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米バークレー研究所、100万分の1秒単位で原子を観測できる電子顕微鏡システム

4Dカメラシステムに組み込まれているコンピュータチップ Credit:Thor Swift/Berkeley Lab

 米ローレンス・バークレー国立研究所は2月21日(米国時間)、世界最速の電子顕微鏡システムを構築したことを発表した。

 電子顕微鏡は、可視光線を照射して対象を観察する光学顕微鏡と異なり、電子線を当てることで、より高い分解能でサンプルを観察できる顕微鏡システム。電子顕微鏡では、電子ビームがサンプルと相互作用するときに生成される情報をもとに対象を観測するが、従来のシステムでは、観測できているのはそのうちの一部だけであった。

 今回バークレー研究所が構築したシステムでは、新開発の電子検出器を用いることで、相互作用における全情報を捉えることが可能であるとしている。

 電子検出器は、電子ビームでサンプルを走査したさいに、サンプルから散乱する電子に基づいて情報を捕捉することで、サンプルの完全な画像を生成する。新開発の「4Dカメラ(Dynamic Diffraction Direct Detector)」と呼ばれる検出器は、100万分の1秒単位で原子スケールの画像を記録でき、既存の検出器の60倍という超高速な記録が可能であるという。

 その高速画像生成の性能から、検出器は毎分4TBという膨大なデータを生成するため、システムは国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)のスーパーコンピュータ「Cori」と直結され、約6万本のHD映画の同時視聴に相当するという、400Gbitの膨大なデータストリームを処理するため、接続には100本の光ファイバーケーブルが用いられている。

 バークレー研究所では、この新システムによって、バッテリ破損につながるリチウムの観察など、サンプルのわずかな変形や動きを明らかにできるだろうとしている。

4Dカメラを搭載した透過型電子収差補正顕微鏡(TEAM 0.5) Credit:Thor Swift/Berkeley Lab
A New Detector – the 4D Camera – Reaches a New Frontier in Speed