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東芝、600mの長距離通信とモジュールの小型化を両立したBluetooth SoC
2018年9月10日 15:02
株式会社東芝および東芝デバイス&ストレージ株式会社は7日、世界最高となる113dBのリンクバジェットと通信モジュールの小型化を両立したBluetooth low energy (LE) Ver.5.0規格準拠のSoC開発したと発表した。
従来製品の約4.6倍(600m)の長距離通信を実現し、同クラスの通信距離を持つSoCに比べて、モジュールに搭載する部品数を半分にするという。同社では、開発された技術を採用した、Bluetooth Ver.5.0規格の製品「TC35680FSG(NVM搭載)/TC35681FSG(NVM非搭載)」の量産出荷を今月から開始する。
Bluetooth LEは、低消費電力を特長とした無線通信の規格で、5.0では通信距離の長距離化が図られている。このため、従来規格よりも送信電力を増やす必要があり、送信機の電源電圧を上げるか、負荷インピーダンスを下げるかが求められる。
電源電圧を上げる場合はモジュールが大型化してしまい、負荷インピーダンスを下げる場合は、受信時に受信電力が送信機側に流れ、通信距離を伸ばせないという課題があり、モジュールの小型化と長距離通信の両立が困難となっていた。そこで、同社は送受信インピーダンス整合技術を開発。両立を実現した。
送信機の負荷インピーダンスを下げたさいの受信性能劣化を避けるため、受信時に送信機の負荷をスイッチで切り離し、受信電力が送信器側に流れないようにすると、受信信号に雑音が混入してしまい、受信感度が低下してしまう。
従来は、この雑音に対して送信機側のインピーダンスを小さくし、送信機側に流すことで受信感度を向上させていたが、受信機側のトランスを用いたインピーダンス整合回路に、雑音除去フィルタを搭載することで問題を回避したという。
また、通常インダクタを用いたインピーダンス整合回路に雑音除去フィルタ機能を追加すると、コイルの線が細く、巻き数が多くなるため、損失が大きく受信感度が劣化するが、トランスを用いたことで、コイルの巻き線が太く(巻き数が少ない)、損失を小さく抑え、受信感度を向上。なお、インダクタのチップ面積の大半は配線禁止領域のため、トランスによる送受信機全体の面積増加は1%程度に抑えられている。
同社では、今後も本技術をはじめとした無線通信関連の技術開発を促進し、IoT機器の利便性向上に貢献していくとしている。