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エプソン、大容量インクタンクの出荷計画を下方修正

~成長戦略は維持、ラインナップの拡充も

 セイコーエプソンは、大容量インクタンクモデル(エコタンク)の2018年度の年間出荷計画を下方修正した。

 1月31日に行なわれた、2018年度第3四半期(2018年4月~12月)の業績発表において明らかにしたもので、当初計画の950万台から920万台へと修正した。また、インクカートリッジモデルも、700万台から650万台へと修正。インクジェットプリンタ全体では、1,650万台の計画を1,570万台へと修正した。

 セイコーエプソン 経理管理本部長の瀬木達明取締役執行役員は、「大容量インクタンクモデルは、中国や中南米をはじめとした一部新興国市場における経済活動の低下の影響を受け、増加のスピードが鈍化。とくに、中国では、チャネルに残った在庫の解消にも取り組み、それにともない、当社からの出荷台数を減らしたことも影響した。その結果、第3四半期は計画に対して数量未達になった。第3四半期がもっとも低い成長率になった」と説明。

 「だが、市場停滞の影響を受けながらも、成長は継続しており、修正後の計画も前年比18%増になる。アジアパシフィックでは大容量インクタンクモデルの比率が上昇しており、今後も拡販施策を実行していく。先進国においても本気度を高めており、先進国において大容量インクタンクモデルが占める割合は、この1年で倍以上に増えている」と発言。

セイコーエプソン 経理管理本部長の瀬木達明取締役執行役員

 「インクカートリッジモデルは、採算性が低いのに加えて、利用者に対しても、インク代が高くプリントすることを躊躇する状況が生まれるなど、プリンティングの価値を訴求しにくい。大容量インクタンクモデルを中心としたビジネスにしっかりと切り替えていきたい」と述べた。

セイコーエプソン 経理管理本部長の瀬木達明取締役執行役員

 エプソンが、大容量インクタンクモデルの販売で重視しているのが、レーザープリンタからの置き換え需要の顕在化だ。

 「大容量インクタンクモデルは、大きな成長を実現してきたとはいえ、オフィスのプリンタの大多数をレーザープリンタが占めている。エプソンが目指す、レーザープリンタをインクジェットプリンタへと置き換える戦略は途上であり、これからが本格的な置き換えのスタートである。

 2019年度は、先進国でもモノクロタイプの大容量インクタンクモデルを投入するなど、店舗や小規模オフィスでのプリント需要獲得に向けてスタートを切った。これまでも入札案件での獲得も進んでいる。新たなビジネスチャネルにも乗り出したい。

 大容量インクタンクモデルの量販店での展示を見ても、これまではインクジェットプリンタのコーナーに置かれていたが、レーザープリンタのコーナーに設置する例が増加。大量印刷には大容量インクタンクモデルが適していることを訴求する動きが広がっている。こうした動きを加速させたい。

 レーザープリンタから置き換えを進めている大容量インクタンクモデルは、販売状況を見きわめながら、第4四半期(2019年1月~3月)も拡販施策を実施する」と語った。

 さらに、「オフィスに適した大容量インクタンクモデルのラインナップは、まだ不十分であり、この流れを加速させるためには、ラインナップの充実を進めていく」とも述べた。

 現在、エプソンでは、全世界で、40モデル以上の大容量インクタンクモデルをラインナップ。競合他社を寄せつけない品揃えだが、これをさらに拡大する姿勢をみせた。

 一方、インクカートリッジモデルは、価格維持施策を実施したことにより販売台数が減少。第3四半期は計画に対して未達になった。インクの販売も、本体稼働台数の減少により減少した。

 「新興国の一部においては、為替の影響があり、それにあわせて販売価格を引き上げたが、競合他社ではそうした施策を取らずに利益を度外視した販売。値差が広がり、それによって、販売台数が想定よりも減少した。市場全体が停滞しているなかで、価格施策を維持するが、第4四半期は、一部地域では、台数を維持する施策も考えたい」とした。

 第3四半期の事業利益の変動要因として、数量変動として41億円のマイナス影響があったものの、インクカートリッジモデルの価格維持施策と、大容量インクタンクの構成比が上昇したことなどにより、価格変動要素として65億円のプラス影響があったという。

 エプソンでは、インクカートリッジモデルについては、インクで収益を得るという仕組みを導入している。本体を生産した段階で赤字を計上するという処理を行なっているため、インクカートリッジモデルの販売、生産台数の減少によって、利益が増加している。

 また、大容量インクタンクモデルは、生産時点で黒字計上する処理を行なっており、全体の約6割を大容量インクタンクモデルが占めはじめたことも、収益増につながっている。同社では、プリントヘッド部品における在庫評価減の計上方法の変更も検討しており、これを、2018年度期末に反映するという。

 セイコーエプソンでは、2018年度通期の業績見通しを下方修正。売上高は10月30日の公表値に対して、200億円減の1兆700億円、事業利益は150億円減の650億円、税引前利益は150億円減の610億円、当期純利益は100億円減の500億円とした。プリンタ事業の通期売上見通しは、150億円減の4,960億円とした。

 「下期を通じて、大容量インクタンクモデルの販売台数が計画よりも減少するとみている。プリンタ事業の売上高150億円の下方修正のうち、約4割が中国市場の減速によるもの。また、3割が南米をはじめとする新興国での通貨下落や経済活動の減速の影響。1割が為替影響。残りの2割がインクカートリッジモデルの販売抑制などの影響である」とした。

 一方、1月30日に、2018年度(2018年1月~12月)の業績を発表したキヤノンマーケティングジャパンは、インクジェットプリンタやデジタルカメラを含む、「コンスーマ」の売上高が前年比9.6%減の1,502億円、営業利益が同42.1%減の73億円と減収減益になったことを明らかにした。

 キヤノンマーケティングジャパンの松阪喜幸取締役専務執行役員は、「ビジネス向けインクジェットプリンタが好調に推移したものの、家庭向けインクジェットプリンタは、年賀状の減少などに伴う市場の低迷によって減収。インクカートリッジも、本体稼働台数の低下に伴うプリントボリュームの縮小によって、売り上げが減少した」と述べた。

 2018年度のインクジェットプリンタの販売台数は前年比10%減。2019年度も、インクジェットプリンタの業績は減少すると見込んでおり、前年比5%減の見通しを公表している。

 2021年までの中期経営計画を発表したキヤノンマーケティングジャパンの坂田正弘社長は、「インクジェットプリンタは、ビジネス機と大容量インクタンクのラインナップ強化によるビジネス領域の売上拡大」、「ECシフトなどによる効率的な販売体制の構築」、「高単価、高プリントボリュームのホーム機拡販による収益性の向上」を中期的な計画に挙げた。