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NEC、「動画でも認証率トップ!」を誇る顔認証技術

 NECは、動画の認証性能が米国国立標準技術研究所(NIST)で1位となったと顔認証技術の説明会を開催した。

 動画認証は静止画認証に比べ、本人が意識していない状態で認証することが多く、顔を背けた状態での認証など技術的に難しくなることが多い。

NECデータサイエンス研究所 主席研究員 今岡仁氏

 NECの技術は、空港の乗客ゲートのように1人ずつ歩いてくる環境でも、競技場のように大勢の人がいる環境でも低いエラー率を達成した。「どちらか片方で低いエラー率を達成しているベンダーはあるが、1つのエンジンで、好環境、悪環境のどちらでも圧倒的に低いエラー率を達成しているのはNECだけ。多様な実用環境に強い」(NECデータサイエンス研究所 主席研究員 今岡仁氏)。

 この技術を使ったビジネスとして、現在は警察や入国管理用に顔認証技術を使ったソリューションを提供している。が、価格的に高価であることから廉価版キットの提供を開始しており、さらに2017年上半期中に、クラウドベースのシステムも提供する計画だ。

 提供先としても、イベントの入退場、決済などでの活用、製造業における工場やPCの入退場やログオン管理、メディア向けに蓄積した画像の検索や出演者確認、文教・科学分野で試験場や教室での本人確認、金融機関や小売店で顔決済、物流やサービス業で待ち時間計測、ロボット個人識別など顧客セグメント拡大も進めていく。

 顔認証ソリューションを含むパブリックセーフティー分野の売り上げは2015年度で420億円だが、中期経営計画ではそれを3倍の1,420億円とすることを目標としている。

 NECの顔認証技術のルーツは、1963年にスタートした文字認識技術研究。その後、1989年に文字認識技術で確立したパターン認識技術を応用し、顔認識技術の研究が始まった。

 「当時、指紋認証は実現できるだろうが、顔認証を実用技術とすることは難しいのではないかと揶揄されていた」(今岡氏)と厳しい状況の中で技術開発が進んでいった。

 2002年には顔認証AIエンジン「NeoFace」として製品化され、2009年、2010年、2013年とNIST主催の静止画ベンチマークで3回連続ナンバー1を獲得している。

 「2009年にNISTという第三者評価機関が高い評価をしたことで技術の凄さが伝わり、事業も広がった感がある」(今岡氏)。

 同じ顔認証ではあるが、静止画と動画では照合処理の難しさに違いがある。静止画の場合、本人の意思で照合を行なうことがほとんどで、正面に顔が向いている。ところが、動画の場合、例えば店舗を訪れたVIPを識別するといった本人が知らないうちに認証される非積極認証も多い。

 そのため、複数人と同時認証を、高速に行なわなければならないことや、カメラとの距離が離れた状況で撮影するため解像度が低くなること、照明が十分ではないこと、横向きなどさまざまな顔の角度で認証しなければならないなど、難しい条件が揃うことになる。

 「動画での顔認証精度を向上するために、大きく2つの技術評価を行なった。1つは大人数を捉えた動画の際に多い、顔の一部分が隠れていることに対する頑強性の強化。もう1つは顔の向きが変わっていたり、カメラから遠い低解像度の顔画像に対しても本人確認ができるよう深層学習の強化を行なった」(今岡氏)。

 顔の一部が隠れている場合については、隠れている部分があると特徴点がずれることになる。その状態で特徴点を検出できるように補う技術を強化した。

モデルを使ってのデモ。顔を認識しても認証できあい相手の顔は白い四角で表示し、認証した相手は赤い四角と名前を表示
複数人でも認証可能
横顔でもきちんと認証する
サングラスや眼鏡をかけた状態でも認証を行なう
4Kカメラを使ったデモ。映像が鮮明になると大人数の中から認証する対象を見つけ出すことができる
地図データを組み合わせ、地図上に対象者がいた場所を表示

 深層学習はGoogleなどシリコンバレーの企業が圧倒的に強く、日本は遅れを取っていると言われる技術だが、「Googleの技術はさまざまな写真が上がっているWebの中から適応した画像を探し出すものだが、NECの場合はパスポートのように1枚だけの画像から本人確認を行なうもので、決してシリコバレーの企業に負けない技術」(今岡氏)とアピールする。

 NISTの評価は、2009年にNECが参加以来、静止画、動画ともにトップ評価を獲得している。

 今回のテスト「Face In Video Evaluation(FIVE)」は、ビデオ映像からの顔認証ベンチマークを行なうもので、参加したのは米国企業5社、日本3社、豪、英、仏が1社ずつの合計16チーム。企業だけでなく、大学、研究所からの参加が可能だが、今回は16社全てが企業だ。

 評価は、カメラを意識していない被写体に対する顔認証の精度を評価した。評価例の1つが空港など、カメラを意識させない状態で1人ずつ乗客ゲートを通った場合を想定してのテスト。もう1つは、多人数を映す競技場の監視カメラから不審者発見を想定したものとなっている。

 NECは乗客ゲートではエラー率0.8%で、2位の3.6%の4分の1以下のエラー率を達成。競技場ではエラー率14.6%で、2位の38.6%の半分以下のエラー率となった。

 「ただし、これで技術進化が終わりになるわけではない。数百人が密集するエリア内での各個人を確実に認証すること、不自然な行動を検知して不審者として特定追跡するなど、被疑者や不審者を早期発見し、犯罪や事件・事故防止に向けた対処を実現していく」(今岡氏)と今後も技術進化を進めていく。

 ビジネスとしては、グローバルでの成長戦略の柱となる「セーフティ事業」の1つとして事業を進めている。NECのAI事業のブランド「NEC the WISE」の1つとして顔認証技術を提供している。

NEC 執行役員 山品正勝氏

 NECでは顔認証技術を活用したソリューションをグローバルに展開しており、「顔認証技術とほかの技術を組み合わせて利用することで、不審な行動を取っている登録していない人物の画像を複数の動画から見つけ出し、警備を強化するといったことが可能となった。

 この技術を使ったソリューションは、それぞれの国によって利用され方がまったく異なる。例えば南米ではカメラが導入されていない場所がほとんどで、カメラ導入から活用コンサルティングまでがビジネスとなる。それに対し北米や欧州は複数のカメラが利用されている中でその画像を活用するサービスがビジネスになる。

 さらに、同じ国でも公共の場と、ショッピングモールのような場所でも使われ方が異なる。こうした市場性を加味しながら、グローバルにビジネスを進めていきたい」(NEC 執行役員 山品正勝氏)とさらにビジネス拡大を進めていく。