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Samsung、2020年にEUV露光による半導体量産を開始

~7nmで“某社の次世代GPU”を製造か? SFF Japan 2018レポート

Samsung Foundry Forum 2018 Japan

 Samsung Electronicsは4日、都内にて「Samsung Foundry Forum 2018 Japan (SFF Japan 2018)」を開催した。

 同フォーラムの国内開催は2回目で、今回は国内半導体メーカーやエコシステムパートナーなど60超の企業から約300名が参加。フォーラムに先立ってプレスブリーフィングも開催され、以下、フォーラムの基調講演の模様とブリーフィングの内容を交えてお伝えする。

もっとも信頼されるファウンダリへ

Samsung Foundryプレジデント兼事業部長 ES Jung氏

 Samsung Foundryは、2017年にSamsung ElectronicsのシステムLSI事業から分離し、独立したファウンダリ事業部門となった。

 フォーラムの基調講演に登壇した、Samsung Foundryプレジデント兼事業部長のES Jung氏は、同社では「もっとも信頼されるファウンダリへ」というスローガンを掲げていると説明。

 Jung氏は、顧客の半導体設計を受け取り製造を行なうファウンダリ事業では、当然、信頼が重要になると語り、半導体は、スマート&コネクテッド/オートメーションによって牽引される、第4次産業革命を支えるものになるとした。

 ファウンダリというビジネスは、顧客のアイデアを実現するものと述べた同氏は、同社では顧客の将来のため技術を提供していくとし、世界で初めて3nmプロセスでFinFETに換わり「Gate-All-Around (GAA)」による製造を行なうと発表したこと、従来のArF液浸ではなくEUV(極端紫外線)によるリソグラフィ(露光)による半導体生産を、同じく世界に先駆けて実現したことをアピールした。

2017年に“ピュアプレイ”ファウンダリとして事業を開始したSamsung Foundryでは、「もっとも信頼されるファウンダリへ」というスローガンを掲げている

7nm以降はすべてEUVへ。“次世代GPU”はSamsung Foundryで製造?

 プレスブリーフィングに登壇した、Samsung Japan副社長のChangsu Lee氏は、Samsung Foundryの半導体プロセスロードマップを示し、2018年内にEUVを用いた7nmプロセス、8LPP(8nm Low Power Plus)の改良版「8LPU」のリスク生産を開始し、2019年にEUVで5nm/4nm FinFET、18FDSのリスク生産、2020年にEUVで3nm GAA Fetプロセスのリスク生産を行なうと説明。

今後の半導体プロセスロードマップ

 同氏は、7nm以降の先端プロセスではEUVによる生産を実施し、EUVは当初の計画通り進行中であり、2019年にもEUVによるプロセスの量産体制に入るとして、EUVの導入はSamsungがリーダーだとアピールした。

 5nmと4nmについては、(元となる7nmからさらに)FinFETに最適化したものであると説明し、同社としては、4nmがFinFETで製造する最後のプロセスになるという。

 2017年時点では、3nmではなく4nmプロセスでFinFETからGAAへ切り替えるとしていた(Samsung、FinFETからGAA FETへの移行を3nm世代へ後ろ倒し)ことについては、同社が4nmで目標としている性能/電力効率に到達させるには、GAAが必要になると考えていたが、実際にはFinFETで目標値をクリアできたために、GAAは3nmで投入するかたちになったと説明。同氏は、「むしろ、3nmプロセスでGAAの投入時期そのものは前倒しになっており、当初の計画から遅れたわけではない」と強調した。

 8LPUについては、ピンピッチの違いなど8PPよりもEUVへの最適化を図ったものであるとし、2世代目にあたる18FDSについては、RF/eMRAMの結合などがフィーチャーであると説明が行なわれた。

プレスブリーフィングで質疑応答に対応した、Samsung Foundry副社長Ryan Lee氏

 このブリーフィングでは、プロセス技術に関連して1つ興味深い発言があった。質疑応答で「EUVによる7nmプロセスの想定アプリケーションは何か」という質問に対し、モバイルやネットワーク、オートモーティブに加えて、「“GPUを含む”HPC (High-Performance Computing)」という回答があったことだ。

 現在、HPC用途をサポートしたディスクリートGPUを開発(または開発表明)しているのは、NVIDIA、AMD、Intelの3社が主だった企業となる。

 AMDは2018年8月末、次世代CPU「Zen 2」およびGPUアーキテクチャ「Navi」について、TSMCの7nmプロセス(液浸露光)で生産を行なうと発表し、同時に大手ファウンダリのGLOBALFOUNDRISが、7nmプロセス開発の無期限保留を表明している。

 TSMCについて考えると、スマートフォン向けSoCなどでの需要もあり、GPU大手複数社をカバーできるほどに7nm製造ラインに余裕があるとは考えにくい。そうなると、7nm世代を採用するであろう某社の次世代GPUが、Samsung製造になるのではないかと推測できる。なおIntelは自社で半導体製造部門を抱えているため、ファウンダリにGPU生産を委託する必要がない。

 もちろん、これは筆者の憶測に過ぎず、まったく新しい企業からHPC向けGPUが登場する可能性もあることをお断りしておくが、今後の動きが気になるところだ。

EUV専用ラインを2019年末までに建設

 EUVについては、同氏はすでに機材(NXE3400)が10nm以降のプロセスを製造している韓国 華城の生産拠点(S3ライン)に導入されており、2018年9月時点で日間ウェハ生産数(WPD)は量産目安を超えているという。

 そのうえで、S3ラインの建屋の隣に新たなラインを建設中で、こちらはEUV専用ラインとなると説明。こちらは2019年末までに完成予定で、EUVでの本格的な量産は2020年を予定しているとのことだ。

EUV露光による半導体量産に向けた動き
S1~4までのFabに加えてEUV専用ラインの建屋を建設中

 特定技術向けの12インチ/8インチウェハでは、eFlash+RF/IoT、電源、ディスプレイドライバ、CMOSイメージセンサー(CIS)、指紋センサーといったアプリケーションをカバー。パワーディスクリートやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)なども規格段階にあるという。

 パッケージ技術では、モバイル向けのlFOPLP-PoP、HBM2などの用途向けの2.5D技術I-Cubeがすでに提供可能で、2019年にはTSVを活用しホモジニアスインテグレーションを実現する「3D SiP」も提供可能になるとした。

 そのほか、MCUに統合できる安価で安全なセキュアストレージソリューション、SIMプロトコルを統合しても安全性を確保できるセキュリティソリューションなども紹介された。

特殊用途向けの半導体生産
パッケージソリューション
同社のエコシステム「SAFE」
IoTからHPCまであらゆる分野をカバー
セキュリティソリューション