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Intel、FPGA部門とネットワーク部門を統合した新事業部門を設立

左からインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木国正氏、米Intel 上席副社長兼ネットワーク&カスタムロジック事業本部長 ダン・マクナマラ氏

 米Intelは13日、同社の「プログラマブル・ソリューションズ事業本部(PSG)」と「ネットワーク・インフラストラクチャー事業本部」の2つの事業部門を統合し、「ネットワーク&カスタムロジック事業本部(NCLG)」として発足したことを発表した。

 両部門の統合により、XeonプロセッサSoC/FPGA/eASIC/フルカスタムASIC/ソフトウェア/IP/システムをはじめ、クラウドやエンタープライズ、ネットワーク、組み込み分野、IoT市場に向けたソリューションまで、多彩な製品ポートフォリオをシームレスに利用できるようにすることで、企業に最大限の価値を提供可能となるとしている。

 事業責任者には、PSGを率いていたダン・マクナマラ氏が就任する。


 20日にインテル株式会社が国内で開催した報道向けセミナーでは、同社代表取締役社長の鈴木国正氏、米Intel 上席副社長兼ネットワーク&カスタムロジック事業本部長 ダン・マクナマラ氏らが登壇し、新事業部門の発足およびIntelの第2四半期における取り組みなどについて説明を行なった。

 鈴木氏は、Intelでは、爆発的な増加を見せるデータのビジネス活用を見込み、PC中心からデータ中心の企業へとシフトしていると説明し、2021年以降は、次世代コミュニケーションからコンピューティングまで、同社のあらゆる力を世界の発展に向けていくことを目指していると説明。

 従来のPC中心の市場では同社が高いシェアを獲得しているが、堅実な成長は進んでいるものの、逆に急激な伸長も起きにくいことを指摘し、ビジネスとして成熟していると述べ、成長産業への展開として、データ中心の企業へと移行しているとした。

 同社では、データ社会のインフラストラクチャに注力し、Ethernetやシリコンフォトニクス、Omni-Pathといった製品による高速な移動、Optane DC SSDやパーシステントリメモリなどのデータ保存、XeonプロセッサやNervana/Movidius、FPGAなどの製品によるデータ処理領域をカバーし、ソフトウェアとシステムレベルでの最適化を提供するとした。

 現在、テクノロジーの変革として、人工知能(AI)、5Gネットワーク、オートノマス(自動化)システムの3大トレンドがあるが、日本でもAIの活用は進んでおり、2019年夏にはAI戦略2019がまとめられる予定であると紹介。5Gについては、楽天モバイルがIntel製品を活用した完全仮想化されたクラウドネイティブネットワークの構築を目指しており、世界でも類を見ない新しい取り組みが行なわれているとした。

 また自身の代表取締役社長就任後に掲げた、「新規事業機会の創出」という目標については、達成に向けた取り組みとして、コーポレート戦略チームを立ち上げ、エネルギー/製造/サービス/スマートシティ/コンシューマの各重点産業分野における具体的な案件の調査を行なっているほか、「製造業の『現場力』革新フォーラム」および「インテルエネルギーフォーラム2019」を7月に開催予定であると説明した。

 同氏は、競合他社のシェアの拡大について、競合の競争力の高まりは認識しており、製品の開発を進めているとしたほか、CPUの供給不足について触れ、2018年からの増産に向けた投資が2019年第3四半期、第4四半期で成果として得られ、製品の生産総量は十分なものになると説明。ただし、パートナー各社の製品需要に応えた供給を行なえるかどうかがこれからのチャレンジになると述べた。

第2四半期ハイライト
データ量は爆発的に増加
目指す世界
プロダクトリーダーシップの拡大
データ社会のインフラに注力
テクノロジーの変革を牽引
日本でも応用/成長が進むAI
クラウドアーキテクチャを活用した5Gネットワーク
新規事業機会の創出
具体的な市場機会獲得に向けた取り組み

 続いて登壇したマクナマラ氏は、Intelのデータ中心への変革について、AIやクラウドコンピューティング、ネットワークとエッジといった業界のメガトレンドを加速させているのはデータであると述べ、従来のPC中心市場は2023年で680億ドルの市場規模と予測されているのに対し、データ市場は2,200億円規模と非常に大きな市場であると説明。

 とくにPC市場ではシェアを獲得しているのに対して、データ市場ではまだシェアは小さいことを挙げ、同社にとって大きなビジネスチャンスがあるとアピールし、同社史上もっともエキサイティングな時期に入っているとした。

 PSGはもともとFPGAを開発していたAlteraの買収後に立ち上げられた部門だが、マクナマラ氏もAlteraから移籍してPSGを率いてきた。同氏は、PSGは2015年の買収以降、3年間の年次平均成長率9%を記録し、非常に好調な業績で推移してきたが、これはIntelの持つ最高レベルのエコシステムを活用してきた結果であると語った。

 同氏は、FPGAでは並列化による処理の高速化が行なえる点や、エッジ実装による処理の低遅延化が見込めるため、IoTの活用も進むと説明。ニッチなファンクションのアクセラレータとして、汎用演算のためのXeonプロセッサと組み合わせ、スマートNICやAIの推論処理といったものをオフロードするソリューションも紹介。

 また、eASICも傘下に加えたことで、FPGAで製品を開発/市場投入を行なったのち、シェアを抑えた段階でeASICへ切り替えて低コスト/低消費電力化を図るといったことも可能になったとした。

 さらに、今回NCLGとしてネットワーク向けの技術資産も1部門に統合されることで、より幅広い製品ポートフォリオを提供できるようになるとした。

 楽天の展開するクラウドネイティブな完全仮想化ネットワークについては、日本電気株式会社 シニアエグゼクティブの渡辺望氏が登壇し、3.7GHz帯Maasive MIMOアンテナRU装置の開発に、IntelのFPGAを活用していると説明。

 楽天はネットワークを完全仮想化5GオープンvRANとするため、マルチベンダーで構築することを目指しており、NECではOpenインターフェイス標準への柔軟な対応や、技術の成熟度に合わせeASICへマイグレーションが可能である点などを評価してIntel FPGAを選択したと述べ、全体の回路の効率化と設置容易性/OPEX低減に貢献する小型軽量で低消費電力を実現するべく、Intelの技術的協力を得て装置を開発しているとした。

 また、このOpenインターフェイス対応RU装置については実績をグローバルに展開していきたいと語った。

変革期にあるIntel
データが業界のメガトレンドを加速
ターゲット市場の拡大
PSGの戦略
業績と採用事例
NCLG発足
Intel初のデータセントリック製品ポートフォリオ
楽天のクラウドネイティブ5Gネットワーク
日本電気株式会社 シニアエグゼクティブ 渡辺望氏
Intel FPGAを活用したNECの開発する楽天モバイル向けMassive MIMOアンテナRU装置
Intelが提供するエンドツーエンドソリューション