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劇場で観るVR映画はじまる。VAIOがHMDのカスタマイズとソフト開発を担当
2018年6月26日 18:39
VAIO株式会社、東映株式会社、株式会社クラフターの3社で構成されるVR映画の共同事業「VRCC」は、7月2日よりVR映画の先行体験上映を開始することを発表した。映画館の施設をそのまま使用しての、多人数同時鑑賞可能なVR映画興行は今回が日本初という。
先行体験上映は東京都新宿区にある「新宿バルト9 シアター7」にて、以下の3コンテンツが放映される。
チケット料金は子どもから大人まで一律1,500円となっている。上映時間はガイダンスを含む約30分間。
VAIOがカスタマイズした映画館向けVR HMD
体験上映前となる6月26日に3社は「VRCC事業概要・コンテンツ発表会」を開催し、メディア向けにVRCCの取り組みについての説明や、上映されるコンテンツの体験視聴などを実施。また、アイドルグループSTU48によるアピールなども行なわれた。
3社は昨年(2017年)の12月にVRCCを立ち上げており、VAIOはハードウェアの調達や最適化、ソフトウェア/ネットワークのシステム開発といったVR環境の構築、VR事業のソリューション販売や保守などを担当。東映はVRコンテンツの調達や自主制作幹事を、クラフターは同社が得意とする3DCGアニメーションを活かしたコンテンツ制作しつつ、東映と同じくコンテンツ調達/自主製作も行なうといった役割をになっている。
東映で取締役企画調整部長を務める村松秀信氏によれば、2009年に3D映画「アバター」が大ヒットし、3D映画は順調に伸びるかに見えたが、2011年の東日本大震災から映画館への入場者数が伸び悩んだ。ただ、それ以後は映画以外のコンテンツを上映するODSやアニメ映画のヒットによって、入場者数はまた右肩上がりになっており、最近では4DやIMAXといった付加価値を持たせた上映も好調という。
VRCCでは、VR映画を既存の映画館で提供することを考えており、映画のコンテンツとして、ユーザーに新たな体験をもたらすことを目指している。とはいえ、VR向けの視聴コンテンツはコンシューマ向けのVR HMDでも利用可能だ。なぜ映画館での上映にこだわっているかと言えば、個人利用でのVR HMDでは映画館でしか味わえない体験が欠けているからという。
クラフターの代表取締役社長 古田彰一氏による説明では、これまでのVR HMDのを映画館で利用することでヘッドフォンから解放されつつ、設備の整った上質な音響効果を楽しめることが大きな違いになるという。さらに、映画だけでなく、音楽ライブを観客が実際のライブのように一体となって楽しめるといった違いも挙げた。
また、VAIOの執行役員副社長 赤羽良介氏は、今回VRCCが提供するVR HMDがスタンドアロンタイプで大がかりな装置が必要なく手軽に扱えることが上映での導入のしやすさにつながると説明。スペックも高く、6DoFに対応し、解像度は2,880×1,600ドット、リフレッシュレートは90Hzとなる。
このVR HMDはVAIOが開発したものではなく、中国Picoが提供するもので、形状などから「pico neo」と思われる。ただ、VRCCが利用するにあたってVAIOがカスタマイズを施しており、コンテンツの盗難防止、児童機能、誤動作防止機能などが導入されているほか、ソフトウェア面に関してはVAIOが主導して設計している。
VRCCでは今回のソリューションをオープンプラットフォームで提供していく考えで、VRコンテンツの制作や公開、劇場への導入、VR上映イベントの開催などを実施したいという企業やアーティスト、クリエイターなどに、ぜひ利用してほしいと訴えた。
メディア向けにも「夏をやりなおす」の体験視聴があり、筆者も試してみた。解像度が2,880×1,600ドットと高いこともあってか、何度か試したことがあるHTC VIVEよりも映像が精細に表示されており、ケーブル類がないこともあってかなり使いやすい印象だった。頭部に装着するさいも、HMDの後部にあるバンドを簡単に締めたりゆるめたりできるため、VR HMDを使ったことがない一般の方にも装着はしやすいと感じた。
若干重心が前よりになっている点が気になるものの、VRらしさは十分に堪能でき、自由度の高い視界の体験は間違いなくVRならではのもの。また、途中で浮遊感を感じさせるような演出もあるわけだが、これについてもきちんと“落ちる”感覚が味わえる。コンテンツは順次拡充していくとのことなので、今後の展開に期待したい。