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MIT、Wi-Fiを電力に変換する安価で柔軟な素材を開発

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、レクテナでWi-Fi信号を電力変換する、柔軟かつ安価な新素材を開発したと発表した。

 レクテナは電磁波を直流電流に変換するアンテナのことで、ワイヤレス充電などに用いられている。今回MITが開発した新素材のレクテナでは、一般的なWi-Fi信号(約150μw)で約40μwの電力に変換できたという。これは、LEDやシリコンチップを駆動するには十分な電力であり、モバイルデバイスや大小のIoT機器、医療機器――体内データを収集する錠剤など――としてさまざまな分野で応用が可能としている。

 基本的にレクテナでは交流を直流に変える整流器の素材として、シリコンやヒ化ガリウムが使用されているが、これらの素材は高価で柔軟性に乏しく自由な加工が難しい。今回研究者らは「二硫化モリブデン(MoS2)」の平面素材を使用。原子3個ほどの厚みしかなく、半導体のなかでももっとも薄いものだ。

 二硫化モリブデン(MoS2)は、特定の化学薬品にさらすことで原子が再配置され、スイッチのように機能するため、半導体から金属材料への変化を強制できる。これにより、半導体と金属を接合するショットキーダイオードとして機能する。

 この新素材を平面半導体として金属相接合することで、直列抵抗と寄生容量を同時に最小化でき、原子的薄さの超高速なショットキーダイオードを作成した。大面積をカバーするロール・トゥ・ロール工程での製造も可能で、その汎用性の高さから、さまざまなデバイスにバッテリを搭載させずに受動的に電力を供給させることができる。

 新素材のレクテナは、Wi-Fiの出力にもよるが、現状の変換効率は最大で40%程度とのことで、一般的なWi-Fiを使った場合では約30%程度という。ちなみに、シリコンまたはヒ化ガリウムを使用した場合の変換効率は50~60%程度となっている。

 今後は実用化に向けて変換効率の改善や、さらに複雑なシステムの構築を検討しているという。

【お詫びと訂正】初出時に、単位を「mW」としていましたが、「μW」の間違いです。お詫びして訂正させていただきます。