている

 単なるゲームだけではなく本格的な制御も可能な点が大きな特徴で、対戦ゲームだけでなく、自動運転アプリケーションなども組むことができる。DJIでは「成長しながら知力で打ち勝つ」ことができる「最高にクール」な教育用の高性能ロボットだとしている。

国際ロボコン「ROBOMASTER」生まれのS1

DJI JAPAN株式会社 プロダクトマーケティングマネージャー 皆川正昭氏

 DJI JAPAN株式会社 プロダクトマーケティングマネージャーの皆川正昭氏は、まずはじめに国際ロボコン「ROBOMASTER(ロボマスター)」のコンセプトを紹介した。「ロボマスター」は「エンジニアをヒーローに」というコンセプトで2013年から開催されているロボコンで、6種類のロボットによる陣取りゲームを行なう。DJIでは実機を使ったeスポーツとして位置づけており、前回は2万人の学生、400校以上の参加があったという。

S1の元になったロボマスターの歩兵ロボット

 日本からは、企業や学生の連合チームである「FUKUOKA NIWAKA(フクオカニワカ)」チームが2018年から参加している。2019年からは日本でもプレイベントを開催する予定だ。DJIでは今後も、学校やロボットクラブ、教育機関などと連携しロボット工学の発展につとめるという。

ロボット制御のおもしろさを体感

株式会社COMPASS 未来教育部 部長 木川俊哉氏

 今夏提供を目指す教材開発を進めているのは株式会社COMPASS。COMPASSはAI型タブレット教材「Qubena」を開発している会社。AIを使って学習を効率化して生まれた時間でSTEM教育を進めている。株式会社COMPASS未来教育部 部長の木川俊哉氏は、同社が開発中のプログラミング教育カリキュラムについて解説した。

ワークショップを開催しながら教育カリキュラムを開発中

 6月16日には中高生4名を対象として、「S1」を使って自動運転車を作るワークショップを行なった。ワークショップではまず自動車について考えてもらい、自動車が事故と無縁ではいられないことを意識してもらった。その解決手段の1つとして自動運転技術を捉えて、深掘りし、ワークショップの目的を明確化した。

 この後の実践では、車線検知、信号検知、車体検知、自動追従の4種類のプログラムを生徒たちに組んでもらった。最初はライントレース。Scratchを使ってプログラムを組みつつ、フィードバック制御の一種であるPID制御の基礎や特徴を学ぶ。生徒は変数を変更しながら制御の最適解を探りつつ、制御のおもしろさを体感していく。

 信号検知にはビジュアルマーカーを活用した。ライントレースのプログラムに追加するかたちで調整を行なっていく。実機を動かすことで「制御」という考え方自体になじみがない学生も、すんなり学んでいくことができたという。

PID制御
それぞれの制御の意味を学んだ

 車体検知に関しては「別のロボットが出てきたときに自動ブレーキを発動させて衝突を防止する」という課題を出した。生徒たちにはヒントだけを与えて、理想の距離で停止できるように試行錯誤しながらプログラミングしてもらったという。自動追従は一定速度で人またはS1に追従するプログラムを作った。生徒たちの飲み込みは非常に早く、トライアル&エラーを繰り返しながらも、予想以上のスピードで実現することができたと木川氏は語った。

 最後に、学んだことを踏まえて自動運転技術を考え直してワークショップは締めくくったとのこと。生徒たちからは「試行錯誤してできたときの達成感がおもしろかった」、「自由度が広い」、「全方向移動を使ったゲームを作ってみたい」、「追従で荷物を運ぶことにも使えそう」、「ほかの機能でも遊んでみたい」といった感想があった。

 木川氏自身も、S1の外見が良く生徒たちの食いつきが非常に良かったこと、プログラミングのUI/UXが優れていること、そして本格的なロボティクスが学べるところの3つがそろっているところが非常に良いと感じたと述べた。「教材としての可能性は非常に高い」という。

ワークショップの様子。生徒たちの食いつきが良かったとのこと

Pythonを学べるプログラミング教材としてのS1

武蔵野大学附属千代田高等学院 教諭 ラムジー・ラムジー氏。ロンドン出身

 記者会見会場となった武蔵野大学附属千代田高等学院で、数学と情報を担当する教諭であるラムジー・ラムジー氏は、「S1」を使ったゲームから学べることについて述べた。ラムジー氏は、eスポーツ部の担当でもあるという。実際に生徒たちと「S1」を1カ月くらい使ってみたところ、生徒たちの興味を引くことができ、非常に楽しんでもらえることができるデバイスだと感じていると述べた。プログラム経験がない生徒もすぐに扱えたそうだ。

生徒たちからは「かわいい!」という反応だったとのこと

 教材としては、カメラやマイクなど多くのインプットデバイスがあり、ブラスターや本体移動などアウトプットデバイスがあること、また論理的な問題解決の考え方、PCからのコマンド操作などを教えやすい点を評価していると語った。またAIの基本を学びやすいことも良いという。

 プログラミングについてはScratchだけでなくPythonが使えることを評価した。Pythonは教えるほうも教えやすいという。条件分岐や変数、アルゴリズムなどプログラミングで最初に学ぶ必要があることをロボット実機で教えることができる点が優れていると述べた。

Pythonを学べる点が高評価

 今後は、ロボット同士の対戦、レーシングルートの最適化、脱出ゲームなどをアプリケーションとして、プログラミング教育をさらに進めたいと述べた。人間ができない動きをプログラムすることで、eスポーツの教材としても使っていきたいとのこと。

今後はとくにラムジー氏が好きな「脱出ゲーム」をやりたいという

池澤あやか氏もオススメ

タレント、ソフトウェアエンジニア 池澤あやか氏

 最後にタレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやか氏は、実際にS1本体を組み立てるところから体験。なんの説明もなくキットを渡されたが、約2時間程度で組み立てられ、1から組み立てることでロボットの仕組みをより深く学ぶことができたという。ツールが非常にわかりやすくて、ビジュアルマーカーを認識後に写真を撮ってくれるプログラミングなどを簡単に組むことができ、最初に扱うものとしては非常に良いのではないかと述べた。

およそ2時間で組み立てられたとのこと
チュートリアルが非常にわかりやすかったという。なお近日中に日本語化される予定

 また7つのロボットを使ってチーム対戦するロボマスター大会に比べて、S1はどの年齢層でも扱えるので、まずこれをさわることでロボマスターに参加したいと考える子供たちも出てくるのではないかと述べた。

番号を見せて認識させることでそれぞれ違うアクションを起こさせるプログラムを組んだ
池澤氏が組んだプログラム

周回レースとバトルロイヤル形式のシューティング対戦の体験会

S1実機操作体験会

 説明会終了後、S1実機を用いた体験会も行なわれた。操作体験は2種類。画像認識機能を用いて、箱に貼られた番号を順番に認識しながら周回レースを行なうものと、赤外線を用いたS1同士のシューティングだ。基本的にどちらもタブレットを見ながら操作するFPS方式だ。

 オプションでジョイスティックとマウスも使えるが、筆者が体験したデバイスは不調で動かなかったので、タブレットのみで操作した。実機からのカメラ画像を見ながらの操作となるが、時間遅れもなく、すぐに慣れて、快適に操作することができた。

タブレットを使った実機操作体験
会場内のマーカーを認識しながら周回するレースの様子

 シューティングでは撃たれすぎるとライフがゼロになるので、ハートマークを撃って自機ライフを回復させたり、ランダムにオプション機能が発揮できるようになる「?」マークを撃ちながら、会場内を走りまわって周りのS1と戦う。ブラスターは照準を的に向けて押すだけで発射できるので操作は簡単だ。ただしシューティングゲームではおなじみのように、撃ち続けると砲身が過熱して撃てなくなるように設定されているので、障害物の陰などに隠れてしばし待たなければならない。シューティングゲームを多少やっている人間ならすぐに慣れて楽しむことができるだろう。

周回体験時は最下位だった筆者だが、シューティング体験では1位を取れた

 このほか、実体弾となるゲル弾発射体験コーナーや、自動認識結果をもとに機体をプログラミングしたデモコーナーなどがあった。ゲル弾は4時間くらい水につけて、表面を柔らかくしてから用いる。ロボット側面の感圧センサーに当てると、上部のインジケータが減っていく。

ゲル弾。タピオカのような大きさ
水を4時間程度吸わせたあとで用いる

 画像認識による自動機体操作は、今回は事前にプログラムされたものでの体験。数字のカード3枚を認識させると90度旋回、その方向においてある数字カードのなかから、先ほど認識した数字カードを自動的に探して、赤外線で撃っていくというものだった。このような画像認識とそれに基づいたロボット制御は「ROBOMASTER」発のロボットならではと言える。

プログラミングコーナーでは右側カードの数字を認識して、左側の該当カードを自動で射撃するというデモが行なわれた