NIMSとシャープ、液晶の色域を大幅拡大する8K向けLEDバックライト技術

開発品(左)と従来品(右)の白色LEDバックライトを用いたディスプレイの色再現域の比較

　国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と、シャープ株式会社からなる研究チームは23日、8K解像度のTVに最適なLEDの試作に成功したと発表した。

　LEDを構成する緑色蛍光体の発色を改良することで、赤、緑、青の光の3原色の鮮やかさが向上。8K放送の目標色域である90%を達成し、現行の液晶TVと同じ蛍光体LED方式を使ったバックライトの実用化に目途が立ったという。

　2020年開幕予定の東京オリンピックの年に、解像度と色再現域を拡張したBT.2020規格の8K高品位TVの普及が計画されているが、従来のNTSC規格に対して、色空間の面積比で134%(CIE1976座標上)の広色域を必要とする。BT.2020を実現するには発色のよい光源が必要であり、現行のバックライト技術では対応できなかった。

　NIMSはシャープとの協力で試作したLEDバックライトと、NIMS開発の「γAlON(ガンマアロン)緑色蛍光体」を用いることで、純粋な緑色の発色が可能となり、BT.2020規格の色再現域の90%を達成できたという。同蛍光体は発光波長が525nmと色純度が高い緑色で、スペクトルの半値幅が40nmと鮮鋭なことが特徴。

　色域拡大方式として、カドミウムを用いた量子ドットが提案されているが、環境面で好ましくない。今回発表した技術を用いれば有害な元素を使わずに、現行のバックライトの白色LED部品だけを置き換えられるため、コスト面と安全面で優れている。

　今後は、材料特性の改良による明るさ改善と低コスト化を進めるとともに、液晶TVに組み込んで色再現性の調整を実施する。2018年の8K実用放送開始に向け、8K TV向けの実用化を目指す。