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北大ら、脳型コンピュータの実現に繋がる認知メカニズムを解明

 北海道大学や理化学研究所からなる研究チームは13日、ヒトが想像する内容が視覚的か聴覚的かによって、2種類の脳波に位相差(周期的な波同士のズレ)があること発見した。数学的モデルの構築にも成功しており、「思考を切り替える」脳型コンピュータの実現や、未解明の認知機能障害の研究などに有用な知見が得られた。

 脳の機能局在としてよく知られているように、脳はさまざまな部位に分類され、部位ごとに異なった機能を持つとされる。実際には脳の活動に応じてそれぞれの部位がネットワークを形成することが知られているが、ネットワークの形成機序など、未解明な点が多い部分でもある。

 同研究はヒトの作業記憶を対象としたもので、視覚と聴覚という異なる認知機能がどのように切り替えられているのかを脳波の計測および解析から明らかにしたものだ。

 実験では、視覚作業記憶課題と聴覚作業記憶課題の2種類で脳波を計測。計測した脳波データの解析により、いずれの場合もアルファ波とシータ波という2つの異なる脳波が同期しているほか、2つのケースで異なった位相差が生じていることが判明した。

 この位相差を解析するため、2つの波の位相差を想定した三角関数を入力信号として持つ位相振動子を用いた数理モデルを作製し、特定の位相差が作業記憶課題の遂行時に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、数理モデルの妥当性は実験データと理論の整合性により確認された。

 脳のネットワーク形成と脳波のリズムの関係は過去にも指摘されていたが、詳細に視覚/聴覚作業記憶と脳波リズムの関係を明らかにする研究は初めてだという。研究チームは、視覚と聴覚に限らず、脳のさまざまな部位で同様のメカニズムがネットワークを形成しているという仮説を立てており、今後の研究が期待される。