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円周率314兆桁の新記録、処理時間も消費電力も大幅に削減して達成

 米国のテクノロジー系メディアStorageReviewは、314兆桁の円周率を計算し、世界記録を更新したと発表した。計算にかかった期間は2025年7月31日から11月18日までの約110日間で、計算に用いたのはDell製サーバー「PowerEdge R7725」で、単一のサーバー筐体で高速かつ高い電力効率を実現したのが特徴。

 今回の円周率計算で用いられたPowerEdge R7725の主なシステム構成は、192コアを備えた2基の「EPYC 9965」(合計384コア)と40基のSSD「Micron 6550 ION NVMe SSD」からなる約2.1PBのストレージ、そして1.5TBのDDR5メモリ。OSはUbuntu 24.04.2 LTS Serverで、計算には「y-cruncher」(バージョンv0.8.6.9545)を用いている。

 ストレージは40基のうち34基をy-cruncherの計算領域に割り当て、残りの6基はRAID 10の構築に用いられた。PCIeスイッチを介さず各SSDがCPUに直結される設計となっており、全ドライブ稼働時の転送速度はシーケンシャルリードで127GB/s、ライトで107GB/sを記録した。計算完了までに読み出し総量が132PB、書き込み総量が112PBという膨大なI/O処理が行なわれた。

 StorageReviewによれば、数百兆桁規模の円周率計算はベンチマークというより長期間インフラのストレステストに近くなるため、いかにCPUやストレージ層に過大な負荷をかけたり停止させたりすることなく、数千におよぶ多精度演算をうまく進められるかが重要だという。

 同誌が以前に実施した202兆桁計算の際は、バックプレーンでPCIeスイッチを利用した24ベイの「PowerEdge R760」を利用しており、ストレージ密度が犠牲になっていたが、今回は各SSDがPCIe x2接続で、40台すべてがCPUに直結。このため最大280GB/sのリード/ライト速度を実現したという。

 また、冷却機構を標準の空冷からCoolIT製の液冷に交換したことで、CPUの持続クロックを高く維持しつつシャーシファンの回転速度を約30%に抑える制御を行ない、電力効率を最適化。計算中の平均システム消費電力を約1,600Wに抑えることができたという。

 さらに、Windows ServerではなくUbuntu 24.04.2 LTS Serverを利用したことでシステムの安定性が高まり、ワークロードの性能が向上。安定性の高いシステムを構築した結果、今回の計算期間中、1秒たりとも中断することなく、計算の短期間化にも成功した。

 2025年5月にLinus Media GroupとKIOXIAが達成した300兆桁の計算期間が約225日(ダウンタイムを除くと175日)、必要だった電力は33,600kWhと推定されるのに対し、StorageReviewによる今回の計算期間は110日で、電力も約4,305kWhだったとし、「もし誰かがこの記録を破りたいのであれば、桁数の増加、消費電力と処理時間の削減、ダウンタイムゼロの信頼性といったすべてを網羅した記録を樹立してほしい」としている。

40基のMicron製SSD「6550 ION NVMe SSD」を使用